迷宮映画館

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いのちの山河

2011年01月21日 | あ行 日本映画
沢内村の偉業ってのはとっても有名で、十分知っていた。
かつては豪雪に悩まされ、陸の孤島。乳児死亡率はとんでもなく高く、働けなくなった年寄りは自ら命を絶つ。
いつの時代の話かと思うと、それがほんの50年前のこと。

一生医者にもかかれず、医者に診てもらうのは、死亡診断者を書いてもらうときだけ。。という村の現実をどうにかしたいと行動に移した人物がいた。それがこの村出身の深沢晟雄氏。とっても有名な人物。

彼が豪雪に村に帰って、現状を憂い、なんとかしようと奮闘する半生を描いたのが本作。
豪雪の様子から、一歩一歩前に進んでいく道のりに、それが簡単には行かない。当たり前だが、三悪と名付けた≪豪雪、乳児死亡率、貧困≫の解決は、簡単なことではない。どころか、困難この上ない。

しかし、深沢氏はめげない。いわゆる行脚と対話で、とにかく多くの村民と話し合い、納得させ、すべての人が憲法25条で保障される『健康で文化的な最低限度の生活』を送れることを実行させようとする。

定時制の教員から、教育長、助役を経て、村長に。その実行力と義憤の気持ちで、出来ることから絶対に逃げずに取り組む姿は、すごい。田舎に暮らしているからよくわかるが、田舎の人間ほど、あきらめが強い。どうせ・・・という気持ちはどこの誰よりも強いと思う。

だが深沢氏は、絶対にどうせ・・とは思わない。出来る、やれる、やる!!そして、実際にやっていく。乳児健診をこまめに行い、乳児死亡率を思いっきり下げる。65歳以上の医療費を無料にし、姥捨て状態だった村の現状を変える。除雪のためのブルを導入し、雪を追い払う。

どれも一朝一夕で成し遂げたものではなく、はなっから村民の理解を得たものでもない。それでも信念を曲げずに、成し遂げて行った意志の強さに感嘆する。しかし、紺屋の白袴とでもいうか、自分に病魔が忍び寄っていたのは、後回しにしてしまった。

まだまだ改革半ばで、食道がんに倒れてしまう。無念の死だったと思うが、改革は着実に前に進んでおり、深沢氏のことを誰よりも理解していたのは、村民たち。彼が絶対にこの峠にバスを通して見せる!といった雪の道を、物言わぬ姿で帰ってくる。そして彼を迎える村民たち・・・。

つうことで、「日本の青空」第二弾は、かの有名な岩手県沢内村の奇跡といわれる深沢晟雄氏について。ほとんど見る前の予想通り、どこにも逸脱することなく、教科書通りの演技、役者、本、中身を見せていただいた。

そして見ている人たちはほぼ、高年齢層・・・。こういう映画を作ることは非常に大事だし、多くの人に当然知ってもらいたいし、特に見せたいのは若い層。今、当たり前のように、私たちがこうむっている恩恵は、先人達が、言葉に言えないほどの苦労をし、戦い、勝ち取った権利であることを知るべき層。

じゃあ、この映画を若い人が見るか・・?といったら、まず見ない。十中八九見ない。そこだ。作り手は見せる努力を十分行って作っているのか・・。いや、している!といわれるかもしれないが、見ている限り層は思えない。若い層が見たい・・と思う努力をせねば・・。えらそうなことを言ってるが、そこは大事だと思うなあ。

私も、世のしがらみというか、義理人情の世界で拝見となったが、そういうことに頼る映画ではないことも必要なのでは。

「いのちの山河」

監督 大澤豊
出演 長谷川初範 とよた真帆 大鶴義丹 宍戸開 小林綾子 加藤剛


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2 コメント

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沢内村 (narkejp)
2011-01-24 20:27:34
以前、新潮文庫で及川和男『村長ありき』を読みました。まさに沢内村の深沢村長を描いたものでした。文部省推薦みたいな映画なのかな?それはそれで、観てみたい気もします。最近の映画なのでしょうか。
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>narkejpさま (sakurai)
2011-01-24 21:45:33
いわゆる生協のバックアップの映画です。
去年、全国行脚をしてたんですが、アンコール上映で、先週フォーラムにかかってました。
見に来てた方々は、思いっきり年配の方々で、それはそれでいいことなんですが、若い人に足を運ばせる努力もすべきでないかなあ・・と、思いました。
実際、映画を見て、これじゃ若い人は見ないなあ・・・というもんでしたから。
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