迷宮映画館

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渡されたバトン ~さよなら原発~

2014年02月08日 | わ行 映画
日本の青空シリーズの第三弾。今回のテーマは、原発誘致に翻弄された小さな町の何十年にもわたる町民の軌跡でした。

新潟県の人口3万人の巻町に原発誘致の話が舞い込んだのは、1968年。住民にとっても寝耳に水の話だった。海沿いの集落の土地の値段が、原因不明で値上がりをしていると。こんなところの値段が上がるなんて、考えられないこと。レジャーランドでも作られるんだろうと思っていた人たち。

土地が値上がりする。今までこれと言った産業もなく、細々と暮らしていた人たちとっては、願ってもない話。町が活性化する。仕事が増える。多くの人がこの町にやってくる。それに乗ろうと思った人たちは、真相を探ろうとしますが、なかなか正体がつかめない・・・と思っていたところ、詳細が分かった。

なんと、原子力発電所を建設することに!!バックにいるのは親方日の丸。これに乗らないわけがない。なんといっても一番の魅力は補助金。どうせもらうんなら、とことん値上がりしてから売る。反対、反対と旗を振って、補助金が上がるのを待って、賛成すると。

いろんな人が利権に絡んで、ここぞとばかりに群がるのですが、それを非難できる人がいるか。何もないうらぶれた町に、本当に願ってもないことが舞い降りたのですから。

誰だって、どうせもらうんなら、多い方がいい。売り渋って、値上がりを待って、ぼろもうけをもくろむ住民の人たちが多い中で、これはおかしいんではないか。。。と思う人が出てくるのでした。それも当り前。

でも、町全体が原発誘致に傾いている中で、声高に反対!と言ったら、完全村八分状態になってしまう。それでもおかしいことはおかしいと言いぬくことは、勇気のいること。

土地の買収も進み、漁協ともバカ高い契約金で折り合いがついて、いよいよ本格的に建設の話が進みそうに・・という頃に、次々と難問が降りてくる。アメリカで起こった「スリーマイル島の事故」、日本の各地の原発で起こる小さ事故の積み重ね、そして「チェルノブイリ」と。

かつて、原発は絶対に安全、町に原発ができることは、すなわち打ち出の小槌を手に入れること・・・と思われていたことは、昔の話になってしまった。リスクの高い大きなお荷物になるかもしれない。

町の有力者はずっと原発誘致に尽力してきたが、徐々に時代は変わってきている。ずっと反対を言い続けて活動してきた人たちは、いまや大きな力となっている。村八分だったあのころではない。賛成、反対と言うよりも、まず建設をするということを、町の人に判断させてほしい!それが町の人々の意志なのだ。そしてようやく行われた住民投票。判断を町の人がする!ということが実行されることになったのだ。はたしてその判断は??

実際に、巻町で行われたことを、じっくりと年代順に、計画から誘致への流れ、初めは町をあげた賛成!!から、長い年月をかけて、世の中の風潮に、原発に問われた安全性への懸念、そして、建設の是非を、住民投票に問う!ということになった、実話でした。

とってもまじめな映画です。今まで作られた「日本の青空」、「いのちの山河」と同じく、決して商業用のエンタメ作品ではなく、とにかくまじめに、まじめに、べたな脚本で、こっぱずかしくなるような流れで、あまり有名どころの役者さんではなく、とにかくまじめに作った作品。

絶対に、普通に上映しても、まずは避けると思われます。見ても、エンタメ映画を見慣れた目には、何ともこそばゆいのですが、大事ことです。多くの人の協力で、こういった映画が作られるのもとっても大事だと思います。

問題は、誰が見るかと言うと、多くが関係者。映画に携わってきた人、団体の人たち。なんとなく、自己満足に感じるのでした。いいテーマで、大事なことを訴えてるのですが、それをもっともっと多くの不特定多数の人に見てもらうためには、もっと違ったアプローチの仕方があるんじゃないかなあと感じます。どうでしょ。

◎◎○

「渡されたバトン ~さよなら原発~」

監督 池田博穂
脚本 ジェームス三木
出演 赤塚真人 高林由紀子 渡辺 梓 宍戸 開 中原果南 鈴木正幸 山下洵一郎 ケーシー高峰 苅谷俊介


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