つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

昭和の津幡で憧憬したアメリカ~ンな食。

2012年02月21日 22時20分32秒 | これは昭和と言えるだろう。
「今日の一枚」は「クスリのアオキ津幡店」の店頭にて撮影したポスター。

【食卓応援!!冷凍食品半額 】。

僕のような庶民にとっては嬉しいお知らせである。
昨今の家庭内での食料保存において、冷凍が占める割合は高い。
賞味期限が迫った野菜、肉、魚などの生鮮食料品は言うに及ばず、
作り置きの点心類や下拵えが終わったおかずまで、ともかくフリーズ。
凍らせて劣化・悪化を防いでしまう。
また、様々なメーカーから売り出されている調理済み冷食も、
和食、洋食、中華にイタリアン、フレンチ、エスニックなどバラエティ豊か。
味わいは、どれもなかなかのハイレベルである。
しかし、一昔前は違う。
値段が高いし不味いといったネガティブイメージが付き纏っていた。
…そんな、文字通り“冷遇”された昭和の冷食を思い起こす時、
僕の脳裏には“憧れ”が浮かんでくるのだ。

あれはスティーブ・マックィーンか、チャールズ・ブロンソンか?
あるいはロバート・デニーロ、もしくはクリント・イーストウッド?
ハッキリとは覚えていないが、オトコ臭いハリウッドスター演じる登場人物がスクリーンの中で食べる「TVディナー」に惹かれた。

 

箱から出してレンジでチン。
銀紙をめくると立ち上る湯気の向こうには、
フライドチキン、マッシュポテト、グリーンピースやコーンにパウンドケーキ。
メインディッシュと付け合わせが一枚のトレイにセットされた冷凍食品で、
テレビを見ながら作れる、お手軽な夕食である。
スワンソン社が1950年代に考案した、アメリカを代表する食文化。
然したる味のこだわりとは無縁ながら、バドワイザーと一緒に掻き込む姿に、
何だか近未来的な雰囲気を感じたのである。

そしてもう1つ、無性に憧れたのが…

 

クェーカー社のオートミールだ。
当時はそもそも正体不明だったのである。
クェーカーって?オートミールってっっ?
今なら片やキリスト教の一分派を指し、片や押し麦の事だと分かる。
果たして、実際に食したそれ自体は、
ふっくら炊き上げた白米と比べて旨味・甘味み劣り、食感も単純。
憧憬とは程遠い味わいだったのだが、これもまたアメリカ~ンだと、
妙に納得した。
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津幡以前、古に思いを馳せて。

2012年02月18日 10時46分55秒 | 日記
「今日の一枚」は、津幡町文化会館・シグナス内の展示物。
古代のワンシーンを再現したジオラマである。

右手の人物は、紺の狩衣・水干を着こみ同系色の烏帽子を被っている。
布地は絹かもしれない。
対する左手の2人の服装は、至って簡素だ。
片や衣褌、片や貫頭衣に近いシンプルな造り。
どちらもおそらく無地の麻か木綿を使った実用本位のデザイン。
これは「役人」と「農民」…一目で身分の違いが窺える。
そして境を分ける真ん中の木枠に掲げられているのが、
以前、このブログでも取り上げた「加賀郡牓示札」。
行政から民へ向けた命令などを伝える、お触書の木板だ。
津幡町の加茂遺跡から出土した、国指定重文に指定。
なかなか貴重な資料なのである。

さて、この札が立てられた嘉祥年間は、西暦にすると800年代だから、
平安京遷都から半世紀あまりが経過した平安前期。
大化の改新で整備された律令体制である。
地方は、中央(平安京)から派遣された国司(役人)の下で、
郡司(土着の豪族・有力者)が治めていた。

かつて、耕作地は「国有」であり、国が民に分け与えて税収を得ていたが、
次第に土地の「私有化」が進行。
「荘園体制」がしかれるにつれ、班田収受は難しくなり、
農民の貧富の差が拡大していった。
…と、そんな時代背景の中で登場する「加賀郡牓示札」には、
次の八ヶ条が掲載されている。

第1条:農民は、午前4時頃に仕事へ出かけ、午後8時頃の帰宅を命じる。
第2条:農民が(田植えの際に)酒や肴を勝手に食べることを禁止する。
第3条:溝や堰(潅漑施設)の修復を命じる。
第4条:5月末までに田植えを終えることを命じる。
第5条:浮浪逃亡の禁止と、浮浪逃亡農民を匿うことの禁止。
第6条:桑畑なしに養蚕をしてはならない。
第7条:飲酒や賭博の禁止。
第8条:以上を破った者の名を上申することを命じる。

「加賀郡牓示札」に記された年月日は嘉祥2年2月12日。
太陰太陽暦では3月初旬頃である。
目前に迫った本格的な春の農作業を順調に行わせようと、
お触れが出されたのではないだろうか。

こうした諸々を頭に入れて想像すれば、立体模型が生々しく感じられる。
まだ「津幡町」が出来る以前、
古の祖先たちの息遣いが聞こえてくるようだ。
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雪の花咲く、津幡町。

2012年02月17日 23時03分12秒 | 自然
「冒頭の一枚」は、今朝、出勤途中に立ち寄った「住吉公園」。
予報的中、20センチに近い量の新雪が降り積もっていた。
振り仰いだ空は厚い雲に覆われた鉛色。
薄暗く白む視界の中で動くものはない。
シンと静まり返ったそこは一種の荒野。
文字通り“寒々とした”風景なのだ。
…がしかし、だからこそ楽しめるものもある。

 

公園の周囲に植えられた木々。
すっかり葉が落ちた落葉樹の枝には、こんもりと雪が盛り上がり、
まるで花のようにも思えた。
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津幡町で見つけた、氷の下の命の灯。

2012年02月16日 23時49分05秒 | 自然
現在、外は湿った雪模様。
今夜半から週末にかけての北陸はまたもや荒れた天気になりそうだ。
一体、何度目の寒波だろう…。今シーズンの冬は例年になく長い。
つまり、なかなか散歩に出かけられないのが現状。
新鮮なブログネタを仕入れるためにも、
早く気軽に歩き回れる陽気になって欲しいものである。

さて「今日の一枚」は、今朝、近所にて撮影。
民家の軒下に置かれた小さな水槽に、厚い氷が張っていた。
その底、氷結を免れたスペースには、2匹の小さな鯉が。
暫く観察していたのだが、微動だにしない。
『可哀そうに、凍死してしまったのだろうか?』
…などと考えつつ魚の横の辺りを叩いてみた。
すると、少し間があったものの身をくねらせるではないか!
人間ならおそらく1分と我慢できないであろう水温の中で、
仮死状態近くまで運動量を減らし、春が来るのを待っていたのだ。

大いなる自然の前で、生き物は無力である。
逆らわず、行く末を任せるより他に道はなし。
しかし、他の生き物に比べ「ヒト」は、ほんの少し例外と言えるかもしれない。
知恵を以て、ほんの少しだけ抗う事も可能だ。
ただ、自然が猛威を振るえば、それとて蟷螂の斧。
やはり敵わぬのが道理だと、先の震災で思い知らされた。
命の灯を絶やさぬため、僕等は見習うべきなのかもしれない。
じっと耐える鯉の姿に。
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津幡駅の懐かしき声。

2012年02月15日 23時17分26秒 | 鉄道
「あんころぉぉー!」

僕が高校生だった時分まで、国鉄・津幡駅のホームに列車が止まると、
辺りに、一本調子で力強い声が響いたものだ。
発声元は「きびあんころ」を入れた黒い箱を肩に掛けた売り子さん。
僅かな停車時間の間、懸命に声を振り絞っていた。

 

かけ紙には北陸本線・津幡名物とある「きびあんころ」は、
一世紀の歴史を刻む鉄道銘菓。
餅米を蒸し、きび粉を練り込んだ小さな団子に漉し餡をまとわせた、
素朴な味わいのスイーツだ。
駅舎近くの「庭田商店」にて100年前から同じ製法を堅持している。
かつては、乗降客を相手に直接販売されていたのだが、
現在は駅舎内の売店で販売。
立売スタイルが姿を消して久しい。

「あんころぉぉぉぉーっ!」

発車のベルが鳴り車両が動き出すまで続く威勢のよい大音声こそ、
津幡駅の名物だった。
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