わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

アメリカの選挙人制度の是非

2016-11-28 | アメリカのニュース
 暴言は選挙中のパフォーマンス、実際に選ばれたら落ち着くかもという希望的観測を裏切り、初の公式会議を娘同伴で自宅で行ったり、自分のビジネスの利益の為なのが明らかな「公式訪問」をしたり、過去に問題視されて締め出された人間を次々と重要な地位に任命したり、過去8年間いオバマ政権が築いた功績をことごとくブチ壊すのが使命だと言わんばかりの宣言したり、既に、お先真っ暗感しかないトランプ政権ですが、本当に使命が決まるのは、12月9日の選挙人による選挙の結果によります。

 選挙人(Electoral College)は、庶民に大統領を選出する機会を与えるけど、最終的に見識のある選挙人たちは決定を下すことで、トンデモな奴が国を率いるのを防ぐために、1787年の合衆国憲法制定会議中に制定されました。トンデモを防ぐためのシステムが200年以上を経て、トンデモを選出するシステムになっちゃったわけです。

 このシステムは、ナショナル・ジオグラフィックの記事によると、奴隷制にも深く関わっています。当時、南部人口の4割は奴隷であり、彼らを選挙においてどう扱うかが建国の父達の頭を悩ませていました。選挙権のない奴隷ばっかの南部は、ものすごく不利。そこで、選挙区間の偏りを解消するために、奴隷を3分の4人として人口に計上して選挙人数を決めるとしました。

 黒人の参政権が認められたのは1964年、女性の参政権も1920年まで無かった国なのに、頭数としては数えておこうというのは矛盾している気がすごーくするけど、当時は、参政権を持っていたのは土地を持つ白人男性だけ。「人間」と認められていたのは、ホンの一握り…いや一つまみだけだったのです。

 ラジオもない、新聞はあっても識字率が低く読める人は少ない、交通も通信も未発達で、とてもじゃないけど、全米で選挙する意味なんて無いって背景で生まれた選挙人制度は、過去200年間に700回以上も「改革か廃止」が提案されましたが、排除されないままにズルズルと21世紀まで生き残り、今年また、その存在の是非が問われています。

 更に複雑なのは、自分が所属する党の選んだ候補者に投票しない「不実な選挙人(faithless electors)」が現れる可能性。過去、157人の不実な選挙人がいましたが、21州では何の罰則もありません。今までに、不実な選挙人によって選挙結果が引っくり返った事例はありませんが、今年の12月9日の選挙人による選挙では、多くの選挙人が「不実」な選択をするのではないかと予想され、また、それを求める署名運動も起こっています。

 とはいえ、過去200年以上、選挙人によって結果が覆ったことなんて一度もない。元々が、白人男性土地主に大統領選挙を委ねるためのシステムである事を鑑みても、この選挙人制度が現代において全く何の意味も無いのは明らか。むしろ、このシステムは、奴隷制の過去のしがらみであり、大衆の意志を蔑ろにする弊害以外の何物でもないと思います。

 絶対ムリ!のはずだったBrexitもトランプ大統領も実現したのだから、選挙人で結果がひっくり返ることだってあるかもしれない!神様、仏様、選挙人様…

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