欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

心の奥にある水源

2012-08-01 | essay




その街にはまだヒカリが身近に存在していました。
傷つくことも苦しいことも日常に起こっていましたが、その根底に脈々と流れるやさしい水源のようなものを、わたしはたしかに感じたのです。
それはまだ日本ではあまり見かけられないものでした。
その水源こそが、わたしの力の源である事に気づいたのはそれからすぐのことです。
旅の日々のなか、わたしに響いてきた言葉。

この水源は世界のどこにいても存在しうるもの。
遠い異国に戻っても、心静かにこの水源を求めなさい。
やがて、心は水源とつながり、そこからあふれてくるものが不思議な物語を生むからと。

本当のところはよくわかりませんが、今のわたしにはその水源が心の指標となっているのです。
これからの日々、水源からあふれてくるものを丁寧に書きとめていこうと思っているのです。

不思議な夜更けのヒカリ

2012-08-01 | une nouvelle
月のない夜の橋。輝く外灯のそばをうなだれて歩くひとりの女性。
ぼんやりと橋をわたって、川沿いを力なく・・。
鳥の鳴き声が時折響く夜更け。女性は並木のひとつにもたれ立ち止まっていると・・。
男の子のような声が聞こえてきたのです。
女性を呼ぶ声に、はっと顔をむけてみると、
橋の上に立つ天使の像が女性の方を見ているではありませんか。
驚きとまどっている女性に天使は、
"人はいろんなことで嘆き悲しみます。
ですが、日々を真摯に生きている人に蒼いものは寄り添いにくくなるものです。
だから、あなたはこのままでいいのですよ。
時とともに暗がりは不思議な力で晴れていきますから・・。"
女性はしばらくぽかんと立ち尽くしていました。ですが、鳥の鳴き声に我にかえり、ふたたび歩きはじめたのです。
ゆっくりと、寄り添われるように家の方へ。
すると、帰った家に明かりが灯っているのです。
女性が扉をあけてみると・・。
愛する人がはにかむような笑みを浮かべ出迎えてくれます。
さっきは言い過ぎた。君のことを思うがゆえに熱くなってしまったのだと。
テーブルには甘いものと熱い飲み物が置かれていました。
そして、謝罪の気持ちと、君のへの愛にと、真ん中に一輪のバラが・・。
夜風にあたって冷たくなった女性の肩を抱いて、愛する人は家の中へと招き入れます。
テーブルに腰かけて、あたたかな飲み物を口にすると、女性はあの時聞いた天使の言葉を思い出したのです。
そして、夜更けの窓の向こうを見ると、不思議な輝きが暗闇のむこうに流れていったのです。
なにかのヒカリ。女性はそのときはじめて力なくも笑みを浮かべることができたのです。