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第353回 ひけらかしコメント集−2

2020-01-17 | エッセイ

 早いもので、この1月19日で、居庵さんが亡くなって丸1年です。私の記事にこまめに「ひけらかし(ご本人の弁)コメント」をいただいた感謝の念と、喪失感は今も続いています。
「なんだオメェ、オレのコメントをネタに、古い記事を読ませようという魂胆だなっ!」と叱られそうです(半分はホントです)が、1周忌ということで、前回(第303回)の続編としてお届けします。故人を偲ぶきっかけにしていただければ幸いです。<  >内が居庵さんのコメントです。

<私も、パートで「飲み屋」をやったことが何回かあります。7時頃に、新橋の小料理屋さんから電話が来る。
「ねぇ居庵ちゃん、お店に来られる?」「いけますけど」「AさんとBさんが来ているけれど、あの二人、いつも喧嘩になるから」
行くと、二人の間に座らせられる。ま、飲み代はその日はただですけれど。>

 スタンドバーは、ひとりでふらっと気軽に行ける店だ、というのを話題にした時(第279回)のコメントです。仲の悪い客同士の間に割って入る仕事なんて、私のいきつけの店でも防衛隊募集中とか。

<30年ほど前にフランクフルトの空港に何回か行きました。驚いたのは、空港に2店ポルノショップがあると言うことです。驚くことはさらにあって、好みのジャンルによってきちんと分けて展示されているということでした。「ゲイ」、「スカトロ」、「SM」・・・ドイツ人と日本人は似ているとよくいわれますが、とんでもない。ドイツは、とんでもない感性の文化だと思います。ポルノ映画について言わせていただければ、フランスは情があります。ドイツ、北欧は、体操の世界。アメリカは、どうしてもカウボーイ。イギリスは美学。>

 神保町にあるユニークな品揃えの古書店を話題にしたら(第273回)、こんな知性(痴性?)と国際性にあふれたコメントが返ってきました。根は好きだったみたいです。

<昔、フルートを吹いていました。バッハやテレマンを練習していたのですが、そのうちジャズをやってみようと思いつきました。でも、聴いているだけでは駄目だ。楽譜を探しました。見つけました「ジャズフルート入門」。む、むづかしすぎる。そして、楽譜はすべて手書きでした。断念。>

 豊かな趣味人という顔もお持ちでした。昭和20年代に活躍した知る人ぞ知るジャズピアニスト守安祥太郎のネタ(第256回)に食いついていただいたのがこのコメント。「断念」というのが、らしくないですが。

<私、25年間自動車雑誌の翻訳をやっておりました。〆切?守ったことは、ほぼありません。一応、毎月14日が〆切だったのですが、本当のどうしようもない〆切は、18日。
そんな私が、なぜ仕事を続けられていたのか。まあ、翻訳が上手いということもありますが、編集者たちと飲み仲間だったので、進行状況が聞けたのです。
でも、それよりも、遅く入った原稿を徹夜して翻訳する誠実さが、信頼されていた。ワインを飲みながら。いよいよとなったら、力を発揮する。まあ、いよいよとならなければ、力が発揮できないともいえますけれど。>

 たぶん御本人が一番誇りに思っておられた仕事にかこつけてのコメントで、「ひけらかし」オーラ全開の感があります。原稿の〆切と戦う作家たちを話題(第226回)に取り上げたのが、ツボにハマったようです。

<一人の坊さんが、沈黙の行をやっていた。そこに小坊主が障子を開けて、灯が揺らいだ。
「大切な行なのに、気をつけろ」
「おいおい、話しているではないか」
しばらくして長老が、
「黙っているのは、わしだけだ」
気楽にしゃべりましょ。>

 落語も趣味のひとつでしたから、イギリスの「沈黙クラブ」(会では、全員沈黙するのが規則という実在した変なクラブ)の話題(第175回)にもこんな軽い小咄が返ってきて、頬が緩みました。

<私、「天神橋筋七丁目」に仕事先がありました。天六は、いいですねぇ。なにしろ、町に2軒もストリップ劇場があった。いたるところにパチンコ屋があって、喫茶店のモーニングは充実。昼は、きつねうどんにかやくご飯。天かす、食べ放題。夜は蛸の天ぷらで飲んで、締めは商店街の角にあった博多ラーメン。あいまい宿に泊まって、また翌日は仕事。仕事に区切りがついたら、茶碗蒸しにてっちり。秋なら、ちょっと奢って土瓶蒸し。かしましい天六の商店街は、大好きです。>

 山形のご出身でしたが、大阪での勤務経験もあり、「大阪弁講座」などの関西ネタにもよく食いついていただきました。大阪の地名を話題にした時(第168回)のコメントです。大阪を愛する気持ちがあふれて、あ~、涙が出そう。こちらは天神橋筋商店街です。

 いかがでしたか?あらためて、居庵さんのご冥福をお祈りします。それでは次回をお楽しみに。