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第372回 大阪弁講座40「てっきり」ほか

2020-05-29 | エッセイ

 区切りの第40弾をお届けします。引き続きご愛読ください。

<てっきり>
 広辞苑には、(1)はっきり。正確に、(2)さだめて。きっと。必ず、
という説明があります。「好色一代女」や「東海道中膝栗毛」が引用されてますから、江戸時代からある言葉のようです。

 でも、もっぱら使われるのは大阪で、用法も、広辞苑の説明とは、微妙にズレがあるので、大阪弁かなあ、と思います。用例を出すのが、手っ取り早いですね。

「まあ、聞いてぇな。ワイがよう通ってるスナックのママ。ワイが行ったら、えらいサービスがエエんや。期限が過ぎたボトル、タダで出してくれたりすんねん。ほかの客と話してる時なんかにも、チラっと流し目を送って来たりしよんねん(するんです)」こんな感じですかな。

「ふんふん、そいで?」
「こらぁ、「てっきり」ワイに気があると思うやないか。けど、ようよう聞いてみたら、あの程度のサービスは、誰にでもしてるんやて。あの流し目も、飲み逃げせえへんか、チェックしてるだけやて。アホらし」

 いかがですか?

 意味だけなら、広辞苑の(2)に近いです。
 だけど、今の用例のように、大阪弁の「てっきり」の「正しい」用法として、その後には、「ドンデン返し」のオチがなければなりません。
 ママのサービスがいいー>てっきり(きっと、必ず)ワイに気があるはずー>ところが、そうじゃなかった という流れになります。

 つまり、自分で、自分の話に、自虐的なオチをつけるのに、必須の大阪弁で、笑いを取ってナンボの大阪人に好まれるのも道理です。

<みてみてみぃ>
 いかにも大阪弁的で難解な表現を採り上げます。

 最初の「みて」は、「見て」で間違いありません。次の「みて」ですが、「やって「みて」」、「行って「みて」」の「みて」です。(モノは試しということもあるので)やって「みる」、行って「みる」の「みる」の活用形で、軽い命令のニュアンスがあります。

 さて、問題は「みぃ」です。軽く尻上がりに言えば、相手に行動を促す感じですし、強く言えば、命令のトーンになります。

 「見もせんと(見もしないで)あれこれ言うてても、ラチがあかんわ。自分の目で確かめるのがなによりやから、「みてみてみぃ」(とにかく見てみることを(強く)お奨めします)」
 こんな用例が思いつきますが、さすがの大阪人も、これはいささかクドいと感じるのでしょうね。「みて」は、1回だけにして。「みてみぃ」という言い方があります。

 こうなると、見る、見ないとは関係なく、「どうだー」と自慢が入ります。「ほら「みてみぃ」、オレの言うた通りになったやろ。そやから(だから)、オマエはオレの言うことだけ、信じとったらエエねん」

 さらに短縮化が進んで、「みぃ」だけになると、むきだしの命令形、という響きです。
 「よう(よく)「みぃ」。「立入禁止」て書いてあるやろ。どこに目ぇ付けとんねん、このボケッ!」(おお怖っ

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。

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