拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

秘密のHz

2008-01-21 22:09:40 | 音楽
2007年2月の「Flavor of life」リリース以降、ほぼ定期的に曲を発表し、3月19日にはアルバムが出るという吉報も届けてくれた宇多田ヒカル。そのアルバムの先行シングル「Heart Station/Stay gold」を聴いた。…ぬ~…早くアルバム聴きてぇ!前作「Beautiful World/Kiss&Cry」も当然のように良いシングルだったが、他にもこんなに良い曲を作っていたのか…と驚愕してしまう楽曲である。ブログでは相変わらずぬいぐるみと遊んでる写真やらちょんまげのカツラをかぶって喜んでる写真やらをアップしまくり、とにかくおバカな一面ばかりを押し出し続けている近年の宇多田だが、本業の音楽の方は相当充実しているようだ。なんか…立て続けに名曲を発表する様は6年前の、『DEEP RIVER』リリース前を思わせるなぁ。「traveling」「光」「SAKURA ドロップス」「Letters」と、名曲をここぞとばかりにリリースしまくってたあの頃みたい。
「Heart Station」は、オンエア解禁日の夕方、この新曲をいち早く聴きたいと思いラジオの前でMD録音の準備しながらスタンバって捕獲した。一切聴いたことない曲のハズだけど、ふわっとイントロが流れてきた瞬間、それまでラジオで流れていた音楽とは違う空気を感じて、「あれ?あれ?あれ?まさか?」と思いながら恐る恐る録音ボタン押したら、しばらくして予想通り宇多田の声が…重度の宇多田ヲタになりつつあるかもしれん…。さて、曲。曲調や詞は全く違うものの、なんとなく名曲「DISTANCE」を彷彿とさせるミディアムテンポの軽やかな曲。軽やかに緩やかに聴く者の心を高揚させていく、魔法みたいな曲だ。あまりにも魔法が効き過ぎて、初聴きで涙出そうになった。曲名の「Heart Station」は、電波に乗せて人の想いを届けるラジオ局という設定らしい。「私の声が聴こえてますか 深夜1時のHeart Station チューニング不要のダイヤル 秘密のHz」と、さりげなく脚韻(頭韻も?)を踏みながら風のようにスキップしながら人の心をかき乱す。あぁ…この曲を聴くこと=Heart Stationにダイヤル合わせることなんだな……。他人が繰り広げる恋愛をラジオ局という場所で俯瞰しながら応援しているような歌詞だけど、同時に非常に私小説的な香りも。不思議な曲だわ。
「Stay gold」の方は去年の秋からシャンプーのCMでオンエアされまくっていた曲。チープに響く電子音と柔らかさを極めた温かく広がりのあるピアノとが絡まりあって、宇多田独特の浮遊感のある音世界を構築したトラックがこれまた味わい深い。決して最先端の音楽を志向してるわけじゃなさそうなのに、誰にも似ていない新鮮な音楽を作り続けてるんだよ…。歌詞の方はサビで「大好きだから ずっと」という、数多のラブソングに登場してきた定番フレーズを連発。しかし曲のアレンジが何処にもないものなので歌詞も新鮮に響く。あと凄く良いなと思ったのが「悲しいことはきっとこの先にもいっぱいあるわ my darling stay gold 傷つくことも大事だから」というフレーズ。これぐらいの気構えで生きていけたら人生怖いもの無しだろうな。胸にしまっておきたくなるぐらい好きだ、ここ。
宇多田は以前インタビューで、「コアな固定ファンは要らない」という旨の発言をしていた。盲目的に自分を応援するのではなく、新曲を出す度に「この曲好きだな」「この曲は全然好みじゃないからどうでも良いや」と各自で判断しながら自分の曲を聴いて欲しい、と。宇多田のCDの売り上げの振り幅の激しさを見ると、本人のこの希望は叶ってるようだ。でも私は『DISTANCE』以降の楽曲はなんだかんだでずーっと好きだな。問題作といわれ、一気にファンが離れ売り上げが落ちた(それでも90万枚とかだけど)『ULTRA BLUE』も大好き。ついでに一番聴かなかった『First Love』も最近やっと良さがわかってきたし(いくらなんでも遅すぎ)……好きになれない要素が無いなぁ、宇多田ヒカルの曲は。