わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

ビニール傘

2018-02-09 | 映画・ドラマ・本
 年末に日本人人口の多い地域、ダブリンの図書館で日本語の本を借りてきて以来、寝る前に日本語本を読むのが日課になっています。始めは無難に知っている作家の本を選んでいましたが、だんだん選択肢が狭まってきて、初めて知った人の現代純文学にも手を出し始めましたが、どうも、この分野には相性が悪いよう。私の感性が鈍いからなのか、単に時代に浮いていけないだけなのか… 多分、その両方。

  折角借りたんだからという理由だけで読み進め、読み終わっても「で、何だったんだろう?」と、途方に暮れる作品が多い中、岸政彦氏の「ビニール傘」は、深く印象に残りました。舞台が大阪で知っている地名が出てきたり、挟まれる大阪の風景の写真や、大阪弁の台詞に懐かしさを感じるから取っつきやすいのかも。語り手の視点が急に変わる文章は、初めは「??」でしたが、一旦、こういう手法なのだと分かってからは、ちゃんとお話しについていけました。気になって調べてみれば、作者の岸氏は社会学者なのだそう。なるほど、市井の人々の観察によって生まれた作品かと納得がいきました。

 私が買うのは安価な文庫本ばかりなので、裏表紙の内容紹介や解説を見て買うかどうかを決めます。でも、ハードカバーだと、そういった情報が与えられていないので、内容が全く分からない。図書館に並んでいるのは、逆にほとんどがハードカバーなので、作者やカバー絵から察するしかありません。今どきは、ケータイですぐに内容や評判も調べられますが、私は怠け者なので、一冊、一冊調べるだけの根気がないので、ぱっと見で決めちゃう。

 その結果、鈴木光司氏(すごいお名前だねぇ)の本なのでホラーかと思ったら、 家族の再生を描いた甘い短編集だったり、「死せる魂の幻想」ってタイトルだけど、ゴーリキには全く関係もなければ幽霊譚でもなかったりと、意外性があって、自分で選んで読むような本が読めるのは、選択肢の限られた状況だからこそ。何があるか分からないグッドウィルでお宝探しをするのと似たような楽しみがあります。

 でも、結局は、やっぱ私って、山本周五郎とか藤沢周平とかの文章が好きな古い人間だわ、やっぱ東野圭吾はムチャやけどおもしろいわ~、逆に、やっぱ宮部みゆきアカンわ~、苦手やわ~、という再確認にもなったのでした。今んとこのめっけもんは、上記「ビニール傘」と、大江健三郎自選短編集。ずっしり分厚くて、読み応え十分だった。当分、大江世界はいらんってほど、堪能(?)したわw

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