
2012年5月21日(月)の「金環日食」では、多くの人々が歓喜の声を上げ、楽しんだようです。個人的には、「やっぱりそうなったか…、人類の知見の積み重ねは素晴らしい…」と、改めて感動しましたが、その後、この機会を手掛かりに、日本の研究者たちが、これまで139万1000~139万2300㎞とされていた太陽の直径を、139万2020㎞(誤差±40㎞)と発表したことにも驚かされました。
また、わざわざ観察ポイントまで出向かなくても、じっくり観察できたことは得をした気分にもなりましたね。
さらに幸運は続き、2012年6月6日(水)には「金星の太陽面通過」まで観察できるようです。日食グラスも手元にあるはずで、是非観察してみたいものです。
東京地区で見られる「金星の太陽面通過」の時刻(北海道・沖縄であっても±1分内)は、外蝕の始めが7時10分53秒・内蝕の始めが7時28分29秒・内蝕の終わりが13時19分59秒・外蝕の終わりが13時47分26秒(国立天文台ホームページによる)となっていますから、学校でゆっくり観察できる予定がたちます。仮に、天気が悪い時でもインターネット等による確認も可能でしょうし、注意をしておきましょう。
また、次回の「金星の太陽面通過」は、105.5年後の2117年12月11日と言うのですから、希少性も高く、特に、地学を手掛ける人たちには、「金環日食」を超える垂涎の的かもしれせん。中学(高校)入試問題においても、太陽・金星・地球の関係に関する問題は、よく出題されています。
子ども達には、入試対策に止まらず、天体の動きを身近なものとして考える機会になります。実際の現象をどう理解するか、頑張って考えてみましょう。
では、エデュコ5・6年生が手掛ける「数の性質」や「旅人算」、「点の移動」のロジックを意識して、「金星の太陽面通過」を授業説明風に整理してみましょう。
①「金星の太陽面通過」は、金星が太陽と地球の間を移動し、地球から見た太陽面を横切る現象を言います。
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②これは、太陽・金星・地球が一直線上に並ぶ位置関係が出来た時と考えればいいですね。地球は、太陽の周りを回る(公転する)惑星の一つです。地球のように太陽の周りを回る星(惑星)は、太陽に近い順に、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星等が知られています。
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③これらの星が太陽の周りを回る向きは、地球の北極のはるか北側から見た場合、すべて反時計回りになっています(授業では、同心円に単純化してノートに図を書きます)。太陽を回転の中心にして、金星・地球の通り道(円)を描いてみてください。
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④では、「金星の太陽面通過」が起きる周期を考えてみます。太陽・金星・地球が一直線上に並んだときから次に並ぶまでは、金星か地球のどちらかが、太陽を中心にその周りを360°多く回転した時と考えればいいわけですね。「旅人算」の1周多く回る時をイメージしましょうか。
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⑤まず、地球が太陽の周りを1周するのを、4年に一度のうるう年があることを考えて約365.25日とします。すると、地球は1日につき360°÷365.25日=0.9856°回転していることとなります。これは、「点の回転移動」ですね。
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⑥同様に、金星は約224.70日で太陽の周りを1周するそうです。すると、金星は1日につき360°÷224.70日=1.6021°回転していることとなります。
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⑦ここで、1日当たりの回転(公転)角度は、金星の方が地球より1.6021°-0.9856°=0.6165°多いことが分かります。「速さの差」と考えればいいですね。
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⑧これらから、金星が地球より太陽の周りを360°多く回るのは(太陽・金星・地球が一直線に並んでから、次に一直線に並ぶまで)、360°÷0.6165°=583.9日(約584日=約1.6年)ごとだと計算されます。
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⑨さらに、金星の回転が速いことから、地球から見ると太陽面の左側から右側へ金星が移動していくことも理解できます。
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⑩しかし、この現象は約584日(約1.6年)ごとに観察できていません。それは、「地球が太陽の周りを1周する通り道ができる平面」と、「金星が太陽の周りを1周する通り道ができる平面」がずれているからです(約3.4度のずれがあるといわれています)。太陽を中心とする二つの円盤をイメージしてください。ここまで考えてがっかりですが、約584日ごとという条件だけでは、一直線に並ぶとは限らないということになります。
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⑪では、「地球の通り道の平面」と「金星の通り道の平面」の交わるところはといえば、太陽を中心とする二つの平面(二つの円盤)の交わりで直線がイメージできます。この直線と「地球の通り道」が交わるのは、6月と12月になり、約0.5年ごとに地球がこの交点を通過するということになります。
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⑫そこで、約1.6年の周期と約0.5年の周期が合わさるところで、太陽・金星・地球が一直線に並ぶことが理解できます。その合わさる周期というのは、1.6年と0.5年の「最小公倍数」にあたる約8年ごとということになります。前回の「金星の太陽面通過」が、2004年6月8日でしたから、ほぼぴったりですね。
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⑬となれば、2012年6月6日の次は、2020年ということになりますが、残念ながらそうはいかないようです。8年後には、見た目で約0.33°(20分)金星の通り道が今回より高くなり、太陽面の北にずれ、「金星の太陽面通過」は観察できないというのです。
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⑭その後もこのような変化を繰り返すため、太陽・金星・地球がほぼ一直線に並ぶ関係になっても、太陽面の見た目の直径が約0.5°(30分)ですから、太陽面を通過する金星にはめったにお目にかかれず、次回は、約105.5年後の2117年12月11日ということになるようです。
(どの様な条件が整えば、「金星の太陽面通過」が見られるか、より正確な理論に近づいてみたい人は、どんどん勉強してください。)
(注)もっとじっくり考えたい方は、国立天文台の次の頁を参考にしてください(小学生には難解です)。
http://naojcamp.nao.ac.jp/phenomena/20120606-venus-tr/index.html
これまで、実際の中学・高校の入試問題では、「宵の明星・明けの明星としての金星と地球の位置関係」や「金星が太陽と地球の間に来た時(内合)から、数カ月後(3カ月後が典型的)の金星と地球の位置関係」を問うような問題が、よく出題されてきました。
来年の入試問題でも、天体領域からの出題があるとすれば、金星に関する問題の出題が大いに考えられます。この機会によく考えてみましょう。
夏期講習の「地学まとめ」講座でも取り扱います。
(追記)読売受験WEB「カリスマ講師の受験術」を更新しました。会員の方には、お馴染みの主張です。
https://yorimo.yomiuri.co.jp/csa/Yrm0402_C/1221808104273
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