さて、陽子の活躍がかなりかっこよかった第103回は、
タイトル:風の万里 黎明の空(下) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート
であります。
下巻に入ってしばらくしてから一気にストーリーは動く。
止水郷での出来事から、教えを請うている遠甫と言う人物から慶国の実情を知る陽子。
そして清秀を殺され、復讐を決意する鈴。
楽俊に景王がいかにして玉座を選んだのかを知り、その人となりを知りたいと景王を目指す祥瓊。
それぞれが新たな理由を持って慶国へ入り、止水郷へと向かっていくこととなる。
さて、ストーリーが動くのは、極めて悪辣な官吏……郷長が治める拓峰で乱を起こすために集まった義賊たちの存在が出てから。
鈴はこの郷長である昇紘に復讐するためにこの義賊の仲間になり、着々と乱の準備をする。
祥瓊はと言うと止水郷でひとを集めて、戸籍もくれて……なんて噂を聞いて、止水郷へ向かうことにする。
辿り着いたのは止水郷よりまだ東の和州州都明郭。そこで、芳でしか行われていないはずの磔刑を見て愕然とし、思わず刑吏に石を投げてしまう。
それで追われることになり、陽子の助けを得て、そして傭兵だと名乗る得体の知れない男に助けられる。
で、陽子はと言うと景麒と一緒に明郭に行ってみたりと和州の実情がどんなものなのかを見聞し、いかに王として何も出来ていないかを実感する。
そして、里に戻ってみると里家が荒らされ、一緒に住んでいた子供たちは殺され、傷つけられ、遠甫までがいない。
理由はわからないが、関係がありそうなのは拓峰で出会った男たち。
そこで、あの義賊に出会い、そして鈴に出会い、昇紘を討つために集まったことを知り、これに加わる。
ここでまず陽子と鈴がともに戦うことになる。
祥瓊はと言うと、厄介になっているところが実は侠客の集まり。
義賊が拓峰で、こちらは和州州都明郭で王に国の実情を知ってもらいたいと集まっていた。
そこで義賊に武器を渡すための使いに選ばれたのが祥瓊。
ここで接点が出来る。
そしてとうとう拓峰で乱が起きる。
様々な計略を用いて郷城を落とし、昇紘を捉える陽子と義賊の仲間たち。
ここからはほとんど合戦。
拓峰での乱を知った祥瓊たちまで参戦し、拓峰の兵だけでなく、州の軍……州師まで出てきてどんどん規模が大きくなってくる。
続いて明郭にまで乱が起こり……とうとう禁軍……いわゆる王の近衛軍のようなのまで出てくる。
ここまではテンポのいい合戦が続いていて、読みやすい。
女性の作家にしては剣を持って戦う場面とかもしっかり書かれているし、流れがよく、どこも描写で引っかかったりするところがない。
上巻は陽子、鈴、祥瓊の3人の人間ドラマが中心で、下巻は前半がこの乱を起こすための話。
里家が襲われたり、武器を集めたりと、その後に続くこの戦いの緊張感と言うものを最初は淡く、そして引き絞られた弓のように高めていく構成はすばらしい。
合戦の描写も上に書いてあるように流れはいい。
文章はけっこう地の文が長いんだけど、ほんとうにそれを気にさせない。
そしてやはり最後の締めは陽子。
禁軍が出てきたことで「月の影 影の海」のときのように戦いに慣れた覇気を、怒気とともに纏う陽子。
かっこよすぎっ!
さらに景麒に騎乗し、禁軍……王師の将軍に向かって出陣の真偽を糾す姿はいかにも王。
そして、勅命をもってこの乱の原因ともなった官吏を捕らえ、王宮に戻ることになる。
まぁ、その後のエピローグのところはさておき、このクライマックスのあとの、もうひとつの見せ場が戻ったあと、陽子が初勅を宣言するところ。
「諸官はわたしに、慶をどこへ導くのか、と訊いた。これで答えになるだろうか」
諸官の返答はない。視線だけが王に向かう。
「その証として、伏礼を廃す。――これをもって初勅とする」
クライマックスに続いて、最後の最後でもうひとつあるのがまた憎い。
書いてなかったけど、この初勅のことは上巻からあった話だからこれまたうまく構成されている。
何度読んでもこのラストはクライマックスの余韻と相俟って印象に残る。
上下巻あわせて700ページを超えるくらい長くはなったけど、このシリーズの中ではこの陽子の話が3本の指に入るくらい気に入っている。
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タイトル:風の万里 黎明の空(下) 十二国記
著者:小野不由美
出版社:講談社X文庫ホワイトハート
であります。
下巻に入ってしばらくしてから一気にストーリーは動く。
止水郷での出来事から、教えを請うている遠甫と言う人物から慶国の実情を知る陽子。
そして清秀を殺され、復讐を決意する鈴。
楽俊に景王がいかにして玉座を選んだのかを知り、その人となりを知りたいと景王を目指す祥瓊。
それぞれが新たな理由を持って慶国へ入り、止水郷へと向かっていくこととなる。
さて、ストーリーが動くのは、極めて悪辣な官吏……郷長が治める拓峰で乱を起こすために集まった義賊たちの存在が出てから。
鈴はこの郷長である昇紘に復讐するためにこの義賊の仲間になり、着々と乱の準備をする。
祥瓊はと言うと止水郷でひとを集めて、戸籍もくれて……なんて噂を聞いて、止水郷へ向かうことにする。
辿り着いたのは止水郷よりまだ東の和州州都明郭。そこで、芳でしか行われていないはずの磔刑を見て愕然とし、思わず刑吏に石を投げてしまう。
それで追われることになり、陽子の助けを得て、そして傭兵だと名乗る得体の知れない男に助けられる。
で、陽子はと言うと景麒と一緒に明郭に行ってみたりと和州の実情がどんなものなのかを見聞し、いかに王として何も出来ていないかを実感する。
そして、里に戻ってみると里家が荒らされ、一緒に住んでいた子供たちは殺され、傷つけられ、遠甫までがいない。
理由はわからないが、関係がありそうなのは拓峰で出会った男たち。
そこで、あの義賊に出会い、そして鈴に出会い、昇紘を討つために集まったことを知り、これに加わる。
ここでまず陽子と鈴がともに戦うことになる。
祥瓊はと言うと、厄介になっているところが実は侠客の集まり。
義賊が拓峰で、こちらは和州州都明郭で王に国の実情を知ってもらいたいと集まっていた。
そこで義賊に武器を渡すための使いに選ばれたのが祥瓊。
ここで接点が出来る。
そしてとうとう拓峰で乱が起きる。
様々な計略を用いて郷城を落とし、昇紘を捉える陽子と義賊の仲間たち。
ここからはほとんど合戦。
拓峰での乱を知った祥瓊たちまで参戦し、拓峰の兵だけでなく、州の軍……州師まで出てきてどんどん規模が大きくなってくる。
続いて明郭にまで乱が起こり……とうとう禁軍……いわゆる王の近衛軍のようなのまで出てくる。
ここまではテンポのいい合戦が続いていて、読みやすい。
女性の作家にしては剣を持って戦う場面とかもしっかり書かれているし、流れがよく、どこも描写で引っかかったりするところがない。
上巻は陽子、鈴、祥瓊の3人の人間ドラマが中心で、下巻は前半がこの乱を起こすための話。
里家が襲われたり、武器を集めたりと、その後に続くこの戦いの緊張感と言うものを最初は淡く、そして引き絞られた弓のように高めていく構成はすばらしい。
合戦の描写も上に書いてあるように流れはいい。
文章はけっこう地の文が長いんだけど、ほんとうにそれを気にさせない。
そしてやはり最後の締めは陽子。
禁軍が出てきたことで「月の影 影の海」のときのように戦いに慣れた覇気を、怒気とともに纏う陽子。
かっこよすぎっ!
さらに景麒に騎乗し、禁軍……王師の将軍に向かって出陣の真偽を糾す姿はいかにも王。
そして、勅命をもってこの乱の原因ともなった官吏を捕らえ、王宮に戻ることになる。
まぁ、その後のエピローグのところはさておき、このクライマックスのあとの、もうひとつの見せ場が戻ったあと、陽子が初勅を宣言するところ。
「諸官はわたしに、慶をどこへ導くのか、と訊いた。これで答えになるだろうか」
諸官の返答はない。視線だけが王に向かう。
「その証として、伏礼を廃す。――これをもって初勅とする」
クライマックスに続いて、最後の最後でもうひとつあるのがまた憎い。
書いてなかったけど、この初勅のことは上巻からあった話だからこれまたうまく構成されている。
何度読んでもこのラストはクライマックスの余韻と相俟って印象に残る。
上下巻あわせて700ページを超えるくらい長くはなったけど、このシリーズの中ではこの陽子の話が3本の指に入るくらい気に入っている。
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