小説「腰巻き富士」

2006年05月28日 | 健康・病気
今、真剣に小説を書こうとしています。
いや、書き始めている。
私が45歳のとき単身赴任をした山梨の暮らしを
モデルにして、ストーリーはだいたい出来てます。

赴任先の山梨事業所で一緒に仕事をした女の子との
ちょっとしたラブストーリーです。
いえいえ、実際にはそんなことはありませんでした。
(あって欲しかったけどな…)

かなり濃厚なシーンも…、なんて私には無理ムリ。
本社の意向で作った山梨事業所での開発が失敗し、
会社が消滅していくというのがメインの話です。

東京本社が閉鎖され山梨事業所が本社になるという発表があった。
下に、'98.3.18 にASAHIネットのかしの木亭談話室に書いた
「さよなら山梨」という文章を添付します。
(こういう書き込みが現在の九想話になりました)

そんなことをベースに、
24歳の綺麗な女性との関係を書こうかななんて思っています。
しかし、書くことが遅々として進んでいません。

小説の題は「腰巻き富士」。
山梨から見る富士山には下半身に甲府盆地の山々があるのです。
それが私には、腰巻きに見えたのです。
あまりきれいな題名ではないですね。

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  さよなら山梨
 今、九想は、心の糸が切れた状態です。
 昨日(3/16)、本社の小平工場が閉鎖ということが発表された。
 つまり、私の帰る場所がなくなった。1年という約束で山梨事業所に来た
のに、帰るところがなくなりました。
 本社は10時に全社員を集め社長が話したそうです。
 3/23までに、山梨に行けるか、それとも退職するか結論をだせ、という。退
職する者は、会社都合ということになって、年数に応じた退職金プラス給料の
二ヶ月分を払うという。
 今日現在、本社の製造部、資材部、技術部で山梨に来る者はゼロらしい。そ
の各部署の部長はみな来るが、その部下たちは全滅です。20何人かが辞める。
 今の第一事業部の売り上げでは、60人ぐらいが食っていけるそうです。現
在は119人いる。なんてことはない。リストラするために小平を閉鎖するよ
うなものです。これまでうちの会社がこれまでやってこれたのも、小平の稼ぎ
だ。その苦労をしてきた者たちが辛い目にあって、まったく稼いでこなかった山
梨事業所の奴らは暢気にしている。おそらく、景気がよくなって受注がきたな
ら、山梨の人間では対応できないだろう。会社の経営者は何を考えているのか。
 山梨事業所でも、昨日の5時半に全員が集められて発表された。
 業績不振なので、小平を閉鎖し山梨に集約するという。それをいう山梨事業
所長は、その日、本社に呼ばれて行ったがなんのために行くのか知らなかった、
とバカなことをいう。あいつは取締役なのだ。取締役会で決定したと自分でい
いながら、知らなかったという。
 私ともう一人、本社から来ている製造部のやつが、所長にくってかかった。
「会社の業績が悪いのは、Yさんのせいじゃないのか。開発が目的の山梨事業
所で、ちゃんと開発が出来なかったから、売れるものを造れなかったから、会
社の現状がこんなんじゃないですか。あやまってください。頭を下げて下さい。
おれ、荻原さん含めて本社の者たちにあやまってください」
 田中(「未中年」ではこの名前だった)は、右手の拳を震わせ、いう。
「経営者の一人としてあやまれ、というのか」
「いや、ちがう、山梨の開発部の責任者としてあやまれ」
「取締役の一人としてなら、頭を下げる」
「訳のわかんねェこというな。ろくな装置を造れなかった開発の責任者として
あやまれ」
 田中は、今にも所長に飛びかかりそうだった。田中は、中国拳法を習っている。
私は前に出て、田中の右腕を両手で抱え込み後ろに引きずった。このままじゃ
田中は収まらないだろうと考え、私もいった。なんかいったんだけど、よく覚
えていない。
「去年、山梨に来たとき、これから8インチの装置の部品を17台集めるのが
おれの仕事だった。おれは燃えた。単身赴任はいやだったが、やってやろうじゃ
ないか、と思った。ところが売れない。まだ7台残ってるじゃないですか」
「田中くん、荻原くんの気持ちも分かる。確かにあの装置の開発は2年遅れた。
そのせいで他社に負けているのかも知れない。しかし、性能はうちのがいいんだ。
みんながんばってあの装置を開発したんだ」
 それを聞いて私はキレた。
「どこが他社より性能がいいんですか。HセミコンダクターにもS社にも、お
れは何回も部品を送っているんですよ。搬入して立ち上げてからあんなに部品
が壊れるなんて、装置の設計が悪いからとしかいいようがないです。それをY
さんはどう考えてるんですか。冗談じゃないですよ」
 所長は、顔をひきつらせている。
 そのとき、左の奥の方から声がした。開発のリーダーのOだった。
「荻原さん、すいません。私が悪いです。みんな私の責任です」
 私はあっけにとられた。でも、うれしかった。それまでOのことを私は嫌い
だった。わがままで、いばっていて、嫌味な奴だった。
 重い空気が沈殿したまま、散会になった。
 田中と製造のSに煙草を吸いに行こう、と外に出ようとしたら、玄関のとこ
ろまでOが追いかけてきて、
「本当にすいません。私は、今月いっぱいで辞めます。いろいろ不自由な思い
をさせてすみませんでした」
「え、辞めんの。どうして…」
「前から考えてたんです。今日で心が決まりました」

 こんなことがあった。
 私は、会社を辞めます。
                                九想
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<注> 「未中年」というのは、その頃書いた私の小説です。

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