拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

リリーさんのたくらみ―『東京タワー』とその他の著作

2006-07-07 20:23:35 | 活字全般
リリー・フランキーの著作『東京タワー』が相変わらず売れている。ドラマ化・映画化も決まり、売り上げはさらに加速していくのが容易に想像がつく。2年前の「セカチューブーム」を思わせる売れっぷり・メディアミックスぶりだ。このブームをきっかけにしてリリーさんへの世間の認識は「『ココリコミラクルタイプ』で端っこの席に座り、小西真奈美を見つめながらニヤニヤしてるオッサン」から「泣ける小説を書く人気作家」に変化した。まさかこんなことになるとは、少なくとも二年前に彼の著作『マムシのanan』を読んだころには全く想像出来なかったよ…。
現在、『東京タワー』が「本屋が一番売りたいと思っている本」に贈られるというというよくわからない賞・「本屋大賞」を受賞したということで、全国各地のどこの本屋に行っても大なり小なり「リリー・フランキーの著作コーナー」みたいなものが作られている。大体の場合、リリーさんのイラストレーターとしての才能が炸裂した絵本作品『おでんくん』及びおでんくんの人形でデコレーションされている。そして過去にリリーさんが書いた数々の著書が並ぶ。処女小説『ボロボロになった人へ』、先述のフォトエッセイ『マムシのanan』、そしてかなり強烈エッセイ『誰も知らない名言集』『女子の生き様』『美女と野球』まで…い、いいのか?本屋さん、中身を確認してからコーナーに本を並べたほうがいいよ?でも『東京タワー』でリリーさん人気が高まってる今しかこれらのエッセイを売るチャンスってないよな…。それにしても本屋の中でもこんなに目立つところにリリーさんのエッセイが引きずり出されてるのって、物凄いまでの違和感がある。黎明期のCGみたいだ。
『東京タワー』に感動し、「他のリリーさんの本も読んでみたい」というノリで彼のエッセイを手に取らないほうがいい。余計なお世話かもしれないが、手に取る時は『東京タワー』とリリー・フランキーを切り離すべきだ。私はリリーさんのエッセイを『東京タワー』以前の数年前に普通に爆笑しつつ(本当に。電車じゃ読めません!)楽しく読んだが、『東京タワー』→エッセイ集の順に読むのはキツいだろう。それでも『美女と野球』は後の『東京タワー』に繋がる部分もあるので、読んだ方がある意味では楽しめるかもな…。あ、もしかしてリリーさんはこの状況を予測した上で『東京タワー』を出したのか?誰もが思わず泣いてしまう感動小説と、過去に書いた自身の毒舌エッセイが同列に並ぶこのシュールな図。リリーさんはこれを狙ってたのか?無駄に勘ぐってしまう…。
私の個人的なオススメリリー・フランキー作品は『マムシのanan』。女性誌『anan』に連載された作品で、1994年に同じく『anan』で連載・出版された小泉今日子のフォトエッセイ『パンダのanan』へのオマージュのようなエッセイ集である。タイトル、本の装丁、毎回のエッセイを本人撮影ポラロイド写真とともに掲載するという連載形式までをも小泉の著書を踏襲したエッセイ。本の帯には小泉今日子直筆の「私は絶対に読みません!」という推薦文が載っている。読んでいるうちに「なんでこの人は女性の生態をここまで熟知してんだ!?」という疑問が激しく湧き出てくる。恐るべき観察眼である。読んでて恥ずかしくなるけど、最後まで読むと気づけばスッキリしている快作エッセイ…やっぱ『東京タワー』とは切り離せないかも。

追記
映画『DEATH NOTE』を観た。感想は後日書く。一緒に行ったのはデスノートの事はなんとなく知ってはいるものの、単行本は一冊も読んでいないデスノート初心者の友人。彼女は映画を観たあと「映画観るまで月とLは同一人物だと思ってた。一人の人間から殺人犯の人格・月と探偵の人格・Lが現われる多重人格ものだと思いこんでた」と語ってくれた。違うから。


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