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映画・演劇のレビュー

『レヴェナント 蘇えりし者』

2016-04-25 21:43:28 | 映画

 

3週連続で、今年のアカデミー賞受賞作品を見る。そして、今回が大トリだ。作品賞を『スポットライト』に譲ってしまったけど、実質はこれが最高作品だったのではないか。イニャリトゥが今年もやってくれた。昨年の『バードマン』は技術的な驚きだが、今回は作品としての驚きだ。根性でこんな過酷な映画を作り上げた、としか言いようがない。たいしたもんだ。(というか、なんだ、その上から目線は!)

 

2時間37分の壮大な冒険。映画でしか体験できない凄まじい旅だ。(現実でこんなことが出来るような人間はいない。実話の映画化だけど)先日見た『奇跡の2000マイル』も大概だったけど、これは想像なんか遥かに絶する荒唐無稽の極致だ。ないない、と言いたくなるほどのえげつなさ。ただ、復讐に突き動かされた。最愛の息子を殺された父がもう死んだような状態からなんと蘇えり、息子を殺した男を捜し出し、追いつめる。

 

ありえないほどの過酷な自然と戦い、そんなバカな、というしかないような状況で、現状を切り抜け、生き延びる。巨大なハイイログマに襲われ、瀕死の重傷を負った。みんなが見棄てるしかないと判断したのだ。助けたかった。でも、不可能だ。本人も認める。でも、息子はなんとかして父の命を助けようとした。そんな息子を動けない父の目の前で殺したのがトム・ハーディ演じる男だ。自分たちが助かるために、いうことを聞かない息子を殺す。それを目の前で見ながら何もできなかった父親。そこから、今年のアカデミー賞主演男優賞を受賞したレオナルド・ディカプリオのサバイバルが始まる。

 

多くは語るまい。でも、死んだ馬の体の中に入って、寒さを凌ぐシーンや、その前の断崖から馬とともに落ちていくシーンもそうだし、もうこんなのは、ないよ、というシーンが続出。それがリアルに描かれるから、信じるとか信じないとか関係なく、ただただアタフタする。見ているだけなのに、こんなにも素直に手に汗握るって、なんだぁ? 要するにこれこそが活動大写真なのだ。映画なのである。CG映画にはもう驚かないけど、こういう映画には驚くしかない。問答無用の連続技。美しい坂本龍一のスコアがなければ、目を背けてしまったかもしれない。それほどに痛々しく過酷な描写の連続なのだ。1823年アメリカ北東部、白人と現地人の確執。ハンターたちが毛皮を奪い合う。善悪の判断なんかどうでもいい。生き残ることがすべてで、奪うこと、殺すことがすべて。掠奪者は誰かなんていう冷静な判断はいらない。

 

そんな世界で信じられるものは息子だけ。父だけ。だからこそ、その最愛のものを失ったとき、復讐しか残らない。「復讐の先に、何があるのか。」というのが、映画のキャッチコピーとして用意されている。

映画を見終えた後、そこを考えて欲しい。そんな想いがそこには込められてある。これは理屈なんかじゃない。理由なんかいらない。ただ、その事実を受け止めるだけでよい。こんな映画を見たいと思っていた。これはたぶん今年一番の傑作である。数あるGW公開作品の中から、まず、これを見てよかった。(というか、これだけでいい。今はそんな気分だ。)

 


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