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第505回 大阪弁川柳で初笑い<大阪弁講座53>

2023-01-06 | エッセイ
 年末の「笑い納め」に引き続き、恒例の「初笑い」ネタとして、大阪弁川柳の第3弾をお届けします(文末に過去2回分へのリンクを貼っています)。
 ネタ元は、田辺聖子さんのエッセイ「川柳でんでん太鼓」(講談社文庫)です。

 残念ながら、今回がシリーズの最終になります。川柳と大阪弁の面白みを存分に堪能いただき、明るく新年をお迎えいただければ嬉しいです。私なりの勝手なコメント付きでお楽しみ下さい。

★倒産したとは母校知りはらず★(奇童)  
 同窓会の案内だか、卒業名簿だかが送られてきました。だいぶ間が空いていたのでしょう、倒産前の会社の経営者のままで。「~(し)はる」というのは、大阪弁独特の敬語表現です。当講座の第1回でも取り上げました。カジュアルに広く使えます。「知りはらず」は、「ご存知ではない」ということですが、「母校」にまでこの敬語を使うのが、いかにもの川柳的おかしみです。よほどお世話になったか、迷惑をかけたのでしょうかね。

★もしわてが死んだらもらいはるやろな★(河村日満)
 「~(し)はる」の句をもうひとつ。「わて」は、主に年配の男性が使う自称です。自分の嫁さん(自分の妻のことも「嫁さん」と呼ぶのが大阪では普通)へ向けたメッセージなんですけど、自分の嫁さんに敬語を使っている気の遣いようがたまらなく笑えます。よっぽど尻に敷かれて、頭が上がらないんでしょうね。今度はええ旦那見つけや、ってそこまで余裕があるとも思えませんが。  

★母の会わいの女房が会長や★(西川晃)
 「わい」は男性専用の自称ですが、ただ威張ってるだけだと、いささか面白味に欠けます。「家では「母」らしいことやってんのか?」「しかも「会長」いうたら、うるさいお母さん方をまとめていかなアカン立場やで。大丈夫か?家のこともロクにできてへんのに」そんな心配半分のオヤジさんの声が聞こえてきそうです。
 家では、ダンナを立ててつつ、外では、ちゃんとやって「はる」と思いますよ。  

★助平な話せんよになってボケ★(市場没食子)
 どこでも通用する「助平な」というのを、川柳とはいえ、臆面もなく使うのが大阪流。それよりも、「せんように(しないように)」を大阪弁的に短縮化して「せんよに」としてるのが(文字数合わせということはあるとしても)ぐっと来ます。それ以上のコメントは・・・・特にありません。

★男皆阿呆(あほう)に見えて売れ残り★(山川阿茶)
 大阪弁独特の「阿呆」のニュアンスさえ取り違えなければ、野暮な説明は不要ですね。存分に笑ってください。

★おばはんを抱く豆腐屋の冷たい手★(谷垣史好)
 私がよく行く豆腐屋の製造責任者の方と親しくしていただいてます。手作りが売り物のお店ですから、朝早くから夜遅くまで働きながら、音楽活動にも打ち込むナイスガイです。
 「豆腐屋」の文字でそんなことを思い出しました。さて、大阪人も普通に「さん」を使いますが、気心の知れた間柄だと、「はん」の出番です。季節は冬、水仕事の冷たい手で、おばはんを抱く・・・いろいろ想像が広がります。

★なにか言うてないと淋しい生まれつき★(西尾栞(しおり))
 「言うて」とこちらも大阪的「う音便化」しています。男女を問わず、大阪人はよくしゃべる、
と関西人の私でも思います。おまけに声がでかい、笑いをとってなんぼがウザいとの声もよく耳にします。根は寂しがり屋だからとの好意的なご意見も。ハイ、気をつけます。

★名人をよめはんぼろんちょんにいう★(岩井三窓)
 何十年来使ってませんが、「ぼろんちょん」てのがありました。「ぼろくそ」の方が通りがいいようですが、これも大阪弁っぽいですね。濁音を適当に混ぜながら、インパクトのある言葉を作るーその造語能力に感心します。何の名人か分かりませんが、よめはんの前では、形なしです。

★子は育つ壁はぼろぼろ落ちよるが★(岩井三窓)
 「落ちよる」の「よる」が根っからの大阪弁です。いろんなニュアンスで使いますが、ここでは、いまいましさ、いらだちが見て取れます。「貧乏暮らしやからしゃあない(仕方ない)けど、壁まで落ちやがってからに・・・・まあ、それでも子供が育ってんのが救いかな」
 そんな心の内を読み取って、勝手にホッとしています。
 
 いかがでしたか?なお、過去2回分へのリンクは、<第404回><第454回>です。合わせて初笑いいただければ幸いです。それでは次回をお楽しみに。
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