環状線の緩い登りで自分の目線が少しだけ空の方に向くと
左右のビルの間を右から左へ
濃いグレーの霧が低く垂れ込めながら流れていた
きっと50mくらいの上空だ
標高の高い山道でもないのに
カーステレオからはピアニシモのピアニストがあくまでも優しい音色でフォルテを奏でているから
この雨の日に
自分の舞台は次の幕へ移るのだな…と考えた
人は生きてる限り
幕を重ねながら自分が主役の人生舞台を続けてゆくしかないのだ
だから今日の雨とこの音楽は
一つの幕間のBGM
そっと寄り添ってくれるものはそれだけで安らぎをくれ
安らぎは力を生む
総じて
そっと寄り添ってくれるものには自然培養の愛がある
自己主張する舞台本編より
そっと寄り添う幕間のBGMのように奏で生きたいと思った
そして
既にそれはずっと以前から遂行されてることにも同時に思い当たった
なんだ…
今の自分のままで良かったのだ
たとえ別離がやってきても
ちょうどカーステから流れていたマイナー曲が
最後のコードを奏でるところ
Sus4から長3度に着地し希望の色を僕に手渡してくれる