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“エル・グレコ El Greco”展(東京都美術館)2013.2.14

2013-02-15 21:44:14 | Weblog
 エル・グレコ(1541-1614)は“あのギリシア人”といった意味。“エル”はスペイン語の男性定冠詞、“グレコ”はイタリア語でギリシア人の意味。クレタ島生まれ。彼は、生地でキリスト教の図像を描くイコン画家としてスタートする。1567年(26歳)、イタリアのヴェネツィアへ渡り、ルネサンス的な絵画様式を習得。ローマへ短期間移動した後、1576年(35歳)、スペインに渡る。翌年、トレドに定住。没するまで、そこで過ごし、画家として成功する。

「受胎告知」(1576頃)ティッセン=ボルネミッサ美術館、マドリード
 ヴェネツィア、ローマなどで習得したルネサンス的絵画様式の集大成的作品。左に、青い服を着て、驚く聖母マリア。右に、黄色い服の大天使ガブリエル。中央上に、精霊の鳩、そして天使たち。古典的調和。(エル・グレコ、35歳頃)
            

「悔悛するマグダラのマリア」(1576頃)ブダペスト国立西洋美術館
 マグダラのマリアは、磔にされたイエスを遠くから見守り、その埋葬を見届けた。そして復活したイエスに最初に立ち会う。画中のガラスの壺が、マグダラのマリアを象徴する。彼女は、イエスの遺体に香油を塗るため香油壺を持参した。マグダラのマリアは「罪の女」であり、イエスの死後、隠遁し悔悛する。(エル・グレコ、35歳頃)
                       

「フェリペ2世の栄光」(1579-82頃)エル・エスコリアル修道院
 エル・グレコがスペインに渡り、彼の工房が初めて、国王に売り込んだ作品。最後の審判の情景に似る。上方に、光に包まれたキリストのイニシアル、HIS、そしてそれを取り巻く天使たち。中央下に、ひざまずき祈るフェリペ2世、またそれを取り巻く聖職者と貴族たち。左中は、審判を恐れる地上の人々。右下は、怪獣の口の中の地獄。大スペクタクル!(エル・グレコ、38-41歳頃)
          

「聖アンナのいる聖家族」(1590-95頃)メディナセリ公爵家財団タベラ施療院、トレド
 対抗宗教改革のカトリックの熱情の時代。聖家族がしばしば描かれる。この絵では、聖母マリアがキリストに乳を与える。彼女は美しい。祖母の聖アンナが、キリストの頭をなでる。父の聖ヨセフが、キリストの足に触れる。幸せな聖家族!(エル・グレコ、49-54歳頃)
          
  
「無原罪のお宿り」(1607-13頃)サン・ニコラス教区聖堂(サンタ・クルス美術館寄託)、トレド
 高さ3メートルを超える大作。今回の展示の最後に、登場。色鮮やか。感動し敬虔な気持ちになる。キリストの母マリアは、汚れなき存在であり、「情欲の交わりなしに」母アンナの体に宿る。マリアが、手を胸に当て、足を三日月に載せ、天空を降りてくる。鳩が精霊。マリアは12の星の冠をかぶる。エル・グレコの死の前年に、完成。細長くデフォルメされた人体や、超自然的な光の効果を特徴とする。(エル・グレコ、66-72歳頃)
   

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