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映画・演劇のレビュー

舞道ダンスシアター『EXTRVAGANZA3! にじのまち』

2016-04-26 22:08:49 | 演劇

 

 

今の超人予備校をサイドから大きく支えるニランジャンの主宰する舞道ダンスシアターによるステージである。今回が3度目になる(らしい)。(このタイトルを見たら明白であるけど)僕は初めて。とても、おもしろかった。

 

ただのダンスの発表会なら、それは見ない。これは魔人ハンターミツルギによる演劇作品としても成り立っているのが、魅力なのだ。ニランジャンは全幅の信頼を寄せるミツルギさんに自由を与えた。それが素晴らしい方向へとこのステージを導いたのではないか。ミツルギさんは当然一切手を抜かない。超人予備校の作品以上のものをここに提示しようとした。(その姿勢は真面目で、正直者の彼らしい)

ダンスとドラマの融合なんてこれまでだって超人予備校で散々やってきた。その集大成とでも言いたいような作品になっている。でも、それは自分のためではない。ミツルギさんはあくまでも舞道ダンスシアターのために全力を尽くす。その姿勢が共感を呼ぶのだ。肩の力の抜けた大作になっているのが素晴らしい。大仰なドラマではなく、でも、壮大なスケールの作品にする。それはダンサーたちによるナンバーの魅力を最大限に引き出すことで可能なのだ。だが、彼が用意したドラマは彼らを引き立てる為の中継ぎではない。1本の長編作品としての台本を用意した。2時間の芝居としても、成り立つ。そこがこの作品の魅力なのだ。

 

『オズの魔法使い』である。ドロシーがオズに行き、何を手に入れるのか。眠れない彼女(ハシグチメグミ)が羊のメリーさん(北野勇作)に誘われ、夢の中に行く。そこは彼女の記憶を再編した不思議な世界だ。妹と自転車で遠くまで行ったこと。へんな男の子に言い寄られて困ったこと。大好きだった犬が死んだこと。思い出の中のいくつものお話が夢の論理に則って再編されて提示される。彼女はこんなへんてこな話はいいよ、というけど、夢っていつだってそんなものだ。

 

ここに描かれるのは誰もが感じた幼い日の風景の点描だ。3つのエピソードが僕たちに伝える普遍性のその先に向かってお話は加速する。オズの国は虹の根元にある。そこで、彼女は何に出会うのか。

 

それぞれのダンスシーンに登場するダンサーたちのパフォーマンスは、完成度ではなく、彼らの気持ちをちゃんと伝えるものだ。踊るという行為が楽しい。上手いとか、下手とか、そんなことあまり大事ではない。それよりも、踊ることで、伝えられるもの、それを大事にする、ニランジャンの姿勢がそこにはしっかり表現されている。そして、そんな意図を十分に汲むミツルギさんと超人予備校のメンバーはダンスとともに、この世界を実現する。

それはミツルギさんが幼いころ見た夢の世界だ。なんばの「にじのまち」。今ではもうないその夢の場所を父親とともに歩いた思い出。(はたして彼が父親と歩いたかどうかは知らない。でも、本編の主人公には明らかに彼自身の姿が投影されてある)今考えると、なんでもない地下のショッピング街。でも、幼い少年にはそこが夢の街に見えた。

 

これはひとり彼だけのお話ではない。みんなの夢がここにはいっぱい詰まっている。そんな普遍性を持つ。これはそんな夢の2時間だったのだ。普通のダンスの発表会だと思ったら大間違いだ。でも、やっぱりこれはダンスの発表会でもある。そんな基本はしっかり踏まえてある。小さな子から、年配の方まで、みんなが踊るということを通していっしょになる時間。  「にじのまち」が確かにここにはある。

 


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