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ワレサ 連帯の男

2014年08月13日 | わ行 映画
「ワレサ」!この生ける伝説の男を、もう一人の生けるレジェンドのアンジェイ・ワイダが撮った。これを見ずして死ねるか!(とは、ちょっと言いすぎですが・・)そのくらい価値のある作品だったと思います。

ワレサ・・・と言えば、議長!!がぴったり。その後、大統領にもなりましたあ、ワレサ大統領って、なんか似合わない。やっぱ彼は連帯の委員長!という冠がぴったりだと思います。

はじまりは1970年。舞台はポーランド。厳しい生活ながらも子供の誕生を心待ちにしている普通の労働者の新米お父ちゃん、ワレサ。しかし、あまりの物価高、政府は何の対策も講じない。抗議すれば政府は軍を繰り出し、市民に銃を向けるというありさま。双方に冷静になるように声をかけるワレサだが、その声は届かない。

逮捕され、仲間が暴力を受けるのを見る。憤るワレサ。公安は弱みにつけ込んで、労働者側の動きを報告するようにとワレサに強制する。当時の社会主義国家のすることに、何の驚きも持たないが、別にものすごく高い志を持っていたわけでもなく、一人の労働者にすぎなかった男が、めきめきと頭角を現していく第一歩になった。

おかしいことはおかしいと訴えなけらばならない。だが、その当たり前のことができない社会。それがかつての社会主義と言われた体制であったが、はたしてどうなんだろう。目的に向かって一つになり、一致団結して要求を勝ち取る!これこそが組合の意義であり、そのために活動し、戦って来た。しかし、そこにいるのは、それぞれが違った人であり、それぞれの価値観も違ってくる。

「連帯」、、、不屈の魂で、戦い、勝ち抜いてきた!!!というより、それぞれの違った人々の思惑をなんとかまとめ上げ、違った方向の言ってしまいそうな目的地をなんとか一つにし、どうにか先の見える社会を作り上げようと孤軍奮闘した一人の男の生きざま・・・に見えてきた。何かを壊し、何かを作り上げる、ということのなんと難しいことか。

人には、打破の得意な人と、建設が得意な人がいると思う。どっちかと言えば、前者の方が派手で恰好がいい。悲劇のヒーローになる確率が高い。めちゃめちゃに壊された後、それをなんとか形に戻し、一つの形に作り上げることのなんと困難なことか。そして後者の仕事は圧倒的に地味である。評価も低め。でも、後者がいなければ新しい社会は機能しない。

ワレサは、その困難なことを両方成し遂げた。大統領になってからの活躍は、やはり地味めだったと思う。どんだけ困難だったのだろうか。んでもって、映画にするのは、やはり壊すところが一番いい。インパクトがある。ワイダ監督は、後者なんだろうな~、きっと。そんな思いを抱きながら、ワレサの奮闘ぶりを居住まい正して拝見した。こういうのが見るべき作品だと思う。

アンジェイ・ワイダ監督、88歳。まだまだ健在。



でもって固いだけかというと、そうでもないとこがワイダ監督らしい。柔らかい茶目っ気タップリなところもきちんと入れてるのが嬉しい。ワレサが検挙されるたびに妻においていく指輪と腕時計。これで暮らせ・・と言われてもあのぼろい時計はいくらになるのか?どんどんと活動の指導者、カリスマになっていく夫に対して、妻は家庭を大事にしてもらいたいと純粋に思って、ヒステリックになっちゃう。そりゃそうだ。自分が結婚したのは、ただに一労働者のはずだったんだから。時折、ヒステリックになったり、肝っ玉母ちゃんになったりと、この妻あっての父ちゃんだったのかもしれないってのが、よーく分かる。

ワレサを演じたのは「ソハの地下水道」のおっちゃん。最初、どうしてもワレサに見えず、違和感たっぷりだったのが、徐々にカリスマを発揮し、どんどんとワレサになって行く。ワレサもその通りだったのかもしれない。ワレサになって行ったのだ。

◎◎◎◎●

「ワレサ 連帯の男」

監督 アンジェイ・ワイダ
出演 ロベルト・ビェンツキェビチ アグニェシュカ・グロホウスカ マリア・ロザリア・オマジオ ジョバンニ・パンピグリオ ミロスワフ・バカ


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