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愛していたが結婚しなかったアーシャ

2012年05月01日 | ロシア映画シリーズ
例のごとくどんな話もかもさっぱり知らずに鑑賞という無謀なことをしているが、きちんと中身を知って臨んでも、大した変わんないのでいつものように。

舞台はソ連時代のコルホーズ。いまどきの人にコルホーズと言っても???となるのだろうなあと思うのだが、かつて社会主義時代に行っていた集団農場のこと。そこで働いている賄い婦のアーシャは、農場に働きに来ているサーシャから結婚を申し込まれていた。ちょっと足の悪いアーシャのために、町のアパートを借り、洗濯機も用意したから!としきりにアプローチするのだが、アーシャはツれない。

当のアーシャは、お腹がい大きい。お腹の子供の父親はトラック運転手のステパン。どこかちゃらんぽらんで、遊び人風な男だが、アーシャはステパンにぞっこん。でも、ステパンはアーシャに足ししてツれない。いわゆる三角関係。サーシャはお腹のことなんか気にしない。せっせとアーシャに貢いで、こっちを振り向いてもらおうとしているのだが、うまくいかない。

じゃあステパンはアーシャに見向きもしないのかと言うと、プレゼントをもらうアーシャに対して、嫉妬したりと、どいつもこいつも子供か!と思うような風景だ。

ステパンのトラックに乗って移動していた時に急に産気づく。もう間に合わないと野原でお産をすることになったが、取り上げたのはステパン。ここでステパンの態度が一変する。赤ん坊を抱き上げ、いきなり父親に変身。赤ん坊に対して、愛情注ぎこむ男になる。このまま二人は結婚してもよさそうなのだが、ここでアーシャの気持ちも大きく変わる。

妻になるのではなく、母の道を選ぶ。ステパンに対する未練などみじんもなく、完全に立場が逆転してしまう。

となんだかわがままいっぱいの人たちがあとからあとから出てくる、なんとも自己チュウ映画だなあと感じたのだが、いつものように中村先生の解説を聞く。

監督はミハルコフの兄のアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー。どうも先生は、反ミハルコフ派で、兄に対しても大体似たような感想。映画は67年に完成したのだが、なぜか公開はされずに87年までお蔵入りしていたもの。そのル優をつらつら考えるのだが、それは後ほど。

まずソ連のコルホーズと言うものは、常にたくさんの農民を必要としているものではないが、収穫機になると、援農として多くの人が村にやってくるのでにぎやかになる。そして混沌な世界にもなる。性的にもおおらかで、夫のいない女性の妊娠などは珍しくもなく、そのままシングルマザーで子供を育てて行くのも少なくなかったらしい。

よって映画のアーシャの妊娠も結婚をしないと言うことも、よくあることだった。さらに映画の舞台になったボルガ河近辺は、多民族の住んでいる地域で、ここもまた混沌の象徴であったと言うことだ。

さてこの映画もそうであったし、前回の映画にも見られた手法として、ドキュメンタリータッチの映像、あるいは一般の人が自分のことを語るという場面が出てくる。それは60年代になってよく見られる手法なのだが、それはスターリンが亡くなって、一般の人がカメラの前に出て、多くを語ることができる状態になったと言うことを表しているとのこと。なるほど。

さらに見えるのはソ連がどうしても乗り越えることができなかった知識人と農民との階層の違い。経済格差ではなく、知識格差と言うのをどうしても越えることができなかった。農民を撮る時にどうしても見え隠れするのが、上から撮ってるという視点がある。いい、悪いの問題ではないのだが、過剰なまでのドキュメンタリ-タッチにこだわる知識人の視点がこういう映画によく表されている。

とするとあくまでもそのままの農民の姿を映しだそうとすると、農民の家にはイコンが掲げられ、キリスト教へのつきない信仰がある。この映画でもそれが映されているが、それこそがお蔵入りになった要因ではないかと考えられるとのこと。

このような時代背景や、政治状況、知識人と農民との知識格差などを知ると、なるほどなあ~とは思うのだが、映画的には・・・。わがままだらけの人たちで、おとななんだから、もうちっと自分の行動に責任持ったら!などと思った次第。でも、集団の生活、自分に責任を負わせなくても生きていけてた時代と国だった印なのかもしれない。

やっぱ遅かれ早かれ崩壊する体制だったのかもだ。

多くの人が登場する映画だが、プロの役者は三人だけという。そのほかは素人だらけ。それにしちゃうまい。ソ連の農民は芸達者だわ。

「愛していたが結婚しなかったアーシャ」

監督 アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー
出演 イヤ・サーヴィナ アレクサンドル・スーリン ゲンナジー・エゴルィチェフ リュボーフィ・ソコロワ


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