欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

夜の湖を見ていると

2012-05-11 | une nouvelle
お城のむこうにある湖。王女様はいつも夜になるとこそっと窓辺へやってきて、そこからの湖を眺めるのです。
これは王女様が小さな頃からの日課。
すると、自分にむけて声が響いてくるような気がするのです。
その言葉のやさしいこと。

"暗く見える湖面の中では多くの魚たちが今日あったことを胸にミニュケーションをとっているんだよ。
悲しいこともうれしいことも、びっくりしたことも切なかったことも、いろんなものをすべて心に浮かべて、胸の奥のなにかにささやいているんだよ。
すると不思議なことが起こるんだ。
今日あったことがすうっと心の底に落ちていって、なにかの芽を育んでいくんだよ。
その芽が大きくなればなるほど現実の波風に振り回されなくなるのさ。
心の浅いところでたまった出来事はやがて腐っていって胸のつかえとなって心を痛めていく。
だから、いろんなことを素直に語りかけていくのさ。眠る前のひとときにね。"

王女様は湖面の上の星空を見ます。
そして、心の奥にあるものが実はあの夜空の向こうにあるということを感覚的に感じるのです。
だから、胸に手をあてて、今日も自分の奥のものに。夜空のむこうに語りかけていくのです。
すると、気持ち良く朝がむかえられ、人のまわりにある喧噪から心が守られるような気がするのです。

それもこれもすべては夜の湖が教えてくれたこと。

もう半分は魔法を信じて

2012-05-11 | essay


ある映画で、彼女はこう言うのです。
"世の中の半分はにらむような顔をして現実を生きている。
でも、もう半分は魔法を信じて生きている。"

あなたはどちらでしょうか。
どちらの自分も本当のような気がしませんか。
でも、魔法を信じて生きていきたいですよね。
夜、目をつぶる時、明日はどんな素敵な出来事があるんだろうって。
これは夢物語なんかじゃなくて、世界は童話のような舞台なんだよって。
心がどこかでそう言っているような気がしませんか。

確かに現実を生きていると表情はこわばった、にらむ?ような顔になるけど、
魔法を信じて生きてみると、表情がやわらかくやさしくなれるような気がします。
この先の街角から素敵な楽器隊があわられたり、ふいに鳥が肩にとまって何かをささやしたりしてね。
人には魔法が必要なんですよ。幻想のようなひとときが・・。
だから昔から多くの芸術家が星空を見上げて、いろんな物語を描いてきたんです。
そんな魔法に胸躍らせながらみんな生きてきたんですよ。思いもよらない奇跡を信じて、ね。

強い日ざしをさけた木陰のした

2012-05-10 | une nouvelle
強い日ざしをさけた教会前の木陰。
子供がおいしそうにマカロンを口にしています。
色あざやかなマカロン。
そんなにおいしいの?
通りがかりの大人が声をかけます。
だってママがくれんだよ。おいしいに決まってる。
子供は笑顔を見せながらも、食べるのに夢中。
ねぇ、ママはどこにいったの?
もういなくなっちゃった。だって、ママに会う時間はすこしだもん。
あたりを見渡しても大人の姿はなく・・。
今度ママはいつ来てくれるの?
う~ん、わかんない。明日かな。それまでこのマカロンがもつかなぁ。
子供は通りのむこうを眺めながら、
今日は人がすくないなぁ。
そうだ、おじさんがなにかおなかにたまるものを買ってきてあげよう。
え、ほんとに。
子供はうれしそうに顔を上げて、
そしたら今度から僕のパパって呼んでいいよね。

静かな夜のものがたり

2012-05-09 | une nouvelle
その街角を曲がると、彼女の目に入ったのはすこし先のやわらかな店あかり。
誰もいないオープンカフェのイスに腰かけると、若いウェイターが水を持ってきます。
なにか口あたりのいいお茶を・・。
ウェイターは頭をさげて、さがっていきます。
足を組み、手の先を見ると、冷たく輝く指輪が・・。
息をもらしてうつむくと肩から髪がこぼれてきて。
建物のあいだを通る冷たい風。
やがて、ウェイターが香りのいい琥珀のお茶を持ってきます。
ありがとう。
ウェイターは小さな声で、ごゆっくり。

彼女はお茶も口にせず、うつむいていましたが、やがて、店の中のウェイターを呼んで。
ありがとう。おいくらかしら?
バッグからお金を出して、力なく立つと、
いいお店ね。またくるわ。
ありがとうございます。
通りをいきかけた時、ウェイターの声が響きます。
指輪をお忘れでは?
女は立ち止まり、いいのよ。あなた、どうにかなさってくれない?
ウェイターはそのまま彼女を見送るのみで。
通りの闇が彼女をかくしていきます。

なにかあったのか?
もうひとりのウェイターが外に出てきて。
いいや。
若いウエイターはお茶を片づけながら、
ささいな経験さ。風の向きが変わりはじめたんだよ。
それがちょっと心にいたずらをするのさ。
店に戻りながら若いウェイターはそう言います。
きょとんと立ったままのウェイターをそこに残したままで。

雪の日の朝

2012-05-07 | une nouvelle
雪の日の朝。とあるドアのそばに赤いバラが・・。
今日旅立つ女性の家。
子供たちが外の景色に驚き、雪遊びをするその前のことです。

大きな鞄を持ってドアを開けた瞬間、女性はバラが目に入り。
白い吐く息の中、バラを持って女性が遠いまなざしのむこうに見たものは・・。
数々の愛すべき思い出。一途な思いが火花のようにきらめいていた日々。

しかし、彼女の目の艶が変わり、なにかを振り払うように、鞄を持ち階段を下りていきます。
バラは口にたずさえて。
通りのむこうからゆっくりとタクシーがやってきて。
女性と鞄を連れ去っていくのです。

タクシーの去ったあと、ふたつの轍を子供たちがささやかなスケートのまねごとを・・。
数時間前、そこにあらわれバラを置いていった男性の足跡はもう雪の中に。
女性も男性もいなくなった場所。雪はなにかを包み込むように降り続きます。
濃い赤の花びらがひとつ、まるでふたりの思い出のように階段のそばに・・。
遊びの最中、女の子がその花びらに気づくまで。ふたりの過去は白い雪の上に刻まれていたのです。

新しいテイスト

2012-05-07 | une nouvelle


ドアが開いた列車に乗り込もうとするわたしに年老いた車掌が言うのです。

良い旅を期待していますよ。いいえ、実りの多い旅を・・。
けっして楽な道のりではありません。ですが、あなたにとってこの列車が実りへの足がかりです。
今までとは違う生き方、けっして間違いではないと思いますよ。
明るいものにできるか、そうでないかはあなた次第ですが、わたしにはわかるのです。
この先への不安が良い意味であなたの新しいテイストになるとね。

車掌は笑みを浮かべて、
では、良い旅を・・。いろんな意味で実りの多いものに。

あなたを愛しているわたしは

2012-05-06 | une nouvelle


あまり客の入らない地下のバー。
夜更け、タバコの煙の中でひとりピアノを弾き続ける女。
若いバーテンダーが女のもとへやってきて。
あそこの客がムードのある曲を弾いてくれだってさ。
彼女がそこに目をむけると。
愛する男と目が合って・・。

彼女はゆるやかな旋律を選んで、切ない愛の詩を奏でていきます。
数人しかいない客の心を集めて、彼女はやさしく男にほほ笑むのです。
タバコをくゆらせながら彼女を見つめる男。
その視線を感じながら、彼女は指先に愛を込めるのです。
あなたを愛しているわたしは今とてもしあわせよと。

夜空に輝く月が好き

2012-05-04 | une nouvelle
静かな夜にひっそりと明るい、月の輝きが好き。
太陽はわたしの暗がりも引け目も、すべてを清冽な明かりで晴らしてくれるけど。
それでもわたしは夜空に輝く月が好き。

太陽の強いヒカリはわたしとはかけ離れた存在で、そこにあることを疑いようがないけど。
月はわたしの良い話し相手。友達のようで、時にはやさしい兄さんのように親密に語りかけてくれたり。
だから、淋しい夜に雲の覆う日は切なくて眠れなくて・・。

ベッドから起きてカーテンのむこうに明かりを見つけた時の喜び。
数々の星に囲まれ、月が明るんでいるのを見上げると、わたしは笑みがこぼれる。
今までもいろんなことを話してきたけど、そんなどれもが月の言葉として心の中に昇華されていって。

最後にはかならずこう言ってくれるのです。
"さぁ、元気を出しなよ。
こうして多くの人を上から眺めているけど、みんなそれぞれに明日を夢見て生きている。
明日はきっと良いことがあるよ。
そんな気持ちが良いんだよ。希望がすべてのはじまりだということを人は感覚の中ではっきりとわかっているのさ。"



青い空はわたしのツバサを

2012-05-03 | une nouvelle


"純粋な心で空を見上げていたかった。
体にそなわっている黒いツバサの意味もわからずに。
何の欲望も曲がった気持ちも持っていなかった。
黒い羽で覆われているわたしは・・。

この空に飛び立ち、悲しみとともに生きるんだよと。
つらさ、切ない出来事の中からあなたはヒカリを見いだすんだよと。
そう諭されているように・・・。

射るような鋭い瞳の中に純粋さがほとばしる時。
わたしは本当のわたしになると。
美しい青い空はそうささやいているように思えたのです。"

羊飼いが願うもの

2012-05-02 | une nouvelle
ある羊飼いが空を見上げてささやくのです。
あぁ、神さま。僕には羊のほかになにひとつありません。
どうか御心なら、僕にいろんなものをお与え下さい。
かならずしあわせな人生にしますからと。

その後、いろんな幸運を与えられた男はやがて、羊のお世話もやめ、大きなお城にただ引きこもる生活をはじめることに。
ある窓を見上げた時のこと、男に声が聞こえてきたのです。
お前の望みはすべて叶えられた。しかし、お前のしてきたことは、なにひとつ心に響くものはなかった。
羊の世話をする、その気持ちさえも失われたではないかと。

やがて、男のなにもかもが失われ、ただ身ひとつでやってきたのはやはり羊の群れの中。
枝を片手に大きな空を見上げる日々に。
ある夜、星空を見上げながら男はささやくのです。
あんなに裕福にさせてもらっても心はなにひとつ晴れず。
今はこうしてたくさんの羊に囲まれて、心の中に宿るのは、あの頃には見いだせなかった充実というヒカリ。
それが安らぎとなって、今の胸の中はなにかしらの明るみに満たされています。
ふたたび見つけだすという神さまのやさしさを感じながら。