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映画・演劇のレビュー

エイチエムピー・シアターカンパニー『桜姫 歌ヒ鳴ク雉ノ行方』

2015-04-22 21:27:48 | 演劇
これも再演である。最近再演を見ることがやけに多くないか、と自問する。というか、多い。別に好き好んで、ではない。僕が見ているそれぞれのカンパニーが、そうするからだ。新作が書けないから、なんていうのではない。(はずだ)それどころか、再演を通して進化している。そうじゃなければ、再演をする意味はない。笠井友仁さんの『桜姫』は、再演ではなく、新作と謳う。前回は鶴屋南北の『桜姫東文章』であり、今回は、その世 . . . 本文を読む
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『闇の中の光』

2015-04-22 21:26:16 | 映画
こんなにも手強い映画を見るのは久しぶりだ。こんなものをDVDなんかで見るべきではない。劇場で襟を正して対決しなくては、とても太刀打ちできない。これをつまらない、と斬り棄てるほど、バカではない。しかし、感動した、と言えるほど、ノーテンキでもない。ただ、わからない、と頭を抱えるしかないではないか。凡人には理解不能の世界、と突き放すほど、単純ではない。この衝撃を無視できるわけではない。難解な芸術映画と . . . 本文を読む
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『バードマン あるいは』

2015-04-19 21:46:56 | 映画
この映画のタイトルだが、『バードマン あるいは』ではなく、正確には『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』なのだが、これではあまりに説明的だし、変な効果を狙いすぎていて、好きじゃない。 イニャリトウが放つこの強烈なドラマは、こんなお話なのに、アメリカの今を鮮烈に射抜いた。マイケル・キートンは、自画像のような主人公を自虐的にではなく、とても切実に、でも余裕を持って(見事「余裕なく」見 . . . 本文を読む
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吉田修一『怒り』

2015-04-19 21:46:41 | その他
ある殺人事件に犯人を追う刑事。そこだけを取ると、よくあるパターンのお話なのだが、それが吉田修一の手にかかるとこうなる。彼のヒット作『悪人』につながる犯罪小説だ。(『悪人』に続いて本作も李相日監督の手で映画化されているようだ。公開は来年。) 表面的には何でもない作品に見える。それが異常な緊張感を持つものとなる。しかも、事件の謎を追う、とか、連続殺人とか、そんなふうにはならない。じゃあどうなるのか、 . . . 本文を読む
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坂井希久子『ヒーローインタビュー』

2015-04-19 21:35:01 | その他
こういう小説を読むと、なんだかほのぼのとしていい気分になる。正直言ってこれはたいした小説ではない。でも、そんなことどうでもいい。読んでいて、ほんわかとした気分になり、読み終えて幸せになれる。それこそが、一番大事な点ではないか。みんなそれぞれ悩んで生きている。いいことばかりじゃない。それどころか、毎日憂鬱なことばかりだ。人生ままならない。 でも、生きていたなら、きっつといつか、いいこともある。ヒ . . . 本文を読む
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『コーヒーをめぐる冒険』

2015-04-18 08:56:19 | 映画
ベルリンの町を舞台にした1日のお話だ。たまたまコーヒーを飲みたいにも関わらず、飲めない男の話。そんなうまいこと、1日中、コーヒーから見放されるかな、と思う。そう思わせたなら、この映画は失敗だ。だから、ちょっとがっかりな作品だった。すごく楽しみにしながら見たのだけど。 モノクロの映像は少し、ねらいすぎ。そうすることで、映画は構えてしまう。作り手も観客も、である。これからどんな映画が見せられるのか、 . . . 本文を読む
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『ブエノスアイレス恋愛事情』

2015-04-18 08:23:43 | 映画
これはきっと僕が大好きな映画に違いない、と思って確か昨年シネリーブル梅田で公開された時、行こうと心に決めていたのに、いつものように上映期間の短さから見逃してしまっていた。そうなると、今度はDVDということになるのだが、それもまた、たくさんの映画に埋もれてしまって、気付くとTUTAYAからは消えている、(あるいは、僕が忘れている)という運命をたどるはずだったのだが、昨日たまたま手に取って、借りてきた . . . 本文を読む
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突劇金魚『ゆうれいを踏んだ』

2015-04-17 19:48:09 | 演劇
「ゆうれいを踏んだりしたらあかんやろ、」と突っ込み入れるところから始めたい。おろおろする片桐慎和子さんの泳いだ目が始まりだ。そこから話は始まる。頭の上に桜の木を付けた彼女が登場して、お話はさらに始まる。何かが始まった、そのきっかけは明らかだ。だが、果たしてそこが原因だろうか。だいたい幽霊(あえてここからは漢字に)なんか踏まない。というか、幽霊なんかいない。だが、彼女には見えてしまう。踏んだ報いか . . . 本文を読む
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『イントゥ・ザ・ウッズ』

2015-04-17 19:25:27 | 映画
昨年の大ヒット作『アナと雪の女王』、続いて『マレフィセント』、更にはこの正月の『ベイマックス』と、ディズニー映画の快進撃は止まらない。この後には『シンデレラ』も控える。そんな中、この春公開されたこの作品は、「いかにもディズニー」と言えるらしい華やかな映画だ、と思ったのだが、さにあらず。見てみてこれには驚いた。こんなとんでもない映画だったのか!  意外だった。これは健全ディズニーの毒にも薬にもな . . . 本文を読む
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小川糸『サーカスの夜に』

2015-04-17 19:24:04 | その他
まるでいしいしんじのような小説を小川糸が書いている。それってなんだか不思議だ。彼女が新境地を開拓した、というふうには思えない。でも、それが嫌だ、とかいうわけではない。これはとても心やさしい世界で、少年が少しずつ成長していく過程を静かに描いていく詩的な作品だ。大きな事件もなく、(スーパーサーカスのせいで、興行が成り立たなくなるとか、はあるけど)そこには、まだ少年がここにはいなかった頃と同じような時間 . . . 本文を読む
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『ソロモンの偽証 後篇 裁判』

2015-04-12 21:19:15 | 映画
当然、初日に見に行った。まず今一番見たい映画を見る。前篇は出来るだけ、遅く見ようと思ったけど、我慢出来なくなって、2週間ほど前に見てしまった。その辺のことは先に書いてある。(『ソロモンの偽証 前篇 事件』の項) 連続で見るのは、やめたほうがいい。疲れるから。2時間半。クタクタになる映画だ。見終えてフラフラの体で芝居を見るために天王寺の街を四天王寺に向けて歩いた。でも、それは心地のいい疲れだ。 . . . 本文を読む
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演劇集団ザ・ブロードキャストショウ『温羅の千年 もう一つの桃太郎2015』

2015-04-12 21:13:32 | 演劇
「第39回大阪春の演劇まつり」開幕である。今年もちゃんと春演がある。ただ、それだけで、ほんとうによかった、と思える。大阪市はとんでもないことを、してくれたけど、大阪には今もちゃんと「春演」がある。そこに参加する団体がいて、自分たちの手作りの演劇祭が今も存在する。何を大袈裟な、といわれるかもしれない。だが、僕はそうは思わない。それが若い人たちではなく、ずっと芝居と関わってきて、今も芝居を愛している . . . 本文を読む
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がっかりアバター『啓蒙の最果て、』

2015-04-12 21:02:39 | 演劇
僕にとっては久しぶりのがっかりアバター長編作品。昨年、応典院のスペ・ドラで上演された(それが1年ぶりの新作だったようだ)を見逃した。周囲の人たちから「あれはとてもよかったのに、がっかりですね」なんて散々言われたから、それが悔しくて、あれからさらに1年振りとなる今回は絶対見ようと思った。個人的な話だが、最近(ここ1年ほど)あまり芝居を見ないようにしていたのだが、また、時間が許す限り、見れるものは見 . . . 本文を読む
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『イップマン 最終章』

2015-04-12 20:34:38 | 映画
『イップマン 最終章』 ハーマン・ヤウによるイップマンのこの伝記映画は、先の『イップマン 誕生』と対になっている。それは先行するドニー・イェンによる『イップマン 葉問』2部作とは微妙に違うアプローチだ。アクションの比重を置かない。彼の生きざまに焦点を置く。だが、表層的にはアクション映画としての矜持を守る。香港映画として当然のことなのだ。まず、娯楽映画であること。そこを無視してアート映画は目指さない . . . 本文を読む
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『博士と彼女のセオリー』

2015-04-10 22:36:32 | 映画
『マン・オン・ワイヤー』のジェームズ・マーシュ監督作品なのだ。見ないわけにはいかない。ドキュメンタリーなのに、劇映画よりもドラマチックで、感動的。終始ドキドキさせられる映画だった。波乱万丈のストーリーではない。どちらかというと地味。だが、ビルとビルの間にワイヤーを渡す。そこを渡る。単純なことだが、こんなにもスリリングなことはない、と思わせる映画だった。 そんな映画を作った彼が、今度は劇映画に挑む . . . 本文を読む
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