龍彦のアパートは、王子駅から早足に歩いて20分ほどかかるところにあった。
九想話に何回も書いているプロボクサー、フォークシンガー、になりそこなって、
心機一転、陶芸家になるつもりが、死んでしまった私の友人です。
21歳のときに付き合っていた女性が王子に住んでいた。
彼女は長野の人で、たしかひとつ年上でした。
ある夜、女性と王子駅からすぐの飛鳥山公園を歩いていた。
1枚のトランプを拾った。
まわりを見るとトランプがまばらに落ちていた。
私たちはそれらを暇つぶしに拾い集めた。
落ちているのをほとんど拾って数を数えたら1枚足りなかった。
ハートのエースがなかった。
王子は、私なりに思い出のある街です。
その頃私は、駒込に住んでいた。
現在は、地下鉄南北線で結ばれている駒込と王子だが、当時は都バスでした。
本郷通りを15分ほどバスで走れば行けます。
「いつか王子駅で」(堀江敏幸著 新潮文庫)を読んだ。
久しぶりに文学を楽しみました。
読み始めて、この人の文章は長いな、と思った。
なので最初は、文章の意味がすとんと心に入ってこなかった。
小説は、主人公がこの王子駅に住んで半年の頃から始まっている。
そのとき「かおり」という定食も出す居酒屋で、昇り龍の正吉さんと知り合う。
正吉さんの仕事は印章彫りだ。
そうしてこの小説は始まる。
王子の景色、人々が丁寧に描かれている。
明日も仕事なので、ゆっくり書いていられませんのですみません、端折ります。
いい小説でした。
解説が私の大好きな荒川洋治(詩人)だった。
仕合わせな時間を過ごせました。
この本は、旗坊さんと1月に初めてお会いしたときにいただきました。
旗坊さん、良い本をありがとうございました。
この小説のようには書けませんが、小説を書いてみようと思わせてくれた本でした。