わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

阪急電車(とっても個人的な感想)

2013-05-06 | 映画・ドラマ・本
 図書館で、映画化もされた有川浩さんの「阪急電車」があったので借りて来ました。この方とか、荒川弘さんとか、名前は紛らわしいけど女性。有川さんは多作だそうですが、他に読んだことがあるのはやはり図書館にあった「三匹のおっさん・ふたたび」だけ。でも、これも大いに楽しく読んだし、何といっても私の育った阪神間、おなじみの阪急電車の今津線が舞台。表紙は可愛らしいイラストで飾られ、タイトルも正しく「阪急電車」のロゴとあらば、期待が高まるのは至極当然。

 お話は、阪急電車の今津線各駅を停車しながらのオムニバス方式で、「3匹のおっさん」同様に、ほっとするような小さなお話が繋がっていきます。ただし、環状線ではないので、最後に全部輪になって大団円、ではありませんが、爽やかな読後感を残します。登場人物に現実味は全くないし、実際には起こり得ないような出来事を巡ってお話が展開する。「3匹のおっさん」同様、どこか懐かしい街を舞台にしたファンタジーです。もし漫画だったら(実際、漫画的なのですが)、女の子の目が大きくて中に星がキラキラしているような古めの絵柄が似合うような感じ。こういうの、キライじゃないのです… が! 困ったことには、地元ゆえに、アテ外れのチェックが厳しくなってしまった。

 まずは西宮北口駅が通称「西北」と紹介されているところで、「このごろはニシキタなんて、コジャレた呼び方すんねんねぇ、私らのころはキタグチやったけど」と、仄かな違和感と微かに嫌な予感。そして、たった4ページ目にして、主人公の一人である征志くんの「そやから」という台詞に、ぐぬぬ…と、来た。違う(「ちゃう」とよみます)、今津線沿線のモンは「やから」やのぉて「やから」や。

 こうなると、出てくる台詞の「微妙に間違った阪神間言葉」が気になって仕方がない。作者は実際に今津線沿線の住民だったそうだけど、元々は高知出身の方なので、この当たりの微妙ラインは、敢えて関西弁に馴染みのない読者にも判り易いよう配慮した結果かもしれません。地元民だと却って、どこまでが全国区でも理解してもらえるか、どこまで行ったら完全ワケワカメ化してしまうのかの、判断はつきにくいから。しかし征志くん、「君」はないやろ、「君」は。大阪で相手のこと「君」なんて呼びかけたら、絶対零度な目で見られるで。

 作者が関西学院大学(「かんさい」ではなく、「かんせいがくいん」、通称は「関学」である。間違っても「関大」なんて言ってはいけない。関大は大阪千里の関西大学「かんさいだいがく」のことである。)出身なのだそうで、やけに関学アゲなのも気になる。だいたい、同じ沿線の子は、どうしてもアラが目に付いちゃうので、いつも見かける学校には普通は憧れないものではないでしょうか。色々と気になりだしたらもうダメで、台詞の一つ一つの違和感にムズムズしまくる。ああ、ダメだ、ダメだ!いや、あかん!完全にワヤや!そして、せっかくの今津線なのに、タカラジェンヌの卵達である宝塚音楽学校の生徒さんたちが出てこないのは何故なのかしら?

 私的に好きなエピソードは、小林(おばやし)駅で出会ったショウコちゃんの毅然とした態度が、恋人を寝取られた恨みつらみから抜け出すきかっけになった主人公の一人、翔子さん。彼女はまた、駅の燕に対する心遣いに惹かれて、この街に落ち着こうと決めるのですが、実は小林は、私が子供の頃、この駅の近くに母方の祖母が伯父夫妻、二人の従姉と住んでおり、私も夏休みなどを過ごした街なのです。あん頃は鄙びた街だったけどね。そして、その従姉の一人の名前が「しょうこ」ちゃん。ただし、従姉のしょうこちゃんは完全理系脳な人なので、作中の二人のような行動は絶対に取りそうにない。だから、「小林のしょうこ」エピソードはニヤニヤせざるをえませんでした。

 しかし、赤いランドセルの小学生、ショウコちゃんは、小林で乗降するからには、超がつくお嬢様学校の小林聖心の生徒さんをイメージしてるのかしら?だったら、互いに○○ちゃん、なんて呼び合わない。彼女たちは小学生の頃から、苗字で「xxさま」と呼び合うのです。ちっちゃい子が「xxさま、ごきげんよう」「△△さまこそ、ごきげんよう」なんてやってる、この非現実的な情景もまた、今津線だけの味わいだと思うのですが。それをやったら、聖心から怒られちゃうのかな?

 映画には実際に西宮や宝塚出身の役者さんが出演しているらしいので、観てみたいと思います。征志くんはちゃんと「せやから」って言ってるかな?って、チェックしたかったけど、映画本編には、征志くんとユキちゃんのエピソードは出てこないそうなので残念、と、思っていたら、ちゃんと、この二人のお話だけのスピンオフがありました。検索したら思いがけずここから全部観られちゃった。しかし、この映画では、征志くんは標準語。がっかりだけど、これ、本当に全編関西弁だったら、コテコテすぎて観てられないかも。(せやけど、阪急電車でそんな話し方で会話してたら、周りの目が気になりません?)

 今、是非読んでみたいのは、「阪急電車」のパロディー版「阪神電車」。征志とユキが出会うのは競艇場、時江おばあさんは誰かれ構わず「アメちゃん食べへん?」と手提げから飴を出す尼のおばはんwww そして翔子さんは結婚式場で花嫁と肉弾戦バトルしてズタボロで甲子園行きに乗るv

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