欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

雪の日の朝

2012-05-07 | une nouvelle
雪の日の朝。とあるドアのそばに赤いバラが・・。
今日旅立つ女性の家。
子供たちが外の景色に驚き、雪遊びをするその前のことです。

大きな鞄を持ってドアを開けた瞬間、女性はバラが目に入り。
白い吐く息の中、バラを持って女性が遠いまなざしのむこうに見たものは・・。
数々の愛すべき思い出。一途な思いが火花のようにきらめいていた日々。

しかし、彼女の目の艶が変わり、なにかを振り払うように、鞄を持ち階段を下りていきます。
バラは口にたずさえて。
通りのむこうからゆっくりとタクシーがやってきて。
女性と鞄を連れ去っていくのです。

タクシーの去ったあと、ふたつの轍を子供たちがささやかなスケートのまねごとを・・。
数時間前、そこにあらわれバラを置いていった男性の足跡はもう雪の中に。
女性も男性もいなくなった場所。雪はなにかを包み込むように降り続きます。
濃い赤の花びらがひとつ、まるでふたりの思い出のように階段のそばに・・。
遊びの最中、女の子がその花びらに気づくまで。ふたりの過去は白い雪の上に刻まれていたのです。

新しいテイスト

2012-05-07 | une nouvelle


ドアが開いた列車に乗り込もうとするわたしに年老いた車掌が言うのです。

良い旅を期待していますよ。いいえ、実りの多い旅を・・。
けっして楽な道のりではありません。ですが、あなたにとってこの列車が実りへの足がかりです。
今までとは違う生き方、けっして間違いではないと思いますよ。
明るいものにできるか、そうでないかはあなた次第ですが、わたしにはわかるのです。
この先への不安が良い意味であなたの新しいテイストになるとね。

車掌は笑みを浮かべて、
では、良い旅を・・。いろんな意味で実りの多いものに。