さよなら冷蔵庫

1998年12月01日 | 暮らし

 日曜日に、冷蔵庫を買った。
 この不景気に、転職して給料が下がったのになんだ、ってな気分です。
 でもね、女房が夏の終わり頃から、「冷蔵庫が欲しい」というそぶりを見せ
るんです。それを無視できるほど、毅然とした亭主はやっていません。別に浮
気をしているとか、彼女に対してやましいことはしてないのですが、なんでし
ょうね、なんとも女房という存在にはおもねってしまう私です。
 鼻の先のラオックスで買った。
 日曜日の夕方、夕飯の買い物をしよう、ということで二人で出掛けた。目の
前のスクランブル交差点を斜めに渡るとラオックスだ。「ちょっと寄ってみよ
う」といったのがいけなかった。店に入り、冷蔵庫売場に足を踏み入れた女房
は、目をらんらんさせて、展示品のドアを開けたりパンフレットを見たりと、
まるでフラメンコの練習を部屋でしているように活き活きしてた。私は、でき
るものなら2階のパソコン売場に逃げたかった。
 店員はさすがめざとくさりげなく近寄ってくる。そして、なんともいいタイ
ミングで囁きかけてきた。
 女房が欲しがってる冷蔵庫は、400リットル以上のデカイやつだ。常日頃、
冷凍庫が大きかったら、日曜日に料理して沢山冷凍できるのに、とか、夏なん
か残ったカレーを鍋ごと冷蔵庫に入れたい、とかいっていた。
 それはとてもよく分かる。なにしろ会社勤めの彼女は、家事を簡素化したい。
しかし、家族にはそれなりの料理を用意したい。まして週に2度踊り狂ってい
る彼女には、時間が少ない。私はよくやってると思っている。
 445リットルの東芝の展示品処分のものがあった。133,000円。新
型が発売され、古くなった冷蔵庫だ。隣の日立の450リットルのも展示品処
分で、138,000円だ。しかし、東芝のは配達料無料と書いてあった。こ
の店では、400リットル以上は配達料を取ると、店員に訊くと答えた。
 嬉しいことか哀しいことか、女房は、展示品でいいという。長い間多くの人
に晒されていたことなど気にしない人なのです。実質を尊ぶ女です。それなり
の機能をはたすなら、経済的な方がいいと考える人です。これは私も同じです。
 しかし、できることなら女房に新品を買ってやりたい、と思うのは、女房に
やましいことがある亭主なのでしょうか。いや、私は潔癖です(と、ここで書
くことがアヤシイ。ソンナコトガアレバイイナ…)。
 いったん家に帰り、この2、3日に来た新聞のチラシを見た。この近辺の安
売り電気店のだ。コジマ、ノジマ、ヤマダ、ダイクマ、ジョーシンなどなど。
見て買うことにした。
 決めたけど、心の片隅に寂しさがある。これまで使ってきた冷蔵庫と別れる
のが寂しい。まだ何年かは使えるはずだ。パッキンが劣化しているが、部品交
換すれば大丈夫だ。10年使っている。壊れてないのに廃棄するのがツライ。
 しかし、息子たちと暮らすのもあと5、6年か。今大きい冷蔵庫を買わなけ
れば、その大きさが生きない。女房と二人になったら、その大きさが虚しくな
る。
 女房が楽できることを考えたら…。古い冷蔵庫さんゴメン。あなたは10年
間、私たち家族を見守っていましたよね。お世話になりました。
 去年もこんな気持ちになった。車を買いかえたときだ。9年乗ってたけど、
まだまだ走る車だった。
 明日女房は会社の定休日だ。冷蔵庫が来る。今日、残業を終えて9時頃帰っ
てきたら、彼女は台所を片づけていた。二人で食器棚などどかしたあと、床を
拭いていた。新しい冷蔵庫を迎える準備だ。とても楽しそうだった。
 古い冷蔵庫さん、ありがとうございました。

コメント
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