この前、本を読んでいたら、<name-dropper(ネーム・ドロッパー)>という面白い英語の言い回しに出会いました。
ここでいうネームは、有名人とか、それなりの地位にある人の名前のこと。「オレ、あいつはよく知ってる」「こいつとは、昔からツーカーの仲」などと会話の中で、それを、ドロップ(落とす)するように連発して、ひけらかし、自慢する連中を、からかい半分でそう呼ぶんですね。
洋の東西を問わず、そういう連中は、どこにでもいると思うのですが、日本語だと説明的にならざるを得ない。ところが、英語なら、ドンピシャ、そんな連中を指す単語(ワード)がある、というのが面白いですね。
で、いるんですよ、私の身近、行きつけのお店の常連さんで。こちらはあくまでイメージです。
ー今日も、どこどこ会社の、なんたら部長と飲んできたばっか(それはそれは・・・)
ー来週から、どこそこへ出張で行って、こいつと、そいつと、あいつに会わなきゃいけない(お忙しいことで・・・)
ー××市の市長やってるのをよく知ってんだけど、そいつの兄貴が、△△県の副知事やってるって知ってた?(知りません!!興味ありません!!)
こんな調子。さる業界の業界紙の社主だとかで、若い頃は、労働組合でもご活躍されたやに聞いている。かなりのご高齢だが、元気溌剌。仕事柄、人脈が広いのは分かるけど・・・
私も、積極的にお相手をしたくはないのだが、ほかにお客さんが居ないとか、たまたま隣に座った時などは、やむを得ず、時間つぶしに聞き役にまわる。
いろんな名前が出てくるのは、まあ我慢できる。適当に相づちを打って、スルーしておけばいい。それでもって、自分のエラさを誇示したい、というキャラだから。
困るのは、話題が、まったく広がって行かない事。名前が挙った人を巡るエピソードだとか、それをきっかけにして、世の中の話題に及ぶとか、所詮お酒の席、他愛もない話題で盛り上がる、などといった流れに一切ならない。話(というか、人の名前)の一方通行で、それ一本。広い世間を、随分狭く生きてるとしか思えない。ちょっと、ちょっと、鼻の穴、広がりっぱなしですよ。今日も、ムダな時間を過ごしそう。
先日もこんなことがあった。唯一あいているカウンターの端の席に座ったのはいいが、まわりのお客さんは、その<name-dropper>のキャラを知ってるか、ワケあって口をききたくない人だけ。ほとんど無視されて、ポツネンと座り続けてる。得意の芸も、ひとりでは発揮しようがなく、封じられて、居心地悪そう。つくづく、聞く人が居てナンボの芸であるぞと思った次第。それでも、2時間あまりもネバったのは、プライドのなせるワザかな?
最後は、ひっそりとお帰りになりました。
ごくありふれた振る舞いやキャラでも、「名前」が与えられることで、「そういうことって、あるある」「そういう人って、いるいる」などと、あらためて気づくことがあるもんですね。
いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。