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親の孤立が子どもに連鎖(子どもに大きな負の影響を与える)

2019-07-21 | Weblog

教育困難校の生徒、つながりなく

親の孤立が子どもに連鎖 「教育困難校」の生徒が抱える“つながり格差”とは…

家庭の外に目を向けない親が、子どもに大きな負の影響を与える(※写真はイメージです)(C )yaschan79/istock

(AERA dot)家庭の外に目を向けない親が、子どもに大きな負の影響を与える(※写真はイメージです)(C )yaschan79/istock

「教育困難校」とは、序列の下位に位置し、進路多様校などと称される高校のことだ。一般的には、学力が低い生徒たちが集まっていると考えられているが、こうした学校の背景には貧困、家庭環境、教育行政などが複雑に絡み、偏差値だけでは語れない。朝日新書『ルポ 教育困難校』では、元教師の教育ジャーナリスト・朝比奈なを氏が、生徒の家庭が抱える社会的な接点の乏しさを指摘。同書より内容を一部紹介する。■生徒は親に手を掛けてもらっていない  収入を得るために長時間働く生活では、家族が一緒に過ごす時間が犠牲となる。従って毎日の生活でもほとんど家族が顔を合わせることなく、休日に旅行や日帰りで遊園地やテーマパークに行く体験もしたことがない。


 人はさまざまな体験を通して自身の適性や能力を発見し、失敗・成功の体験を積むことが可能になる。教育熱心で経済力もある家庭では、幼い頃から意図的に色々な体験の機会を子に与えている。そこから、興味・関心が拡がり、高校生になるまでに自分の適性や将来の夢も漠然とではあっても考えることができる。
 一方、体験に乏しい子どもは、ごく狭い興味・関心のままで高校生になる。これが、その後の進路決定や将来の生活に大きな負の影響を及ぼすことを見逃してはならない。
■親の愛情を確信できないからこそ、親孝行になる矛盾  親が大きな不安や不満を抱えている家庭では、子が、親の感情のはけ口になっている場合がある。一見普通の親子関係に見えても、幼い頃から身体的・心理的虐待やネグレクトを受けてきた生徒が「教育困難校」には少なくない。
 しかし、「教育困難校」の生徒たちは、どのタイプの生徒でも驚くほど親や家族思いである。仕事が忙しい親に代わって高齢の祖父母や幼い弟妹の世話をする、あるいは病気の家族の世話や介護を一手に引き受けている、いわゆる「ヤングケアラー」の生徒も少なくない。家庭に毎月少なからぬ額の生活費を入れるために必死になってアルバイトをする、家庭に入れる金額を増やしたいとJKビジネスの世界にはまりこむ、弟の学費も稼ごうとバイトを増やし過ぎ出席不足で高校を中退せざるを得なくなる、義父に性的虐待を受けながら母を悲しませたくないと泣き寝入りしている、こんな生徒たちに、筆者は「教育困難校」勤務の5年間で出会っている。
 親の姿勢を見てみると、子どもに苦労させていると自責の念を持っている親も多いが、その反面、自分の欲望に忠実で子どもにほとんど無関心という親も目立つ。巷で話題になるような教育に熱心な親や子を思うあまり過干渉となる親はほとんど見受けられない。
 親の愛情を確信できない高校生は、その代償を他人、思春期でもあるので特に異性に求めようとして恋愛に走るようになる。この傾向は女子に強く、これで妊娠、高校中退というルートを選ぶこともある。
 幼少期に母親など養育者との愛着がしっかりと形成されず、情緒や対人面に何かしらの問題が起こることを心理学では「愛着障害」と称しているが、高校生の早急な恋愛はまさにその影響なのではないかと考えられる。
■どこにも、誰にもつながらない家庭 「教育困難校」生徒の家庭に多く見られる特徴の1つに、親族や地域と全くと言ってよい程つながっていない点が挙げられる。不安定な生活のために転居を繰り返し自治会などの地域コミュニティに参加したことのない人、親世代やその親の世代から故郷の実家を出てその後親兄弟との音信を全く絶っている人などが親になっている。彼らは「つながり格差社会」の下部、加えて公的援助等の必要な情報も届かない「情報格差社会」の下部にいる人たちである。
 周囲に相談したり頼ったりできる人を見つけ出せず、何かトラブルがあれば家族の自助努力と自己犠牲で何とか凌ごうとする。それで心身ともに無理をして一層厳しい状況に自らを追い込んでしまうケースもある。親も生徒も外の世界に目を向けようとはせず、外の世界からも気にもされず、自分の「家庭」という狭いスペース内に籠っているようにも見える。


<著者プロフィール> 朝比奈なを(あさひな・なを) 教育ジャーナリスト。筑波大学大学院教育研究科修了。公立高校の地歴・公民科教諭として約20年間勤務。早期退職後、大学非常勤講師、公立教育センターでの教育相談、高校生・保護者対象の講演等幅広い教育活動に従事。

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