欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

羊飼いが願うもの

2012-05-02 | une nouvelle
ある羊飼いが空を見上げてささやくのです。
あぁ、神さま。僕には羊のほかになにひとつありません。
どうか御心なら、僕にいろんなものをお与え下さい。
かならずしあわせな人生にしますからと。

その後、いろんな幸運を与えられた男はやがて、羊のお世話もやめ、大きなお城にただ引きこもる生活をはじめることに。
ある窓を見上げた時のこと、男に声が聞こえてきたのです。
お前の望みはすべて叶えられた。しかし、お前のしてきたことは、なにひとつ心に響くものはなかった。
羊の世話をする、その気持ちさえも失われたではないかと。

やがて、男のなにもかもが失われ、ただ身ひとつでやってきたのはやはり羊の群れの中。
枝を片手に大きな空を見上げる日々に。
ある夜、星空を見上げながら男はささやくのです。
あんなに裕福にさせてもらっても心はなにひとつ晴れず。
今はこうしてたくさんの羊に囲まれて、心の中に宿るのは、あの頃には見いだせなかった充実というヒカリ。
それが安らぎとなって、今の胸の中はなにかしらの明るみに満たされています。
ふたたび見つけだすという神さまのやさしさを感じながら。