山とランニングの日記(旧ブログ goo)

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【山行記録】前穂高屏風岩東壁ルンゼ 1回目のチャレンジ

2012-08-10 23:21:02 | 無積雪期登山
以前から登ってみたかった(触れてみたかった)前穂高屏風岩東壁ルンゼ、登って来ました。

今回のザイルパートナーは、初めて本番に一緒に行く、FunClimbクラブ(詳しくはこちらのSさん。5月からトレ計画をたてて人工登攀の練習してきました。


ただ、今回のチャレンジの結果は3ピッチ残して完登はできませんでした。

東壁ルンゼは二人とも初めて挑戦するルート、且つロングルートなので1回で登れるとは思っていませんでしたが、その通りになってしまったのはやはり残念です。なかなか山行報告書けなかったのもそこにあります。

直射日光が早朝から午後3時くらいまで当たる屏風岩東壁は、今年の猛暑でとんでもない暑さでした。登るスピードは、ピンを徹底的にタイオフして登ることもあるのですがそれ以上に暑さで超スローペース。でも、元々この時期に登るのですからそれは事前にわかっていたこと。それに見合ったわたしの体力・技術の未熟さ、途中ビバークを嫌って一旦T4尾根取り付きの岩小屋に降りて登り返すなどという大きく体力や時間を浪費するわたしの作戦ミスが敗退の大きな原因です。セオリーどおり荷物重いけどT2でビバークすればこの条件でも完登できていたかもしれません。パートナーのSさんには申し訳なかったです。

   
左の写真は下部岩壁3ピッチ目フォローの私。右は4ピッチをリードするわたし、やっと日陰になったのでこのピッチは正気にもどって楽しめました。

それにしても本当に暑かったです、人一倍水分を必要とする体質のわたしには昨年出た過去最低記録の北海道マラソンみたいでした。初日、取り付きまで1ルンゼ押し出しを詰めるときから夕方近くになって岩に直射日光が当たらなくなるまでほとんど熱中症状態で、ボーとして動悸や頭痛もありました。こんな状態になってしまうと水をたくさんとってもあまり改善されなく、日陰になるまでただただ耐えるしかなかったです。水ではなくポカリにすればよかったかも。いずれにしても、こんな猛暑のときはわたしは水を1日3Lくらい持って徹底的な対策が必要みたいです。そう下部岩壁ではしなかった首筋の日よけも重要だったみたいです。

  
左は上部岩壁1ピッチ目(リード榊原)、A1とフリーが交互に出て来ます。猛暑で辛かったですがなかなか楽しいピッチ。右は上部2ピッチ目、ここはSさんが最初にリード、途中でラインを見失いわたしに交代、なんとかラインを見つけて、そこから延々、炎天下の中、タイオフ・アブミの繰り返しで何がどうなっていたんだか、わかりません。

東壁ルンゼはA1とフリーが混じるピッチが多いです。アルパイン用のシューズなのできちんとしたスタンスがないと不安、またA1からフリーに移るときにホールドが甘いとアブミを回収するのがとっても怖いです。何度か上のピンでテンションかけてアブミ回収したのでそれでかなり余分な時間がかかりました。次回はこういった練習もするのは当然とし、わたしには道具的にフィフィでアブミかけてアブミをひっぱり上げて回収するなど工夫が必要みたいです。

噂に聞いていたリングの飛んだボルトの連続、上部岩壁の公式2ピッチ目、今回は途中で交代しているので2,3ピッチ目となりますが特にの3ピッチ目はひどかったです。まず、いろいろラインはあるのですがそれがどれもラインとして繋がっていないように見えます。いくら見ても登れそうなラインが見つからないので最悪ボルトを打つのかと思っていましたが、岩と一体に見えた残置スリングもないボルトのヘッドを見つけました。これでラインが繋がりました。

当然、このピッチのボルトのリングはほとんど残っていないので、ほぼ全てタイオフして猛暑の中をボーっとしながらナメクジ並みのスピードで遠いゴールのハングを目指して登りました。ハング下の日陰に入ってやっと正気にもどりました。

タイオフは、わたしのリベットハンガーとSさんのワイヤー並みの強度を持つケプラーの3mmと4mmのスリング。これでランニングビレーとして信頼できる?アンカーをセットして登りました。ただ、タイオフはセカンドの回収も時間がかかるので1ピッチにやたらら時間がかかります。

いずれにしても、ケプラー大活躍でした、従来のナイロンロープの3mmスリングは体重かけるだけでぐっと伸びてとっても不安でランニングビレーに使うなどあり得なかったですから。ケプラーの山用スリングはまだ市販品は見つかりません。業務用のケプラーロープをわたしも手に入れようと思います。


一つ目のハング(Sさんリード)、ルーフの下向きのハーケンはとってもしっかりしています。もう一つ近くにあるボルト(これは使わなくてもいいですが念のため利用)と出口のボルトはボルトヘッドしかなく、3mmのケプラーを穴に通して利用。そのあと有名なラープの残置は見事にしっかり打たれていてわたしには問題なく見えました。それに思いっきり体重をかけてさらに上のしっかりしたハーケンを取れればこの2m張り出しのルーフはクリアできます。いずれにしてもリードは怖いと思います。セカンドのわたしは楽しいルーフ越えでした。

結局、上部岩壁は、最初のハングを越えたあともう1ピッチ、人工とフリーのミックスのルートを登り、そこでタイムリミットに設定して15時になったので、あと3ピッチ(i.草付きまじりでよく迷うピッチ、ii.への字ハング、iii.への字ハングを越えてからのボルトラダー)を残して懸垂下降としました。懸垂下降はほぼ登ってきたラインを降りるのでロープを垂らして次のポイントに届くかどうかよく確認しながらスムーズに降りることができました。3ピッチです。もちろん残置ロープは必要に応じて切断回収し、新しいロープを通し、しかもリングやカラビナも設置して整備しながら下降しました。


完登できなかったので、近いうちにもう一回チャレンジできたらなと思っています。
今回で、ルートの状態はだいたいわかったので、次回チャレンジするときは下部岩壁は少々重い荷物でも時間をかけて登り、T2でビバーク用具をおいて早朝から一気に登れば暑い時期にわたしでも登れるように思えます。崩壊が進んでいる場所も見あたらなく、自然的な危険度は他のクラシックルートと比較して低いと思います。もちろん、A1フリー混じりの練習して、水は人一倍持って登れるように荷物持ってもきちんと登れるように練習するのは大前提になりますね。


以下、山行記録です。

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8月2日木曜日

名古屋の仕事が早く終わったので、早めに松本に移動し、最終バスで上高地に入りました。そこから大好きな徳沢まで移動してテント泊としました。パートナーのSさんは大阪から翌朝6時半に上高地に夜行バスで到着の予定です。

 
徳沢の夜はアロマキャンドルとワインで久しぶりにゆっくりして、睡眠も十分取れました(左の写真)。
翌朝の徳沢(右の写真)、パートナーが到着するまでに完全に準備して待機。この日はもう朝から猛暑、日陰は涼しいのですが日差しがやたら強いです。


8月3日金曜日

徳沢にパートナーが到着し、急いで用意して横尾に移動。横尾でちょっとくつろいで、下部岩壁12時登攀開始を目指して移動する。

  
横尾から見た屏風岩            屏風岩東壁ルンゼ全景

 
わたしが心配していた1ルンゼ押し出しに移る徒渉は、予想外に楽勝でした。


この日は、下部岩壁を登った後、一旦T4取り付きに降りて岩小屋にビバークする予定なので岩小屋に荷物をデポしました。そこから100mほど踏み後を下って下部岩壁を登攀開始したのが12時45分でした、予定より45分遅れ、猛暑で行動はすべてゆっくりになってしまっています。

 
1ピッチ目(左の写真、リードSさん) 苔苔のピッチ。
2ピッチ目(右の写真、リード榊原) このピッチ、苔と砂かぶりのピッチ、出だしでわたしがズリッとスリップしてしまい、ヒヤッとしましたが、気を取り直して、以後、砂やこけをできるだけ丁寧に取り除きながら慎重に登りました。

 
3ピッチ目(左の写真、リードSさん) カンテを回り込んで人工登攀が始まります。このピッチは結構ボルトのリングは残っていました。右の写真は、この3ピッチ目をフォローするわたし、この後、三日月レッジにトラバースしてピッチ終了。

  
4ピッチ目(左の写真、リード榊原)、このピッチあたりから岩壁は完全に日陰になったので涼しくてやっと登攀が楽しくなってきました。一部フリーで抜けるのかピンが見つからなかったのですが、リードのわたしは怖いのでハーケンやカムで越えました。右の写真は4ピッチ目をフォローするSさん。

 
5ピッチ目(リードSさん、左の写真) 最初のトラバースに入るところが気持ち悪いです。右の写真はこのピッチをフォローするわたし。このピッチで下部岩壁はほぼ終了(17:30ごろ)、約4時間45分かかりました。このピンの状態でこの猛暑さなら、こんなものじゃないかなと思います。

 
上部岩壁を眺める            T4~T2のバンド

ここからの草付きで楽勝だと思っていたのですが、T4にもどるバンドの踏み跡に上がるまでがとんでもない恐怖のブッシュ漕ぎで1時間(2ピッチ)でした。ハイマツだったらランニングビレーも取れるし安心なのですが、草しかないです。気分を落ち着かせるために太めの茎束ねてタイオフしました。右から攻めたのがよくなかったようです。帰宅した後、ルート図を見るとまっすぐ東壁ルンゼ上部岩壁取り付き目指して岩を登った方がいいみたいです。確かに後半見つけた踏み跡らしきルートは下からまっすぐ上がってきていました。 


 
岩小屋で食事               岩小屋から見た月がとってもきれい

その後、T4の頭に移動して1ピッチ懸垂下降したら、もう真っ暗。T4甘く見てました、慎重に降りていたら3時間もかかり、結局岩小屋については22時です。
浮き石いっぱいの踏み後をヘッドライトで降りて、懸垂下降をさらに一回、そこでザイルは残して、あとはスリングつなげて降りましたが、ごちゃごちゃやるより、さっさともう一回懸垂下降した方がよかったかもしれません。ザイル残してもユマーリングになれていないので翌日あまり迅速に登れませんでした。この夜間行動により体力も消耗し、睡眠時間もわずかになり翌日の行動に大きく影響しました。


8月4日土曜日

計画では、未明に出発してT4を夜間登攀し、夜明けの5時には上部岩壁に取り付く予定でした。でも前日、就寝するのが遅く、疲れもあり朝はだらだらと準備して結局T4登り出したのがすっかり夜があけて5時半くらいでした。T4頭に着いたのが7時前、せっかくフィックス張ったのにユマーリングが下手で登攀するのと大差がありませんでした。で、こんな時間になると東壁はもう昨日のような猛暑地獄になっていました。この時点で雲稜ルートに変更しようかなという気持ちも(ここで気持ちはかなり折れています)。


写真は上部岩壁1ピッチ目(リード榊原)をフォローするSさん。 

上部岩壁登攀開始は7時10分ころでしょうか。結局予定より2時間以上の遅れ。
上記写真のコントラストから猛暑がご理解いただけると思います。このピッチは暑くて元気が出ないのに加えて、A1とフリーが交互に出て来てアブミの回収がとっても怖く、何度か、次のピンにテンションかけて下りアブミを回収したり、さらにリングのないボルトのヘッドにタイオフしたりしていたらわたしのリードは1時間近くもかかり、結局、このピッチは二人で1時間20分くらいかかってしまいました。


 
上部岩壁2ピッチ目出だしをリードするSさん

2ピッチ目(リードSさん)は、交代時にちょっと休憩して、スタートは8時45分ごろ。本来はカンテから回り込んで2m張り出しのハングまで一気に上がる長い人工ピッチ。
登り始めにカンテを回り込んだところのピンのヘッドが折れていて、残ったブレードにタイオフで登ります。ただ、これはなかなかしっかりしていると感じました。次のピンが残置スリングがいっぱいで穴にスリング通せません。本来であればきれいにクリーニングしたいところですが、余裕もなくそのまま突破。で、40分ほどかけてレッジに出るとボルトラインが消滅。どうもよくわからないということで、ここで榊原に交代。


ハング下の日陰がとっても幸せ。炎天下のSさんを榊原がビレイします。

2ピッチ目後半をわたしが交代してリードし始めたのが9時45分ごろではないかと思います。 わたしは何メートルか登っていくつかあるボルトラインらしきものを目を懲らして観察。でもどれも途切れているように見えます。かなり時間をかけて探しましたがどうも見つからず、まだ時間があるのでボルトでも打とうかと思っていたとき、右の向こうににリングが取れてヘッドだけのボルトを発見。残置スリングもないので、まったく岩と同化していてなかなかこのピンが見つかりませんでした。

ここからボルトラダー再開、でもほとんどリングは無く、一つ一つリベットハンガーを掛けたり、ケプラーでタイオフしたりして、猛暑の中、ひたすらナメクジのように延々と登っていきました。1時間半近くかかっと後から教えてもらいましたが、登っているときは時間感覚もなくなっていました。やっとハング下に到着して、二人が集結したのがなんと12時すぎでした。でもハング下でやっと日陰になって休憩して気分的に落ち着きました。この時点でほぼ完登は無理だなと思っていましたがどこまで登れるか、まだ登る気持ちは切れていません。日陰になった効果は大きいです。 



Sさん、ハング越えをリードします 

ハング越えは12時15分くらいに開始したと思います。逆さ打ちのハーケン、とってもしっかりしていて、あとは出口のリングが飛んでいるボルトと右にトラバースするための残置ラープに体重を移すのが怖いです。でも、ボルトの穴に通したケプラーの細いスリングは強力そうで、ラープもしっかり決まっているので、お気軽なセカンドのわたしは、とてつもない高度感の中で快適なルーフ越えでした。ここはセカンドであればイメージ的には丸山東壁緑ルートの一番目のハング越えと同じレベルです。

 
今回の最高到達点直下のSさん    懸垂下降するSさん

ハング越えして(二人の完了時間は13時15分くらいか?)、またまた私に長いピッチが回ってきました。このピッチ、もう日陰なので体は多少楽だったのですが、フリー混じりで相変わらずピンにタイオフしたり、ルートに悩んだりしながら結局リードに1時間くらいかかってしまい、今回の最高到達地点に2人が到着したのは14時45分くらいでした。

もう1ピッチ、草付き交じりのピッチを登ってへの字ハングへのルートを経験しておきたかった気持ちはありました。でも、過去の記録を見ると次のピッチはよく迷うようなので、ここで撤退を決定。あとは登ってきたルートをアンカーを十分補強しながら慎重に3ピッチで懸垂下降し、16時30分くらいにT4、そこから踏み後をたどりながら合計3ピッチ懸垂下降してT4取り付きにもどりました。ここで荷物を整理して、だらだらと降り、徒渉をして登山道に出たときはもう真っ暗でした。
横尾についたのが19時半(?)、ビール飲んでふらふらと徳沢に辿り着いたのが21時ごろではなかったかと思います。

翌日はゆっくり徳沢の空気を楽しんだあと、まだまだ続く炎天下の上高地を下山しました。


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