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映画・演劇のレビュー

『白河夜船』

2016-04-25 21:35:42 | 映画

 

吉本ばななの初期の傑作小説の映画化である。(最近気付いたのだが、「よしもとばなな」から吉本ばななに改名、というか、戻している!)は昨年3月大阪アジアン映画祭で先行上映されて4月に劇場公開された作品だ。実は公開時、敢えて見なかった。見る勇気がなかったのだ。大好きな小説の映画化は自分の中に確固としたイメージがあるから、それが損なわれるのが怖い。映画と小説は別物、と単純に割り切れたならいいけど、好き、の場合は難しい。どうしても点が辛くなる。しかも、安藤サクラ主演である。僕の中では、それはないわぁ、というのが先立った。だから、敬遠した。

 

ようやく見たのは今年の1月だ。それからでも、もう4ヶ月も経つ。この映画のことをここに書く気はなかった。無視したい映画だ、というほどではないけど、あまり書く気が起きなかったのも事実だ。違うな、と思った。そんなこと、最初からわかっていたことだから、今さら、なのだが。

 

でも、先日アピチャッポンの『光の墓』を見て、小栗康平監督の『眠る男』(韓国を代表する役者であるアン・ソンギがタイトルロールで主演した)はすぐに思い出したのに、『白河夜船』は思い出さなかった。その事実に先ほど気付いたことで、反対になんだか、無性にこの映画の話がしたくなったのだ。なんだかなぁ、ではあるけど、忘れてしまうほど、印象に残らない映画。でも、これは悪い映画ではない。若木信吾監督の前作(監督デビュー作でもある)『星影のワルツ』は好きだ。カメラマンである彼が写真から映像へと進出して、写真家だから描けれる映画を試みる。その姿勢が好きだ。だから、本当は一刻も早くこの映画を見たいと、思ったのも事実なのだ。

 

僕がこの映画を黙殺した理由は、寝ている姿を延々と撮影した部分がまるで魅力的ではなかったからだ。そこではないか、と思った。だが、それは映画ではなく写真だ。一瞬を永遠として捉える為には映画はジャンルとして機能的ではない。美しく撮るなんて、簡単だ。でも、ここに必要なものはそんなことではないはずなのだ。

 

映画はまずドラマだ。それは小説も同じ。原作の魅力はずっと夢の中にいるようなヒロインが、小説のなかではずっと起きていることにある。(発売された当初、たぶん25年くらい前に読んだだけで、それ以降読み返していないからそうじゃないかも、と少し不安だが)寝ている時間は動かない。ずっと寝ているけど、寝ていない。そこで映画も小説も動くはずなのだ。なのに、この映画は起きている時間も寝ている時間も魅力的ではない。91分という短い映画の半分くらいがベッドの中でまどろんでいるけど、そこにドキドキするような時間を描けていない。

 

なぜ、彼女は眠り続けるのか。そこからどこに向かうのか。結局はそんなことが大事になる。でも、そうじゃないことを、明確にしたとき、この映画は思いがけない次元へと突入したかもしれない。それが何なのか、僕にはわからないけど、出来ることなら、そういう映画が見たかった。

 


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