うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

うずら大名

2016年05月21日 | 畠中恵
 2015年9月発行

 「御吉兆!」と鳴く勇猛果敢な鶉(うずら)を連れた若き隠居大名・有月。泣き虫で人に振り回されてばかりの村名主・吉之助。昔なじみだった二人が再会し、江戸を揺るがす難事件、背後に蠢く策謀に挑む!

うずら大名
御吉兆聞こえず
大根一万本
書き付けの数字
佐久夜の初泳ぎ
江戸の合戦 長編

 若き日に不動下道場に通った、貧乏武家の部屋住み・有月と百姓の三男・吉也。二人だけではなく、ほかの面々も、養子先でも見付けなければ先が開けぬ身の上だった。
 だが、運命とは分からぬもので、豊島村の村名主となった吉之助(吉也)は、然る大名家へ向かう途中に辻 斬りに襲われるも、「御吉兆ーっ」という鳴き声と共に飛び込んできた一羽の白い鶉とその飼い主である侍に命を救われる。そして、その侍こそが、十数年振り に再会した有月だった。
 部屋住みだった有月も、大名家を継ぎ、現在では若き隠居となっていた。
 そんな有月によって、吉之助は、「大名貸し」を強要されるやら、江戸近隣で相次ぐ豪農不審死事件に巻きこまれてるやら。
 そして、それらの事件に関わるうちに、豪農や商人による、武家の身分の売買を知る。御家人株ならいざ知らず、それは幕府を揺るがし兼ねない恐ろしい陰謀へと…。

 畠中氏の新シリーズとなるであろう、本作。分限者が事件を解決するのは、代表作の「しゃばけ」シリーズや、「まんまこと」シリーズでもお分かりの通り、氏の得意な分野である。
 そこに大名がプラスされ、更なるパワーアップ。大事件へと絡んでいけるといった新境地となるか…。
 本作の主人公の、吉之助と有月の関係が、「ちょちょら」の間野新之介(播磨国多々良木藩の江戸留守居役)と、岩崎(伊勢国久居藩の江戸留守居役)を彷彿とさせる。そう言えば、「ちょちょら」は史実をベースに描かれ、大層面白かったが、続編はなにのだろうか?
 間野新之介が多々良木藩士ということは、同作とのジョイントも期待できる。
 いずれにしても、続編が待たれる新作である。

主要登場人物
 高田家吉之助(吉也)…東豊島村名主(豪農)
 有月(浅山日向守有正)…播磨国多々良木藩・先代藩主(大殿)
 佐久夜(さくや)…有月が手懐けた白い鶉(うづら)
 左源太…有月の御付人
 お奈々…吉之助の姪
 山崎友衛…不動下道場師範
 榎本…不動下道場師範代




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