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拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

忍者ハットリ君

2008-09-08 00:05:52 | 映画
映画『20世紀少年』を観た。原作は浦沢直樹、累計2000万部超えの大ヒット作。以下、感想。


1997年、世界各地で不気味なテロ事件が続発する。それらは全て、主人公ケンヂが小学生時代、仲間と共に考えて書いた「よげんの書」通りに起きていた。故に、テロの首謀者はケンヂの仲間内に居る…?そんな中、「ともだち」と呼ばれる謎の人物が開く新興宗教団体がジワジワと信者を増やしていた。その宗教がシンボルマークとして使っているのは、これまたケンヂ達が子供の頃に考えたイラスト。「ともだち」の正体は?そして、テロ事件との関係は?……映画『20世紀少年』は三部作らしく、今回の第一章は物語前半のヤマ場、「血のおおみそか事件」あたりまでを映像化。謎が謎を呼ぶ展開に誰もが夢中になる、最もエンターテイメント性の高い部分の映像化である。さて、どーなったか。
まぁ、「…必死で原作のイメージを守ろうとしたんだろうな…」という感じだろうか。監督が堤幸彦だと聞いて、彼の代表作『トリック』シリーズのような微妙なギャグ満載の『20世紀少年』になってたらどうしよう、と不安だったけど、堤カラーは極力抑えられていた(モンちゃんのドイツ語ぐらいか?)。でもねぇ…やっぱ微妙な映画だったね。まず、原作のストーリー本筋を必死に追う事に徹したせいで、本筋とは直接関係無いけど味わい深い、各キャラの魅力を引き立てる些細なシーンが軒並み削られていた。
例えばオッチョのタイでの活躍エピソード。オッチョがいかにして武闘派になったかを示す部分。トヨエツ演じるオッチョの佇まいが超カッケーだけに省略は勿体ない!あと、オッチョが十数年振りに少年サンデーを手に取って爆笑するシーンがあれば今回の映画のクライマックスが更に味わい深くなるのに…。また、ケンヂが「お茶の水工科大学」のソフトボール大会に飛び入り参加して、裸足でダッシュするシーンも無かった。少年時代いつも裸足&俊足だったドンキーにあやかって靴脱いでホームインしようとするも、脚力不足であっさりアウトになるケンヂの哀愁が漂う良い場面なのに。ドンキーと言えば鼻水タオルが繋いだ友情の話も無かったな。それから、マルオ&マルオの息子とケンヂがラーメン食べるシーン、酔っ払ったフクベエを家に送り届けるシーン…テロ阻止を決意したケンヂが仲間達に協力を求めようとするも、彼らには家庭があるため「彼らを大事件に巻き込んで良いのか」とケンヂは葛藤が、映画ではそういうの殆ど無し。あ、刑事チョーさんの捜査!あれで2章に繋がるのかな。
挙げたらキリが無いな。そりゃ、全部詰め込んでたら2時間半の上映時間に入りきらないだろう。でも、そんな些細なシーンが無いと各キャラクターの存在が超薄っぺらく感じられる。せっかく実力派俳優を集めてるのに勿体ない…。映画を見終わって「あぁ、あのシーンもこのシーンも無かったなぁ」と振り返ってみて改めて浦沢漫画の魅力は本筋を彩る枝葉のシーンにある、と再確認した。つーか『20世紀少年』は作者が「ミステリー物ではない」と公言してあのラストだから、本筋より枝葉エピソードの方が大事な漫画でしょ。それらを切り捨ててまで映画化したのは無謀だった。
や、でも良い所もあったぜ!キャラのルックス、多くは原作から抜け出て来たみたいでさ。以下、印象深かったキャラについてまとめてみた。

【激似!!】
・少年時代のオッチョ
びっくりした。漫画なのか実写なのかわかんないぐらい似てた。よくあんな子みつけてきたな。

・コンビニの支部長みたいな人
コンビニの雇われ店長であるケンヂに説教する支部長も激似。なんつーか…「浦沢顔」なのかね、あの俳優さん。

【とりあえずインパクト大】
・ピエール一文字
竹中直人が指パッチンを武器(?)に開いた変な宗教団体の教祖役で出演。一瞬だけだが予想通りの名演、ナイスな死に顔を披露。しかし彼が殺された理由は見事に切り捨てられてた。それで良いのかな。

・バンドのボーカル
「ともだち」主催のコンサートに出演するヴィジュアル系バンドのボーカル役で及川ミッチーが登場。しかも、ネオV系を代表するバンド・ナイトメアを率いて…。金髪・フルメイクで熱唱するミッチー、ハマり過ぎ(笑)。狂乱のステージを見て「こんなのロックじゃない!」とツッコむケンヂ…。

・政治コメンテーター
これは映画オリジナルキャラかな?「ともだち」が牛耳る政党「友民党」の躍進について語るコメンテーターとして宮崎哲弥が一瞬登場。正直ここが一番面白かった。

命懸けの怪演

2008-09-05 17:30:18 | 映画
バットマンシリーズ最新作『ダークナイト』観た。以下、感想。


評判通り、ヒース・レジャー演じるバットマンの敵・ジョーカー、かっこよすぎた。まさに悪の化身。「あ、役に魂を吹き込むってこういうことか…」みたいな名演技。ジョーカーが出てるシーンは、もう全て名場面。やること派手だし、言う事全て深いし面白いし、顔怖いし…でも悪事を成し遂げた直後に見せる笑顔は何故か可愛いし…ヤバイよ。もう夢中だ。バットマン映画なのにバットマンの存在感薄かったよ。
ジョーカーは中途半端な事を許さない。曲がったことが大嫌い。街を守るバットマンや警察に対し「おまえらの守ってるものってさ、本当に大事?心の底から守りたいって思ってないだろ?ならやめちまえよ~」と揺さぶりをかけたり、人々が当たり前のように信頼してる人間関係に水をさし、右往左往する様子を見て楽しみまくる。狂ってるけど、「嘘くさい大義名分・ヌルい信頼関係を許せない!」という信念だけは強すぎる。こんな敵に、「あぁ、ヒーローを辞めるべきか、続けるべきか」とかウジウジ悩んでるバットマンが勝てるわけないんだ、常識的に考えて。
ジョーカー役のヒース・レジャーは今年の冬、薬物大量摂取で28歳の若さで無くなった。『ダークナイト』での怪演が遺作になってしまって非常に残念。アメリカでは『スターウォーズ』の興行収入を抜き、『タイタニック』に次ぐ記録的大ヒットらしいけど、ヒース・レジャーの死という話題性も手伝ってのことだろう(勿論、空前絶後の宣伝費も)。あぁぁ…勿体無い。続編ではもう観れないんだね。つーか28歳って…あの存在感で?嘘でしょ?
ヒース・レジャーの突然の死の真相は『ダークナイト』出演がきっかけという説が、アメリカでは有力らしい。要はジョーカーというクレイジー過ぎるキャラに入り込みすぎて精神の安定が保てず、精神安定剤に頼る日々が続いた、と。で、プライベートでのゴタゴタも重なり、薬物過剰摂取に至った、と。これが本当なら、彼は映画に…ジョーカーに命を捧げたってことになる。『ブロークバックマウンテン』で「ブロークバック」される(する?)彼を見た時もその役者魂に関心したけど、本当、壮絶な人だ。
とにかくヒース・レジャーのかっこよさだけで満足だが、不満があるとすれば残酷描写のヌルさ。確かに暗い映画だけどこれはPG-13、条件によっては子供でも見られる映画。おかげでジョーカーのキャラは凶悪なのに残虐描写が少ないという、ねじれ現象が起きている…。ジョーカーが酷いことしてるのは確かなんだけど、それをハッキリ映像で見せてくれない。血が全然流れない。もしかして「残虐なシーンを敢えて見せないのがクール」とでも思ってんのかね、監督。クールというより薄味になってしまったような気がするよ。『20世紀少年』の方が血が沢山出てたぞ?人間以外のモノを破壊する描写とかは過激だったんだけどな。
「香港のシーン長いよ」とか「モーガン・フリーマンやジョーカーの計画無理ありすぎだよ」とかツッコミたくなるけど、それでも多分今年のベスト1クラスの映画『ダークナイト』。でも、R15ぐらいにして、ジョーカーによる殺戮をガンガン見せてたらもっと良い映画になってただろうね。だってこれ、いくら指定付いてなくて残酷描写も少なめからって実際に子供に見せたらちょっとマズいよ。最初から指定付けてガンガンやっちゃえばよかったんだ…。

Fresh&Blood

2008-08-24 18:45:17 | 映画
安室奈美恵が出した企画モノシングル『60s70s80s』。そこに収録された映画『フラッシュダンス』の主題歌「WHAT A FEELING」のリメイク曲のPVには、安室及びダンサーの他に、モロ『ロボコップ』なロボットダンサーが登場していた。安室自身がカクカクした踊りを見せるシーンもある。映画『ロボコップ』は、スピード感溢れる目まぐるしいカット割りが印象的なSF映画。その技術は後続の映画は勿論、80年代のミュージックビデオにも大いに影響を与えた。安室の「WHAT A FEELING」PVは、「80年代テイスト取り入れるなら『ロボコップ』は不可欠だ!」という考えのもと作られたのだろう。多分。
『ロボコップ』。オランダ人監督、ポール・バーホーベンのハリウッド進出第一作にして代表作。母国オランダでエログロな映画を撮りまくり、興行的には成功したものの批評家に叩かれまくったバーホーベンはオランダに嫌気がさし、ハリウッドに進出した。批評家に叩かれたといってもオランダ最大の映画賞を受賞したり、アメリカのアカデミー賞にノミネートされたりもしている。まぁ賛否両論なのだろう。バーホーベンのエログロ魂はハリウッドでも健在。大ヒット作『ロボコップ』も、成人指定を免れるためにグロいシーンがいくつかカットされたと聞く。そんな彼がハリウッド進出直前に全編英語台詞で撮った映画、『グレート・ウォリアーズ 欲望の剣』を最近見たので感想を。
1985年公開の映画。DVD化はされてないらしく、観るには今やレンタル店の片隅に完全に追いやられているビデオコーナーを探すしか無かった。でも近所のTSUTAYAには無くて。ビデオどんどん処分されてるからね…。で、「こりゃWOWOWか木曜洋画劇場に期待するか」と思ってたら、先日ひょんな所で見れてしまった。ニコ動。まさに灯台下暗し。
主演は『ブレードランナー』でアンドロ軍団のリーダーだったルドガー・ハウアー。物語の舞台は中世ヨーロッパ。主人公・マーティンが属する傭兵団は、雇主の命令通り城に攻め込み、まんまと略奪に成功。しかし突然雇主に裏切られ、報酬を貰うことなく厄介払いにされてしまう。マジ切れした傭兵団は雇主への復讐を誓う……。上映時間は125分。大部分がバイオレンス描写で、傭兵達がここぞとばかりに大暴れ。舞台が中世ということで、可愛いお姫様や王子(実際は王子ではないが、劇中で彼の果たす役割を鑑み、便宜上王子としておく)も出て来るのだが、とにかくバイオレンス。
原題は『Fresh&Blood』(肉と血)。中世ヨーロッパが舞台なのでロマンチックな風景も出てくるのだが、やっぱり血と肉で染め上げるのがバーホーベン流。例えば作品序盤、お姫様と王子は木陰でキスを交わすのだが、木には首を吊った腐乱死体がぶら下がっている。中世は戦や小競り合いが日常茶飯事だから死体も日常。だからってそんな所でいちゃつかんでも…。
そんなお姫様、紆余曲折あって誘拐され、マーティンら傭兵軍団に犯されそうになる。なんとか身を守るため、姫は傭兵軍団のボスであるマーティンの女になることを志願し、他の傭兵達には手が出せないポジションに付く。世間知らずだった姫が、逆境に立たされた事で開眼するのだ。以降、姫は横暴な傭兵達の行動に振り回されつつ、逞しく成長していく。逆境に立ち向かい、血まみれになりながら強く成長していくヒロイン、というのはバーホーベンの映画によく出てくる。時に血まみれに(『グレートウォリアーズ』)、時に過剰に性的に(『氷の微笑』『ショーガール』)、時に糞尿を浴び(『ブラックブック』)…と過酷な運命を辿るヒロインたち。バーホーベンが鬼畜とされる所以だ。それでも彼女たちの美しさは全く損なわれない。寧ろ返り血でさらに輝く。悲惨な女性を美しく撮るのが得意中の得意なのだろう。
だから思うのだ。バーホーベン先生、日本で大奥を舞台にした映画撮ってくんねーかな、と。日本のドラマや映画の大奥モノで描かれる「女の闘い」ってなんかヌルいもん。バーホーベンだったら、『氷の微笑』のシャロンストーンばりに将軍を誘惑したりとか、高級打ち掛けを糞尿まみれにしたりとか、そんなシーンが期待出来そうではないか…。

Ponyo on the cliff by the sea

2008-08-17 19:13:21 | 映画
『崖の上のポニョ』見た。以下感想。

映画見る前、ポスターやCMでポニョの造形を見た時に感じた「だ…大丈夫か!?…可愛くないぞ?」という不安は、本編を見てるうちにすぐに気にならなくなった。冒頭からオープニングまでの数分間、ポニョが暮らす海の中の描写が、ポニョの可愛くなさなど問題にならないくらい奇妙。これぞ駿ワールド…。主人公ポニョ以下、海の中のあらゆる生物がみ~んなポニョッポニョップニョップニョしており、画面の中に安定している物が一つもない、強烈なヴィジュアル。
極めつけは、ポニョが海の底から一気に海面に飛び出し、荒れ狂う波の上をアラレちゃんのように爆走するシーン。ポニョが恋をした男の子・宗介が乗ってる車を追い掛けるために爆走するのだ。「ワルキューレ騎行」みたいなけたたましいBGMに乗って、嵐の中、ポニョが荒波の上を走ってくる!しかも波には顔が付いてて、それ自体が生き物になってる。怖えぇ!でも迫力満点!また、宗介少年が乗ってる車を運転するお母さんの、ルパン三世並のドライビングテクニックも凄まじい。嵐の中、カーブの多い海岸沿いの道をドリフト走行。チャイルドシート意味ねー!そんな運転したら普通スピンして死ぬぜ!お母さん、元走り屋だな。絶対ドリキン目指してた。母親としては失格だけど、「宮崎駿キャラ」としては欠かせない存在だろう。このシーンの過剰さは映画館で見て良かったと思った。
しかしこの嵐のシーン以降、物語は急速にヌルくなる。物語の序盤でとっくに出てたような結論を問うようなラストシーンは「今までの物語は一体何だったんだ…」と脱力。大体、「顔の付いてる魚」の存在を結構あっさり受け入れられる人が多数を占めてる「博愛の町」だもんな、あそこは。中盤の嵐のシーンが良かっただけに、後半のヌルさは残念。
『ポニョ』否定派は後半のヌルさに失望した人が大多数だろう。「文句の付けようがない隙の無い物語を見せつけて観客を圧倒させ続けてきた宮崎駿作品がこの程度で良いはずがない」みたいな。しかし、「緻密に練られた物語」なんて宮崎駿にとってもはやどうでもよくて、ただただ脳内に溢れる人並み外れた狂ったイマジネーションをフィルムに焼き付けたかっただけなのかもしれない。「もう年齢的に長編アニメは最後になるだろーし、やりたい放題やるぜ」と。しかも、CG全盛のこのご時世にオール手描きのアニメで対抗し、世界に対して日本のアニメ…いや、スタジオジブリの技術の底力を見せ付けるような形で。
『崖の上のポニョ』に対する子供たちの反応はどんなもんなんだろう。とりあえず上映中は所々で笑いが起こっていた。じゃ、見終わった後は?「面白かった」「ポニョが可愛いかった」って喜ぶ子と「つまんなかった」「ポケモン(他、ナルト、ダークナイト等のシネコン映画)の方が面白かった」と不満を漏らす子に分かれるだろう。見てないからわかんないけど、物語としてはポケモンの方が面白くて興奮出来るだろうね。でも一部…1%ぐらいの子供は、あの狂ったヴィジョンに感化されて「自分もああいうの作ってみたいな」なんて思うかもしれない。未来の日本産アニメの担い手を沢山生み出すかもしれない。「子供の頃に見た『崖の上のポニョ』に感動してアニメ制作の世界に入りました」みたいな人が、20年後ぐらいに出て来るかもしれない。「子供たちのために作った」という発言は、現役を引退する自分が、次の次の次ぐらいの世代にバトンを渡したい、という意味があるのかもしれない。
子供の付き添いで見に来た大人とかはどう思うんだろうね。ポニョの父親に感情移入して「あぁ、可愛い娘がよくわかんない男に惚れて暴走しちゃったらどうしよう…」なんて心配したりするのだろうか。とりあえず、子供が魚の入ったバケツに水道水を注ごうとしてたら親なら止めるべきだよな。「ポニョは人面魚だから平気だけど普通の魚だったら死ぬよ」と。

Blue-ray

2008-08-16 19:12:11 | 映画
ネットで「竹中直人、ブルーレイディスクで『ブレードランナー』を見る」みたいな記事を読んだ。1982年に公開され、以降の近未来を舞台にした映画・アニメ、ついでにL'Arc-en-Cielの「NEXUS 4」に多大な影響を与えたSFの金字塔『ブレードランナー』。映画の舞台…古びたレトロなビル群に、無計画にネオンサインや商業広告が埋め込まれた、荒廃と華やかさが雑多に同居した街並み、その街を行き来する、ありとあらゆる人種…無国籍都市と化した近未来のロサンゼルスは今見てもシビレる。「そりゃ、みんな自分の映画でマネしたくなるわ」みたいな。映画やアニメの世界だけじゃなく、例えば今の上海とかって写真や映像見る限りモロに『ブレードランナー』。『鉄腕アトム』で描かれた超ハイテクな未来都市は結局ファンタジーでしかなく、現実は『ブレラン』のようなゴチャゴチャな都市に進化していくのだ。
で、そんな『ブレードランナー』が遂にブルーレイディスクで発売された、と。よくわかんないけど、無茶苦茶画質が綺麗なんでしょ?ブルーレイは。『ブレードランナー』の街角に、隅から隅まで書きなぐられた落書きとかもクリアに見えるらしいじゃん。DVD画質じゃ一部しか視認出来ないもんなー。あぁ、ブルーレイディスクが観られるハードが欲しい。でも高い。どうでもいいけど「ブルーレイ」って聞くと綾波レイのことばっか頭に浮かんで来て困る。最近DVDで『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』を見直して、遂にレイの魅力に気付いてね。もうアスカとかが活躍するであろう続編『破』とか半分どうでもよくなったりして。…何の話だ。『ブレラン』だろ。
『ブレードランナー』は、人間が重作業用・戦闘用・性処理用などに造ったアンドロイド「レプリカント」の反乱を阻止するため、刑事役のハリソン・フォードがいつもの「困ったような苦笑い(別名:インディ・スマイル)」を浮かべながら近未来のロサンゼルスを駆け巡る、そんな映画。レプリカント達はより人間に近くなるよう、感情が芽生えるような仕様だが、耐用年数はわずか3年。人間に反抗したレプリカント4体は、耐用年数を延ばすよう、製造主に交渉しにロサンゼルスにやってきた。彼らを抹殺するため、ロス潜入捜査を始めるハリソン・フォード……「感情が芽生えるように設定したやつアホだろ」というツッコミは無しね。
ハリソン刑事は『ブレードランナー』では、何とも頼りない姿ばかりが目立つ。銃撃は上手いんだけど、銃無しの肉弾戦になると激弱。肉体派のレプリカントに圧倒されまくってしまう。そんなハリソンに対し、レプリカントは異様に魅力的。知力・体力優れたリーダー、体力自慢バカ、白塗りの女…(ちなみにこれらのキャラ造詣は後続の「アンドロイドものアニメ・映画」に多大な影響を与えており、特に宇多田の元夫が監督した『CASSHERN』に対しては「『新造人間キャシャーン』の実写化か『ブレラン』のリメイクか、はっきりしろ」と突っ込んだ人は少なく無い)。彼らが寿命に抗って必死に生きようとしたり、感情爆発させたり姿を見てると愛おしさすら感じられる。「なんでこいつら殺されなきゃいけねーんだよ(泣)」と。
人間側はハリソン以下、感情を表に出さず、そもそも感情が備わってるかすら疑問なくらい表情が乏しい。感情は元から備わってるモノでは決して無いしね…。ただ、黙々と折り紙を折る無口なオッサン・ガフは萌える。ハリソンが危険なレプリカント抹殺の仕事を断ると、無言で折り紙の鶏(チキン)を差し出すガフ。
そんなガフも良いが、『ブレラン』観れば誰もがレプリカントのリーダー・ロイの男気に惚れるだろう。戦闘シーンは勿論、キスシーンもたまらない。ロイ役のルドガー・ハウアーのアドリブが入ってるキスシーンはこの映画最大の名場面だと勝手に思っている。つーかルドガー・ハウアー本当かっこいいよな。彼が主演した、鬼畜監督ポール・バーホーベンの『危険な愛』や『グレート・ウォリアーズ 欲望の剣』(これ最近見た)も生々しくて最高。
いいなぁ、ブルーレイディスクで『ブレラン』。竹中直人が羨ましい。

夏休み映画2008

2008-07-22 14:47:15 | 映画
劇場公開映画が一番盛り上がる季節・夏。やはり今年はスタジオジブリ最新作『崖の上のポニョ』が話題を独占中。一度聴いたら耳から離れない「ポ~ニョポ~ニョポニョさかなの子~」というテーマソングのインパクトがとにかく凄い。しかし……なんだ、あの…人面魚。ポスター見た瞬間「だ、大丈夫か!!?」と不安になったが、いち早く見に行った周囲のジブリファンは皆さん絶賛。とにかくポニョの動きが可愛いとのこと。…ジブリファンとは程遠い私でも楽しめるだろうか。まぁ、遅かれ早かれ見ることになるだろう。可愛くないポニョの造形も、良くも悪くもただならぬインパクトを見る者に与えているのは確かだから映画自体も凄いかも。『千と千尋』のように、監督の「ルイス・キャロル的趣味」が、豊かなイマジネーションの裏に隠蔽されてるような作品だったら面白いな。
『ポニョ』以外で気になる映画は「『ダイハード』の田舎の駐在さんバージョン」との呼び声高い『ホットファズ~俺たちスーパーポリスメン』とか、素敵バカ映画『俺たちフィギュアスケーター』の監督の最新作『俺たちダンクシューター』、オランダ人鬼畜監督ポール・バーホーベン総指揮の『スターシップトゥルーパーズ3』とか。ま、全部見に行くのは無理だろうな。そういえばまだ『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国』も見てないし…。なんだかんだで今年は気になる映画盛り沢山。見逃した映画も盛り沢山で、夏はTSUTAYA通いになるかしら。
あと、気になるといえば実写版『20世紀少年』。8月30日公開だから夏休み映画じゃないけども。漫画版のラスト読んで開いた口が塞がらなかったが、少なくない期間、漫画版読んで興奮した者として無視出来ない存在である。漫画版の物語の収束の仕方は悪い意味で衝撃だったけど映画版は三部作で、今年公開の一作目は『20世紀少年』で最もスリリングな部分、謎が謎を呼ぶ展開に物凄い引力で引き寄せられる部分が映像化されてるはず。しかも原作者である浦沢直樹が脚本に参加している…これは見るしかない。漫画の実写映画化で成功した例なんてほぼ無いから『20世紀少年』もヤバそう。だからあまり期待しないで待ってます。
「期待しない」なんて言っちゃったけど、30代後半~40代前半の実力派俳優たちが集結したようなキャスティングには興味あり。あの人たちなら各キャラの魅力をきっちり表現してくれるだろう…脚本がダメでもキャラの魅力だけで映画を引っ張ってくれるはずだ。脇役も秀逸で、「友民党の集会に出てくるロックバンドのボーカル」というチョイ役にも程がある役を及川ミッチーにやらせたりとか…良いと思うよ~。ただ、心配なのはカンナ役だね。一作目にはまだ出てこないらしく、カンナ役はまだハッキリしてないけど、一部では無名の若手女優がやる、なんて報道も…や、やめてくれ…。

というわけで、とりあえずは『崖の上のポニョ』ですな。「♪ポ~ニョポ~ニョポニョ」に洗脳されに、行ってきます!!

稲穂も揺れる恋揺れる、私はタクシードライバー

2008-06-25 17:32:04 | 映画
6月8日、私が大阪でラルクのライブ見てた日に起きた、陰惨たる秋葉原通り魔事件。事件が起きた頃は確か、グッズ買うために暑さに耐えつつ行列に並んでたんだっけ。事件を知ったのは夜10時過ぎ、帰りの新幹線の中だったな。ライブの余韻に浸りまくりたかったからこの事件について深く知ろうとは思わなかったけど、数日経ってから新聞やネットで関連記事を読むようになった。多くの記事の話題の中心は容疑者が犯行前にアクセスしてた携帯サイトの書き込み。悲観と諦めと自虐と被害者意識が詰まった陰欝な内容の書き込みの数々。あれ読んで、真っ先に映画『タクシードライバー』を思い出したのは私だけではないだろう。「あー…この人もトラヴィスか」。トラヴィス…『タクシードライバー』の主人公。憂鬱な日々にマシンガンをぶっ放した、独りぼっちのやさぐれ白人青年。
『タクシードライバー』は、アメリカ大統領候補者を銃撃して重傷を負わせ服役中の犯人アーサー・ブレマーが事件前に書いていた日記を元に作られた1976年の映画。子供のころから内気で、友達も恋人も居ないという孤独に苛まれ、鬱憤が溜まったブレマーは映画『時計じかけのオレンジ』を観て自分も人を殺してみたくなり、犯行におよぶ。彼をモデルにして作られたキャラ、『タクシードライバー』のトラヴィスも孤独だ。ベトナム戦争からの帰還兵という、70年代のアメリカ社会から冷遇された経歴。深夜のニューヨークでのタクシー運転手という、低賃金かつ孤独な仕事。ベトナム戦争に徴兵されたのは主に高等教育や職業訓練を受けられなかった貧困層だったので、任期を終えてアメリカに戻っても、就ける職業は限られていた。彼の唯一の楽しみは、深夜の映画館でポルノ映画を観ること。ただそれだけ。孤独かつ退屈な毎日。
秋葉原の通り魔は何故あのような凶行に至ったのか。様々な分析が成されているが、携帯サイトの日記に書かれた「自分より少しでも幸せな奴らみんな死ね!」的な…たむらけんじ的思考が犯行に繋がったならば、トラヴィスと同じだ。全編通して鬱屈しているトラヴィスに対し、彼の周囲の人々は皆、結構華やか。大統領候補者の選挙事務所で働くベッツイは女性の社会的地位の向上を象徴するキャリアウーマン。ギャングに雇われヒモを抱えつつ娼婦をしている家出少女アイリスは境遇こそ哀れだが、本人はヒモに本気で惚れててそこそこ楽しそうだ。トラヴィスはベッツィをデートに誘うが、何を思ったかポルノ映画館に連れて行ってしまいこっぴどくフラれる。また、アイリスに「まだ若いのに体を売るなんて」と説教するも、全く相手にされず。華やかな彼女たちと上手く関わり合えないトラヴィスの鬱憤は溜まる一方だ。
そんなトラヴィスが運転するタクシーに、ある白人の男が乗ってくる。男はイライラしている。原因は妻の浮気。相手は黒人らしい。1970年代は黒人の地位が向上した時代。天性のリズム感、優れた身体能力、陽気さなどを武器に音楽シーンやスポーツ界で大活躍した黒人は、ベトナム戦争敗北で自信を無くした白人を圧倒。『タクシードライバー』に出てくる黒人達もオシャレで魅力的だ。トラヴィス達白人は、皆くたびれてるのに…。タクシーの乗客の妻も、そんな黒人に惹かれて浮気に走ったようだ。「あの浮気女をこの44マグナムで殺してやる」と乗客。彼はトラヴィスの退屈な日々に火を点けた。「俺もやるぜ。騒ぎ起こしてくだらない日常を転覆させるんだ」ぐらいの事、思っただろう。
トラヴィスは密売人からマシンガンを買い、体を鍛え始める。ターゲットは、自分をフッた事で心底逆恨みしているベッツィ…ではなく、彼女が勤める選挙事務所が推す大統領候補者。しかし、いざ演説中の候補者を射殺しようとするも、SPのガードが強固で断念し、代わりにアイリスを囲うギャング達を標的にした。そして泣き叫ぶアイリスを尻目にギャング達を虐殺。虐殺シーンで飛び交う血飛沫は必見だ。なんてったって、「一発で車のエンジンをぶち抜く」44マグナムですから。
…それでもトラヴィスはモデルとなったアーサー・ブレマーのように、罪に問われることはなかった。秋葉原の通り魔並に残虐な事をしたのに、トラヴィスは「少女をギャングから救った」ということで世間から賞賛されたのだ(これがよくわからんのだ。殺した相手が悪い奴だと罪にならないの?アメリカは。まぁ、黒人を虐殺した白人が無罪になったような国だしな…)。
『タクシードライバー』は、同じ1976年の映画『ロッキー』と、ストーリーがよく似ている。主人公は冴えない日々を送る低所得の白人。しかし女性との関わりによって運命が変わる。ロッキーはチャンピオンを倒すため、トラヴィスは大統領候補者を銃撃するため、体を鍛え上げる。そして最終的に世間の脚光を浴びる。中身がポジティブかネガティブかの違いで、ストーリーの大筋は一緒。秋葉原の通り魔も、『ロッキー』コースに転んでりゃ良かったのに。彼はトラヴィスの仲間になってしまった。トラヴィスの仲間…まぁ、今時何処にでも居るんだろうね。彼らにもエイドリアンが居たらいいのにね。…そんな簡単な問題じゃねーか。

『ミスト』-「だーめだこりゃ…」な世界

2008-05-27 07:44:32 | 映画
映画『ミスト』観て来た。…凄かったー。エンドロール終わっても、しばらく座席から立ち上がれなかったし、内容についても話す気になれなかった。「…とりあえず子役の男の子、可愛かったね」ぐらい…。宣伝されている通り「衝撃のラスト15分」。大体こういう宣伝文句って観る側に過剰な期待させちゃって「別に衝撃ってほどでも無かった」みたいな事態になるが、今回の場合、事前の煽りは制作側の親切心なんじゃないかとさえ思ったりした。「ラストシーンが凄い」って予備知識無しで見たら、しばらく立ち直れないかもなー…。ネタバレ厳禁。観た人同士ならばラストの賛否含めていっくらでも語り合えるような映画だけど、観てない人に向けては何も言えない、ブログのネタにするには危険な映画である。ミステリーものみたいに「犯人当て」の要素は無いからネタバレしてもそれなりに楽しめるんだろうけど……やっぱあの衝撃を味わってもらいたいよね。

以下簡単なあらすじを。暴風雨の翌日、息子を連れて車でスーパーに買い出しに行った主人公の男。普通に店内をウロウロしてたら、突然、顔から血を流した男がスーパーに駆け込んで来た。彼の話では、霧の中に、危険な何かが居る、と。だから霧の中には入るな、店の外には出るな、と。気付けば、周囲は謎の霧ですっぽり覆われていた………。

「謎の物体が街を襲う!」という内容は『クローバーフィールド/HAKAISHA』と似ている。しかし、事前にyoutubeにバラまかれた『クローバーフィールド』の断片映像のインパクトに比べると、映画自体のインパクトは実はたいしたことなかった。いや、実際凄い映像なんだけど、特に自由の女神の映像は、周囲で写メ撮ってる人々含めて妙にリアリティある映像なんだけど、初めてyoutubeで映像見た時の衝撃を超えてないのだ。完全なる出オチ映画というか…。舞台となったニューヨークに住んでる人とかは『クローバーフィールド』見ると、911のテロを思い出して怖くなるらしいけど、あの映画には貿易センタービルに飛行機が突っ込む映像より衝撃的なもんは映ってないよ。……あれ、何が言いたかったんだっけ。とにかくネタがかぶってるけど、『クローバーフィールド』と『ミスト』は違うぜ、と(当たり前だ)。
話題の『ミスト』ラストシーンは原作の小説とは異なるらしい。監督のフランク・ダラボンが原作者スティーヴン・キングに「こんなラストで撮ろうと思うんですが」と連絡し、キングが「うわ、そのラスト最高…」と悔しがったという。人によっては「思い付いたからって普通やるか!?」とダラボン監督を問い詰めたくもなるだろう。しかし衝撃のラストを除けば『ミスト』は極めてオーソドックスかつ良質なパニック映画で、ハラハラな展開やリアルに怖い人物描写は見応え抜群。ラストに納得がいかない人も、「映画自体つまんなかった!」と怒る人は少ないだろう。本当、超オススメ映画です。賛否両論あるけど、観たら一生忘れられない映画になること間違いなし。話題が広まり、最近になって客足が伸びてきてるみたいだが、ぜひDVDでなく、満員の映画館で観て欲しい一作。ただしR15なのでグロ苦手な人は注意かな。

少年メリケンサック×少年レントゲンが見たい

2008-04-28 00:17:24 | 映画
宮藤官九郎が『少年メリケンサック』という映画を撮るらしい。宮崎あおい演じるロックに興味の無いレコード会社社員の女の子が、「少年メリケンサック」というオヤジばかりのパンクバンド(メンバーは佐藤浩市、木村祐一、ユースケ・サンタマリア)の全国ツアーに同行することになり…という、あらすじから既にドタバタコメディーの匂いがプンプン漂ってくる話である。
「少年メリケンサック」という映画タイトル&バンド名で私が思い出したのは、宮藤脚本の連続ドラマ『マンハッタンラブストーリー』に登場した「少年レントゲン」というヴィジュアル系バンドだった。塚本高史演じる喫茶店のウエイターがプライベートで組んでるバンドで、バンドのコンセプトは「人体実験された美少年」。曲は聖飢魔Ⅱ×初期Xみたいな、悪ふざけとハードコアの間を横断する変なバンドだった。ライブを「ギグ」ならぬ「オペ」と称し、「只今からオペを開始する!我々は、少年レントゲンだぁ!!」と絶叫してライブスタート。以下、歌詞を抜粋(もちろん作詞・クドカン)。

霧の立ち込む森の病院
ここは少年レントゲン室
夜が紅に染まる時
人体実験の儀式が始まる
さあ吸って吐いて息止めて(少年レントゲン)
お前の心写してやる
さあ吸って吐いて息止めて(少年レントゲン)
お前の全て壊してやる

ドラマが放送されたのは2003年の秋。当時は「うわ、今時ヴィジュアル系か…懐かしいなぁ(笑)」なんて言って笑ってた。2003年前後って、90年代に興ったヴィジュアル系ブームは完全に沈静化してたし、多くのバンドはアンダーグラウンドに潜り込んでいた。代わりに流行ってたのはブルーハーツリバイバルみたいなパンクやメロコア系バンド、バンプやアジカンのようなギターロック、それからヒップホップ勢で、ヴィジュアル系バンドの入る隙間は無かった。世間はヴィジュアル系の存在を忘れた、又は二度とオーバーグラウンドで受け入れられることは無いと思っていた。売れてないわけじゃないが、アングラで手堅くやってくんだろうな、と。現在のような「ネオヴィジュアル系ブーム」が興り、彼らにもう一度スポットライトが当たる日が来るなんて誰も思ってなかった。LUNA SEAやXが再結成するなんてことも、2003年当時は考えられなかった。このような「ヴィジュアル系・冬の時代」にラルクが活動休止してたり、Gacktが「ガックン」としてお茶の間でブレイクしてたりするのって、実は凄く興味深かったりして。
映画『少年メリケンサック』の制作発表を見た時、私は「オヤジパンクバンドかぁ…面白いんだろうけど、どーせバンドが出てくる物語だったら少年レントゲンみたいなヴィジュアル系を出して欲しかったな(笑)」なんて思ってしまった。だってオヤジもパンクも、クドカンと関係が深すぎる、というか既視感がありすぎるもん。若い女の子×オヤジ集団という組み合わせは同じクドカン作品で、田中麗奈がオヤジ達を率いてラクロスする『ドラッグストアガール』再び、という感じだし、みうらじゅん原作作品の脚本を担当した『アイデン&ティティ』はパンクバンドが苦悩する作品。さらにクドカンが俳優・脚本活動と平行してやっている、「君にジュースを買ってあげる」という曲で紅白出場まで果たしたバンド「グループ魂」はパンクバンド。…で、少年メリケンサックもパンクバンド。なんとなく新鮮味に欠ける…。
しかし、抜群のコメディセンスを持つクドカンが、彼の人生に全く縁が無かったであろうヴィジュアル系バンドを描く、とかだったら凄く興味がある。『マンハッタンラブストーリー』の「少年レントゲン」と宮崎あおいが絡むなんて超気になるじゃないか!……まぁ、ここでこんなこと書いてても仕方ないですが。対バン相手とかで奇妙なヴィジュアル系バンド出てきたりしないかなぁ…。 

Be Kind Rewind

2008-04-15 19:28:16 | 映画
『Be kind rewind』という映画が気になる。アメリカでは公開されるやいなや大好評。一日も早い日本公開が待たれる映画として一部で話題騒然の映画だ。
日本未公開だが、あらすじは既に明かされている。舞台はとあるビデオレンタル店。ある日、電磁波の影響で、店内に置いてある全てのビデオソフトの映像が消えるという大惨事が発生。これじゃ商売にならない!!困った店員たちはなんと、自力で有名な映画のパロディーのようなものを撮り、そのビデオを店に並べるという暴挙に出てこのピンチを乗り切ろうとする。映画の撮り方など全く知らず、予算だって全く無い店員が生み出す名作映画の「リメイク」の数々は抱腹絶倒。アルミホイルで作ったようなショボい衣装を身に纏った『ゴーストバスターズ』、小学生の工作並の仮装でウロウロする『ロボコップ』、段ボールで作った紙芝居みたいな『ライオンキング』………
YOUTUBEで、この『Be kind rewind』の北米版の予告を見る事が出来る。素人が必死で作った低予算リメイク映画の面白さ、バカバカしさは予告編で充分窺い知る事が可能。この映画は、「CGに金をかけまくっただけの映画の何が面白いんだ?」ということをストレートに描いた作品なのだろう。映像技術の劇的な発達で、もはやCGで表現出来ないものなど何も無いと言われている。しかしながら、技術の進歩と映画の面白さは比例しない。迫力あるCG以外に褒める所が見当たらない映画は沢山あるし(『300』もCGが凄い映画だったが、あの映画のエンターテイメント性の本質はCGではなく、鍛え抜かれたスパルタ男子達の肉体と狂った精神力にある。誤解の無いよう注意されたし…って我ながらウゼー)、逆に今から見れば相当ショボい映像であるSF映画『猿の惑星』や『未知との遭遇』だが、作品自体の魅力は全く薄れてはいない。また、アクションシーンにCGを使わず生身の人間に委ねた『アポカリプト』も傑作だった。生身。生身の人間が繰り出す動きは、見せ方次第でCGを凌駕するのだ。いやぁ、予告編何度見ても笑える。なにあのショボすぎるロボコップ。作りはコント以下だけど、キレ味とインパクト抜群だ。
素人パワーの脅威、というのもこの映画のテーマだろうか。youtubeのおかげで、自作の映像を全世界に発信することが誰にでも可能になった時代である。ブログが流行りだした頃、「誰もが情報を発信する側、メディア側になれる時代」みたいなことを言われてたが、それよりもさらに発展している。youtubeに大量にアップされてる自作映像は、アニメの素材を編集して作った所謂MADやら、曲と曲を勝手に合体させたマッシュアップもの(モー娘×ライムスの「アマチュアリズムレボリューション」は名作!)、コピーバンドの映像など、素人の自己主張が爆発した珍品がずらりと並んでいる。大半はくだらないものなのかもしれないが、それでもたまに、キラリと光るセンスの持ち主に出会えたりもする(宇多田や安室、浜崎などの曲を英語に訳してカバーするアメリカ人、ソプラノリコーダーでラルク吹くブラジル人…)。そういった素人表現者たちのパワーが、『Be kind rewind』にも溢れてるはずなのだ。
主演は『スクールオブロック』がヒットしたジャックブラック。あの映画日本でもかなりヒットしたし、『Be kind rewind』の日本公開もそう遠くないかもな。

Be Kind Rewind trailer