つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

十二国初の取り組み

2005-03-16 19:21:38 | ファンタジー(異世界)
さて、陽子の発案でいろんなことをする第106回は、

タイトル:黄昏の岸 暁の天(下) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

この下巻での見せ場はいくつかある。

まずひとつはタイトルにもあるように十二国が歴史上初めて他国の麒麟のために、各国の麒麟が集まって泰麒を捜す、と言うのが話のメイン。

李斎が頼ってきた慶はもちろん、陽子と親しいから巻き込まれた雁、南の大国奏、珠晶が治める恭、「風の海 迷宮の岸」でも泰麒を連れ戻すために出てきた漣、「風の万里 黎明の空」で鈴がいた才、そして初お目見えの範。

合計7国の麒麟が集まって、泰麒を捜すことになる。

まぁ、ストーリー上、泰麒が蓬莱に流されたのか、崑崙(中国)に流されたのかわからないので、二手に分かれる。
崑崙へは奏、恭、才の3国なので、蓬莱へ向かうのは、慶、延、漣、範。

と言うわけでこれだけの麒麟が出てくるわけだけど、まぁ、ものの見事に性格が違う。
景麒と延麒はいままでよく出てるからいいけど、氾麟はいたずら好きのちょっと生意気な少女と言う様子。
控えめでおとなしい廉麟がいちばん麒麟らしいのかもしれない。

さておき、麒麟自身が渡って使令を使って捜索は始まる。

ストーリーのメインはこの捜索の話。
その合間に李斎の話がちょこちょこと入ったりする。

さて、もうひとつの見せ場……といえるかどうかはわからないけど、この世界の神に逢うこと。

最初は諸国が協力して泰麒を捜すことが天綱に触れるか、などを訊くために蓬山の主、碧霞玄君のもとへ。
そこで、玄君は天へ諮ってその答えを得てくる。

そして泰麒が戻ってきたあとには、陽子、延麒、李斎は西王母に面会し、泰麒を助けてもらう。

この話になってなにかだいぶいろんなこと……かなり設定的なことがわかってくる。

さらにもうひとつは泰麒。
魔性の子を読んでいればそうはないのかもしれないけど、泰麒を連れ戻すところ。

まぁ、大きくはこんなところだと思う。
見せ場じゃないけど、上巻から続く李斎の心理描写は秀逸。
相変わらず、人間を描くのはうまい。

けど、ただひとつ。
ラストに泰麒と李斎はたったふたりだけで戴へ戻ることにしたわけだけど、いままでと違って、ちょっとここが中途半端、かな。

まぁ、これからの戴の話を、と言うのはわかるけど、いままできっちりと、終わらせていただけに惜しいところ。

十二国記シリーズの中では、最も評価が低いかもしれない。

それでも他の氾濫する小説群の中で言えば、抜きん出ていい話ではあるんだけどね。



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