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映画・演劇のレビュー

演劇集団ザ・ブロードキャストショウ『温羅の千年 もう一つの桃太郎2015』

2015-04-12 21:13:32 | 演劇

「第39回大阪春の演劇まつり」開幕である。今年もちゃんと春演がある。ただ、それだけで、ほんとうによかった、と思える。大阪市はとんでもないことを、してくれたけど、大阪には今もちゃんと「春演」がある。そこに参加する団体がいて、自分たちの手作りの演劇祭が今も存在する。何を大袈裟な、といわれるかもしれない。だが、僕はそうは思わない。それが若い人たちではなく、ずっと芝居と関わってきて、今も芝居を愛している人たちが打算からではなく、自分たちの喜びのため、そして、もちろん「自分たちの演劇」のため、今年も芝居を作り続けるだけでなく、演劇祭というお祭りを開催する。自分たちのことだけではなく、みんなのために芝居がある。そんな当たり前のことが、こんなにも、うれしい。

今回のオープニング作品は、初参加となる演劇集団ザ・ブロードキャストショウであることもうれしい。年輩の老舗劇団に混じって、若い集団がそこにいる。ただ、それだけで、「春演」が、今年も一歩前進した、と思える。たった1劇団である。歩みは鈍くてもいい。毎回新しい劇団がひとつでも増えればいい。

さて、ようやく、ここからこの作品のお話になる。演劇集団ザ・ブロードキャストショウとしては、この作品は自信の作、であろう。パンフによると、4度目の再演となる。2008年版から、7年。前回のキャストも、(前々回も)参加している。主役の2人は初めてだが、若い2人をベテランや、もっと若い劇団員が支える総力戦だ。一心寺シアターの広い舞台を縦横に使い、派手な殺陣を駆使して、スケールの大きな作品を作る。ブロキャの面目躍如の大作である。

骨太でシンプルなお話を2時間。一気呵成に見せていく。この手のお話は、勢いで見せたほうがいい。シンプルだけど、贅の凝らされた衣装に身を包んで、温羅(山の民)と吉備(町の民)の確執、それに乗じて、すべてを手に生とする大和の陰謀。そんな戦いに巻き込まれて、愛し合いながら、殺しあうことになる五十鈴とタケ留。このあまりにものパターンでしかないお話には、少し退屈させられるが、そこは目を瞑ろう。

本当はそこに「桃太郎と鬼との戦い」をトレースさせてあるし、そこから、いくらでももっと奥行きのあるお話として作れたはずなのに、パターンから一歩も出ないから、アイデアの面白さが相殺される。ストーリー重視ではなく、伝説というものの意味をそこから考察する、そんな芝居にも出来たはずなのだ。桃太郎の側からではなく、鬼の側から見せる、というアイデアに期待したのだが残念だ。でも、それは言っても詮無いことだ。台本は(高野暢子)は、既にある。それをどう見せるか、が今回の作業なのだから。

役者たちもスタッフも、とてもよく頑張っている。だから見ていて、とても気持ちのいい作品に仕上がった。



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