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第194回 質問しない日本人

2016-12-02 | エッセイ

 小中学校の頃、答えが分かって手を挙げる子はいくらでもいました。こんな感じで。

 でも、分からないところがあるからといって、質問する子は、まずいませんでした(質問に名を借りて、先生を困らせる生意気なガキならいましたが・・・)。
 その延長だと思うんですが、講演会なんかでも日本人のオトナって、質問しませんねぇ。

 「つまらない質問をして」、「そんなことも知らないんだ」とか「的外れなこと訊いて」とか思われるのがいやなんでしょうね。世間体を気にする、恥をかくことを何より恐れるのが、子供の頃から刷り込まれてるような気がします。もちろん、質問する気にもならないつまらない講演会も、ないわけじゃないですが・・・

 常々参加している某倶楽部の例会で、長年、ラジオの人気番組のパーソナリティーを務めている方をゲストスピーカーとして呼ぶことになった。
 講演会の進め方について、本人から「決まりきった話をしても仕方がないので、私の話は、アタマの15分くらいにして、残り45分ほどは、会場の皆さんからの質問に答える、というかたちにしたい」との提案があり。その線で進めることに。

 事務局長も、たぶん頭を抱えたんでしょうね。「質問しない」日本人の習性を考えたら、45分はとても持たない、大変だと。
 で、事務局メンバーに急遽打ち合わせの連絡が入った。事前に、どんな質問(まあ、サクラ質問というやつですね)を用意するか、割り振りなども含めて相談しよう、というわけだ。

 子供じゃないんだから、わざわざ集まる必要性が分からない。各メンバー1~2問くらい考えておいてくださいね、で済む話じゃないかと思うんだけど。でもまあ、特に予定もなかったので、面白半分で顔を出してみた。

 ー蓮舫議員(当時。今や党首)の「つまらない男」発言をどう思うか訊いてみたい
 ー芸能界の裏情報みたいなことはどうかしらー

 この程度のくだらない、下世話な質問しか思い浮かばないメンバーのレベルに、呆れる。「ラジオの世界で長年やって来られて、つまらない番組が多いテレビ業界の現状をどう見ているか、訊いてみたい」とエントリーだけして、いつもの店で、飲み直した。

 さて、当日の様子を報告しなければならない。

 で、結果から言うと、事前の準備に熱をあげるほどのことはなかった。
 15分だけとはいいながら、そこは、しゃべりのプロ。しゃべりだしたら、やっぱり止まらない。50分の独り舞台を、大いに笑わせてもらい、楽しませてもらった。

 戦前の生まれで、ラジオが唯一の娯楽の時代。アナウンサーの真似ごとの延長で、自然とこの世界を目指したことなど、まずは、きっかけ話から。
 ラジオの世界で長くやって来たので、顔が知られてなくて、ごく普通の生活が送れるがなにより、との話には、なるほどと納得。
 「だけど、タクシーはいけませんねぇ。声で分かっちゃうんですよ。タクシーの運転手さんには、よく聴いていただいてますからねえ。そうしたら、ヘタなお釣りは受け取れませんよね。泣く泣く「お釣りは取っといてください」になっちゃうんですよ」と、しっかり笑いも取って、さすがの話術を披露してくれました。

 あれやこれやで、あっという間に50分が経って、残り10分が質問タイム。「予想通り」手が挙がらないのを見極めて、私からの「予定」質問と、事務局長からの「おつきあい」質問の2つが出て、時間もピッタリ。終わってみれば、予定調和の世界。

 万全の準備をしてこの結果。世の中、こんなもんですね。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。

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