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第306回 セクシー英語のお勉強-英語弁講座22

2019-02-15 | エッセイ

 ショーン・コネリーが、ジェームズ・ボンド役で活躍する「007」シリーズを見たのは、中学から高校にかけての頃でした。アクションもさりながら、美女との濡れ場(今ならどうってことないんですが)がお約束で、ワクワク、ドキドキしながら見たものです。ボンドといえば、やっぱりこれ!

 さて、「ニューヨーク遊遊記」(平尾圭吾 実業之日本社 1980年)を読んで、そんなお色気場面には、(当時は知るよしもありませんでしたが)言葉とアクションの組み合わせで笑いを取る仕掛けがあるのを知りました。さっそく、3つの場面をご紹介します

「私を愛したスパイ」(THE SPY WHO LOVED ME)の冒頭シーンから。
 007の上司のMが、秘書のマクベニイに
 "Tell 007 to pull out.(引き上げるよう007に言うんだ)"と命じます。
 次の瞬間、シーンが変わって、裸の美女の上におおいかぶさっているボンドが、腰をすっと引いて(pull out)、立ち上がります。言葉とアクションの見事な組み合わせです。

「ムーン・レイカー」(MOONRAKER)で、同じく上司のMがマクベニイに訊ねます。
 "Is 007 back from that African job?(007はアフリカの任務から帰ってきたか?)"に
 "He is on his last leg sir.(旅の終わりにさしかかっているはずですわ)"と答える彼女。 
 場面が変わると、007がしきりに美女の太ももをまさぐっているところ。
 "leg"には、「(旅などの)行程、一区切り」というのと、「脚(太もも)」という意味があるのを利用したちょっとセクシーな言葉遊びです。

 同作品からもう1カ所。
 敵の一味を退治したボンドが、宇宙船ムーンレイカーの中で美女と抱き合ったまま、宙に浮いている。それがモニターテレビに映り、Mがヤツは一体何をしているんだ、と訊く。助手のQが、
 ”I think he is attempting to re-enter sir."と答える。
 確かに「再突入(re-enter)を試みている」には違いありません。こちらも言葉+アクションでウケを狙っています。

 同書からもうひとつ、お馴染みの「卒業」(THE GTADUATE)という作品からの1場面です。
 人妻のミセス・ロビンソンから、ホテルに呼び出されたベンジャミン(ダスティン・ホフマン)。ホテルは、どこかの団体の会合か催し物かで、ひどく混んでいる。
 ホテルのフロントが、彼に訊く。
 "Have you come for an affair,sir?(会合でいらっしゃったんですか?)”
 affairには「情事」という意味もあるので、どぎまぎする彼、というわけです。

 さて、「西森マリーのバイリンガル映画道場」(ジャパンタイムズ 1994年)という本があります。「道場」と謳ってはいますが、日本語字幕では伝えきれない微妙なニュアンス、文化的、社会的背景を知らないと分からないユーモアなどを、親切に、そして楽しく教えてくれます。

 セクシーな英語、ということなので、同書から、その手のセリフ満載の「プリティ・ウーマン」という作品の2つの場面を引きましょう。(( )内は、日本語字幕です)

 娼婦のVivianと、彼女に引かれていく大実業家Edwardとの恋物語ですが、まずは、二人の車の中での会話から、

 Edward:100 dollars an hour.Pretty stiff.
Vivian:No.But it's got potential.
(「1時間100ドルとは高い(スティフ)な」「でも堅く(スティフ)立つこと請け合いよ」)
 stiffには、「値段が法外な」という意味と、「堅い」という意味があります。彼の脚の間を触りながらの彼女のセリフ。いやはやセクシーでアブないです。

 同作品からもうひとつ、アブナい場面を紹介しましょう。二人で、オペラを見終わったあとのやり取りです。

 Vivian:Oh it was so good! I almost peed in my pants!
Edward:She said she liked it better than "Pirates of Penzance."
(「感激してモラしたわ」「”ペンザンスの海賊”よりいいと」)

 日本語字幕はだいぶ苦労してますが、「おしっこをもらした」(peed in my pants)などと下品なことを言う彼女を、エドワードが必死でフォローしてるところです。
 映画館で、隣の席のオバさんが、"peed in my pants"と"Pirates of Penzance"を自分で、何度も言い比べてるのが笑えた、と西森さんが書いてます。ちなみに、Penzanceは、イギリス南西部のほぼ突端にある地名です。
 確かに、似てると言えば、似てるんですけどね・・・

 映画って、気の利いたセリフ、愉快なセリフなどの宝庫ですから、もう少しネタがまとまれば、いずれ「真面目な」続編をお届けしたいと思います。

 それでは次回をお楽しみに。

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