人は悲しみの中でも明るさを求めていくことができるのです。
そう、どんな暗闇も太陽の日ざしがさしこんで、そこからなにかが生まれるように・・。
雪深い街を歩くひとりの女性。コートの襟をたてて、足もとに目をおとしたまま。
やがて、長い夜がやってきて、街灯の明かりが彼女を照らすのです。
すっかり人どおりもなくなった路地で。
雪の降らない星空の夜。ひたむきに歩く彼女に近づいていくのは、空からやってきた不思議な旅人でした。
"世の中の出来事はすべて絵空事。
こうして僕らの旅が続くのもそれを知らせていくためのものさ。"
白馬の馬車がゆっくりと路地に止まり、彼女の前にあらわれたのは、不思議ないでたちの紳士。
シルクハットを丁寧におろし、礼をすると紳士は、
"あなたのような気持ちを持ってこの世に生きていくのは並大抵のことではありますまい。
あ失礼、挨拶が遅れましたな。
わたしはあやしい者ではありません。こうして馬車に乗って世界中を旅している者です。
そして、"
かたくなな瞳で彼女は紳士を見ています。
"では、これをお見せしましょう。"
そう言って、胸のポケットから取り出したのは一枚の白いハンカチ。
それを彼女の前ではらりと振ると、たくさんのバラの花束がでてきたのです。
"マジシャンではありませんが、どうぞお受け取り下さいな。"
すこし表情のゆるんだ彼女に紳士は、
"ご自宅に帰る途中でしょう。どうかこの馬車に乗ってつかのまの空の旅をいたしましょう。"
"でも、わたしは・・。"
"あなたをむかえに今夜はここにきたのです。あなたのような心の人に明るみを知らせるために・・。"
そして、紳士は彼女の手をとり、馬車に乗せて、
"これからの旅は楽しいこと請け合いです。
きっと、世界の見方が変わりますよ。"
あたたかい灯がともる馬車の中はとても居心地がよく、彼女の体からしだいに力が抜けていきます。
"これを引く馬はちょっと不思議な馬でしてね。ほら、窓からの景色をご覧下さいな。"
窓のむこうには住み慣れた街のあかりが星々のように広がっていて、まるで飛行機の中にいるようで。
"これからはどこへ向かおうと言うのです。"
"わたしの住むお城です。今夜は舞踏会が開かれているので・・。"
"舞踏会?"
"そうです。あなたのための舞踏会。たくさんの来賓が来られていますよ。"
不思議なことで目をくりくりさせている女性。
"わたしは、そんな舞踏会なの出たことがありませんし、誰か人間違いなのでは・・?"
"そうですか・・。"
紳士は残念そうな顔つきでしたが、次の瞬間指をパチリとならして、
"そんなことはないのですよ。ほら、その胸の美しい輝きをご覧なさい。"
女性が自分の胸の辺りを見ると、ちょど心臓のあたりにひときわ輝く白い光があったのです。
"それは、あなたの持っているなによりも大切な輝きです。
世界でもっとも貴重で美しい輝き。わたしがそれを間違えることはないのです。"
彼女はお城につまでたくさんのことを話しました。これまでの思い出や悲しいこと。今の生活のことなど。
すると、紳士は聞いた後にかならず心あたたまる言葉を返してくれるのです。
そして、
"日々の中で失ってはならないものがいくつかあります。
その中でももっとも大切なものは明日への希望です。"
"それでも心折れることはあります。"
"ですが、あなたはもう知っているじゃありませんか。このような馬車が世界に存在することを・・。
それで十分なのでは・・。"
彼女は窓のむこうに目をやりながら、
"そうですねぇ。何だか今までとは違った感じがありますわ。"
"そう言っていただいてわたしも来た甲斐があったというものです。"
"これからのお城や舞踏会。なんだか楽しい想像が膨らみますわ。"
紳士も笑みを浮かべて、
"その笑顔があなたには一番お似合いですよ。
そう、美しいお城にきらびやかな催し。きっと心に残る思い出のひとつとなるでしょう。
ですが、忘れてはいけませんよ。このような出会いや出来事が日常の中にもかくれていることを。
そして、そんな素敵な出来事を繰り返していくうちにしあわせはあなたの胸にやってくるのです。
そう、それを知らせに今夜のわたしがあると言っても過言ではありません。"
"今夜はわたしにとって特別な夜になるのですね。"
"そうです。世界の違う一面をはっきり知った夜。
人生の大切な一夜が今夜なのかもしれませんね。"
笑顔で、うきうきした彼女の心はまるで少女の頃の気持ちがよみがえったかのよう。
"ほら、もうすぐわたしのお城です。
素敵な夜を楽しみましょう。はやく帰ることはないのですよ。"
紳士はウインクしながら、
"これはかぼちゃの馬車ではないのですからね。"
そう、どんな暗闇も太陽の日ざしがさしこんで、そこからなにかが生まれるように・・。
雪深い街を歩くひとりの女性。コートの襟をたてて、足もとに目をおとしたまま。
やがて、長い夜がやってきて、街灯の明かりが彼女を照らすのです。
すっかり人どおりもなくなった路地で。
雪の降らない星空の夜。ひたむきに歩く彼女に近づいていくのは、空からやってきた不思議な旅人でした。
"世の中の出来事はすべて絵空事。
こうして僕らの旅が続くのもそれを知らせていくためのものさ。"
白馬の馬車がゆっくりと路地に止まり、彼女の前にあらわれたのは、不思議ないでたちの紳士。
シルクハットを丁寧におろし、礼をすると紳士は、
"あなたのような気持ちを持ってこの世に生きていくのは並大抵のことではありますまい。
あ失礼、挨拶が遅れましたな。
わたしはあやしい者ではありません。こうして馬車に乗って世界中を旅している者です。
そして、"
かたくなな瞳で彼女は紳士を見ています。
"では、これをお見せしましょう。"
そう言って、胸のポケットから取り出したのは一枚の白いハンカチ。
それを彼女の前ではらりと振ると、たくさんのバラの花束がでてきたのです。
"マジシャンではありませんが、どうぞお受け取り下さいな。"
すこし表情のゆるんだ彼女に紳士は、
"ご自宅に帰る途中でしょう。どうかこの馬車に乗ってつかのまの空の旅をいたしましょう。"
"でも、わたしは・・。"
"あなたをむかえに今夜はここにきたのです。あなたのような心の人に明るみを知らせるために・・。"
そして、紳士は彼女の手をとり、馬車に乗せて、
"これからの旅は楽しいこと請け合いです。
きっと、世界の見方が変わりますよ。"
あたたかい灯がともる馬車の中はとても居心地がよく、彼女の体からしだいに力が抜けていきます。
"これを引く馬はちょっと不思議な馬でしてね。ほら、窓からの景色をご覧下さいな。"
窓のむこうには住み慣れた街のあかりが星々のように広がっていて、まるで飛行機の中にいるようで。
"これからはどこへ向かおうと言うのです。"
"わたしの住むお城です。今夜は舞踏会が開かれているので・・。"
"舞踏会?"
"そうです。あなたのための舞踏会。たくさんの来賓が来られていますよ。"
不思議なことで目をくりくりさせている女性。
"わたしは、そんな舞踏会なの出たことがありませんし、誰か人間違いなのでは・・?"
"そうですか・・。"
紳士は残念そうな顔つきでしたが、次の瞬間指をパチリとならして、
"そんなことはないのですよ。ほら、その胸の美しい輝きをご覧なさい。"
女性が自分の胸の辺りを見ると、ちょど心臓のあたりにひときわ輝く白い光があったのです。
"それは、あなたの持っているなによりも大切な輝きです。
世界でもっとも貴重で美しい輝き。わたしがそれを間違えることはないのです。"
彼女はお城につまでたくさんのことを話しました。これまでの思い出や悲しいこと。今の生活のことなど。
すると、紳士は聞いた後にかならず心あたたまる言葉を返してくれるのです。
そして、
"日々の中で失ってはならないものがいくつかあります。
その中でももっとも大切なものは明日への希望です。"
"それでも心折れることはあります。"
"ですが、あなたはもう知っているじゃありませんか。このような馬車が世界に存在することを・・。
それで十分なのでは・・。"
彼女は窓のむこうに目をやりながら、
"そうですねぇ。何だか今までとは違った感じがありますわ。"
"そう言っていただいてわたしも来た甲斐があったというものです。"
"これからのお城や舞踏会。なんだか楽しい想像が膨らみますわ。"
紳士も笑みを浮かべて、
"その笑顔があなたには一番お似合いですよ。
そう、美しいお城にきらびやかな催し。きっと心に残る思い出のひとつとなるでしょう。
ですが、忘れてはいけませんよ。このような出会いや出来事が日常の中にもかくれていることを。
そして、そんな素敵な出来事を繰り返していくうちにしあわせはあなたの胸にやってくるのです。
そう、それを知らせに今夜のわたしがあると言っても過言ではありません。"
"今夜はわたしにとって特別な夜になるのですね。"
"そうです。世界の違う一面をはっきり知った夜。
人生の大切な一夜が今夜なのかもしれませんね。"
笑顔で、うきうきした彼女の心はまるで少女の頃の気持ちがよみがえったかのよう。
"ほら、もうすぐわたしのお城です。
素敵な夜を楽しみましょう。はやく帰ることはないのですよ。"
紳士はウインクしながら、
"これはかぼちゃの馬車ではないのですからね。"
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