つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

主人公とは、すなわちアウトサイダーである。

2005-03-04 18:56:50 | ファンタジー(異世界)
さて、一部のファンタジィ・ファンにとっては垂涎の第94回は、

タイトル:カメレオンの呪文
著者:ピアズ・アンソニィ
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

「時よ止まれっ! ザ・ワールドッ!」

いや、JOJOごっこはいいとして……。
本書は、知る人ぞ知る『魔法の国ザンス』シリーズの第一作です。

ザンスの世界では、誰もが独自の魔法の力を持っています。
しかし、主人公ビンクにはそれがありません。
おまけにザンスには、25歳までに魔法の兆候が現れなかった場合、別世界(要するに人間世界)に追放されるというハードコアなルールがあったりします。

ビンクに残された時間はたった一ヶ月。
果たして彼は自分の魔法の力を見つけることができるのか……?

ハイ・ファンタジーというジャンルには、幻想世界での不思議な出来事を描くことを目的としたものと、幻想世界を利用して現実を描くものの二種類がありますが、これは後者の部類に入る作品です。つまり、ビンクの『魔法の兆候』を、『職業的資質』とか『芸術的才能』に置き換えても話が成立するということです。

ま、成長物語だということは、あらすじだけで察しがつくでしょうけど。(笑)

登場人物の会話が非常に論理的かつ現実的で、物語をしっかりと支えています。
ファンタジーと言うよりはむしろSFに近い作品です。
しかし、ちゃんと魔法は興味深いものとして扱われていますし、世界も(私達から見れば)不思議に満ちています。

ファンタジー好き、SF好きどちらにもオススメ。
ただし、ヒロイック・ファンタジーではないので注意。
ビンク君は素敵な青年ですが、英雄でも超戦士でもありません。