ワールドカップ(W杯)は「模造品」や「偽ブランド品」の天国となっている中国にとっても、4年に一度の大きなビジネスチャンスのようだ。実物大のトロフィーをはじめ、レプリカユニホーム、公式ボール…。国際サッカー連盟(FIFA)のライセンスを無視した“ニセモノ”が大量生産され、世界中に輸出されている。
どこがフェアプレー、約660万点も
中国の英字紙チャイナ・デイリー(電子版)によると、福建省廈門市の税関は先月、2万点以上のレプリカユニホームの模造品を押収した。ユニホームにはW杯と「FAIR PLAY」のロゴが入っていたといい、「どこがフェアプレーなのか…」と思わず突っ込みを入れたくなる。
浙江省寧波市では、アディダス社製のW杯ブラジル大会の公式球「ブラズーカ」と同じデザインのボール9千個が見つかった。日本と1次リーグC組で戦うコロンビアへ輸出されることになっていたという。
また、日本の100円ショップの商品などを多く生産し、世界的な日用品取引の中心地とされる浙江省義烏市では、リビアに輸出されることになっていたW杯トロフィーの実物大の模造品約1千個が税関によって摘発された。
当局の集計では、今年1月~3月の間に広東省深セン市や山東省青島市など沿岸部にある10以上の都市で押収されたW杯ブラジル大会関連の模造品は約660万点にものぼったという。
FIFAの2013年の財務リポートによると、13億8600万ドル(約1400億円)の歳入のうち、W杯ブラジル大会のマーケティング権による収入は4億400万ドル(約410億円)で、約3割を占めた。マーケティング権とは、多額のスポンサー料を支払ったスポンサー企業が大会のマークを使用したり、ピッチに看板を掲出したりする権利のことだ。
これだけの実入りがあるのだから、FIFAがスポンサー保護のため、模造品の製造やマーケティング権の侵害に目くじらをたてるのも無理はない。4年前の前回W杯南アフリカ大会では、オレンジ色のミニスカートをはき、スポンサー以外のビールメーカーの広告塔としてスタジアムに入場しようとした美女軍団がFIFAの要請を受けた南アフリカの警察当局に拘束される事態も発生した。
チャイナ・デイリーによると、義烏市にあるハンドクラフトメーカーのオーナーは「4年前は非合法の商品を売ったり輸出したりするのはそんなに難しくなく、税関に押収されるのもごくわずかだった。だが、今回は見つかると、かなり重い罰金を科されることになりそうだ」と話したという。
中国で660万点ものW杯関連の模造品が押収されたのは、税関の取り締まりが極端に厳しくなったからなのか。それとも、網をくぐり抜ける模造品の数があまりに多く、ちょっと取り締まっただけで、これだけの量が摘発されたのか。どうも、後者の方が正しい気がする。中国のパクリ商品の現状を見ると、660万点も氷山の一角に過ぎないのではないかと思えてくる。