つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

時代を反映して

2005-03-19 11:29:21 | 古典
さて、これからマンガも含めることにした第109回は、

タイトル:とりかへばや物語(1)(2)(3)(4)
著者:不明(訳者 桑原博史)
出版社:講談社学術文庫

であります。

含めると言いながら古典(笑)

「とりかへばや」というのは、「とりかえたいなぁ」と言う意味。

主人公は、活気があって男勝りな姫君、もうひとりが内気でなよなよした若君。
長じるに連れて姫君は公達として、若君は姫として世間に出るようになる。

これだけならまだしも、まるで源氏物語のように姫君は若くして中納言、若君は後宮に入って女東宮(にょとうぐう)付きの尚侍(ないしのかみ)に。(女性の最高職。ただし、そのうち、帝の愛妾みたいな側面を持つようになった)
さらに姫君は右大臣家の姫君と結婚するわ、若君は女東宮に手を出すわ……話の内容はかなりはちゃめちゃな内容になってる。

ざっくりとした話はタイトルの各巻のリンクからamazonに行けばわかる。

まぁでも実際に読んでみた感じでは、姫君、親友の宰相中将(さいしょうのちゅうじょう)に押し倒されて子供を産む。けれどこれを捨てて若君と入れ替わって後宮へ戻り、さらに帝に愛されて中宮になって幸せな人生を歩むことになる。

ただ、ラストにこの宰相中将(三位の参議と兼ねる中将。概ねいいとこのぼっちゃんがなる)がいまは中宮となってしまった姫君の子供を慈しみながら、かのひとはどこへ……と言うシーンがえぐい。

ストーリーもかなり無理がある。
だいたい姫君と若君が入れ替わることになるわけだけど、この時点で姫君は右大将、若君は尚侍。
まったく接点のない仕事の割に、あっさりと入れ替わって周囲に溶け込むふたり。

いちばんの難点はここかなぁ。

でも、やはり時代を反映して、雰囲気は退廃的で、重い。(成立は平安末期)
けっこうどろどろしたところもあるし、暗い、重い話が好きな私にとってはいくつかの難点を除けばけっこう楽しめる作品だと思う。

まぁ、枕草子や源氏物語のようにメジャーではないけど、ここまで残ってる作品だけのことはある。

ただ、やはり学術文庫なので、原文、語釈、訳文の構成。
他にも訳文だけのものもあるので、逆にそっちを読むほうが古典が苦手なひとにはいいかもしれない。

でも、古典好きとしては、原文でしか味わえない雰囲気とか、そういうのを見てもらいたい、とは思うけど。