記事 /ローリングストーン日本版
トランプ時代の2017年が幕開け:警戒すべき7つのトピックス2017年01月11日
2016年は散々な1年だった。驚くべきスピードで地球温暖化が進んでいる。これまでに約50万人が命を落としたシリアの内戦は激しさを増している。全米で頻発する銃撃事件は収まることなく、2016年は12月29日までに1万4748人が犠牲となった。そして広く愛されたスターたちが相次いで亡くなった。また扇動政治家が大統領に就任することがないよう考えられたはずの立憲主義的メカニズムが、あの男の勝利を導いてしまった。
我々にとって良いニュースは、2016年が終わった、ということだ。
そして悪いニュースと言えば、2017年がもっと嫌な年になる、ということだ。
大局的な話ではないが、アメリカの人々が待ち受ける警戒すべきニュースを挙げてみよう。
1.中国との貿易戦争
大統領選期間中、ドナルド・トランプは中国からの輸入品に45%の関税をかけると主張していた。当時、共和党の大統領候補の座を争っていたテッド・クルーズは、アメリカの消費者が輸入関税引き上げによって、物価上昇で苦しむことになると指摘していた。関税引き上げの脅しをそのまま実行すれば、販売価格649ドルのiPhone7は、2017年に941ドルに値上がりする。そしてこれは、中国製シェアが7割を占める携帯電話に限ったことではない。エアコン(中国製シェア8割)から靴(中国製シェア6割)まで、あらゆるものが中国製だ。2.中国との外交面での戦争
衝撃の勝利から数週間後、トランプ次期大統領は、台湾の蔡英文総統から当選を祝う電話を受けた。この電話会談に中国側は動揺した。米中間においては、台湾を独立国として認めないというのが、これまで長い間保たれてきた認識だった。ヤンチャ盛りの次期大統領は、これを"深い意味を持たない突発的な出来事"として受け流したが(実のところアクシデントではない)、予期せぬことだったとは言え、米中間の戦争が起こり得るとする専門家が心配する通りのことが起きているのだ。2016年夏に発表されたランド研究所の116ページにわたる論文によると、米中双方は先制攻撃を誘っており、誤認によってもたらされる脅威が、決定的な事件の連鎖を引き起こす可能性があるという。3.揺らぐ憲法
保守層は押し並べて、憲法に基づく政治を愛すると自称するものだが、手始めに連邦政府支出の上限を規定し、最高裁判事と連邦議会議員の任期を制限するという修正案を提示している大富豪、兄チャールズ、弟デヴィッドのコーク兄弟のように、憲法改正の必要を訴える保守層もいる。しかし、憲法を修正する方法は2つしかない。両院の3分の2が必要と認めた場合、もしくは3分の2の州の立法部(つまり34州)が請求した場合に、改正に向けた憲法会議が召集される。この1月には33の州議会を共和党が牛耳ることになる。これまで28の州が、憲法会議の召集を問う決議を可決した。2017年にはヴァージニア州とニュージャージー州で選挙が行われる。理論上は、憲法修正の発議を希望する共和党が必要とする票数を上回ることになる。4.報道の自由に対する新たな脅威
大統領選の全期間を通じ、トランプ陣営は、不利な内容を報じる放送局のブラックリストを作り続け、指定された放送局の記者をトランプ陣営のイベントから締め出した。参加を許された記者は仕切りの中に入れられ、舞台の上から、もしくはトランプからけしかけられた会場の支持者たちから罵倒、もしくは威嚇された。次期大統領首席補佐官、ラインス・プリーバスが報道に関するルールを早急に"改定"すると発表した時、報道関係者に緊張が走った。そして取材以上に心配なことがある。選挙期間中、トランプは裕福な実力者がもっと簡単に報道機関を訴えられるように、名誉棄損法を「強化する」と脅していた。つまらない裁判を立て続けに起こし、順調に事業を拡大していたニュース配信会社を組織的に潰す方法についてアドバイスが欲しいのだとしたら、2016年の年初にオンラインメディア企業Gawker Media(ゴーカー・メディア)を破産させるために資金を投入した、政権移行チームの一員、ピーター・シールに聞けば良い。トランプはあらゆるタイミングで、その影響力を維持するために、シールを最高裁に送り込むことができる。トランプがそう画策したと噂されているが、2人はこれを否定している。