習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『シュアリー・サムデイ』

2011-04-18 21:06:11 | 映画
 作り方が下手すぎて、これでは『お話』の世界に乗れない。こういうホラ話は心地よく乗せられないと見ていられない映画になる。語り口のうまさで、騙されないことには無理だ。そういう巧みさが監督の小栗旬にはない。役者として様々な映画に出ていろんな監督を見てきたはずなのだが、見るのと、するのとはまるで違うのだろう。残念な仕上がりの映画になった。でも、最初にしてはあまりにハードルの高い企画に挑戦し過ぎた気がする . . . 本文を読む
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三浦しをん『小暮荘物語』

2011-04-18 20:56:17 | その他
 小説としてはちょっと甘すぎて、出来はよくない。でも、僕は三浦しをんのこういう軽さは好きなのだ、と思った。『風が強く吹いている』の時もそうだった。あのオンボロ寮の人たちって、今回の主人公たちとよく似ている。あの小説は箱根駅伝に出場するチームの話としてはちょっとリアルとは言い難い。でも、あんな人たちはいると思うし、あんな奴らが全力を出して箱根に挑戦するという「お話」としてのおもしろさがあそこにはある . . . 本文を読む
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劇団伽羅倶梨『ちゃらんぽらんな夜に・・・。』

2011-04-18 20:40:39 | 演劇
こういうハートウォーミングは嫌いではない。しかし、これはあまりにベタ過ぎて辛い。見ていて、先も読めるし、話自体がまるで広がっていかないのも苦しい。作者の頭のなかで組み立てた物語の枠の中から一歩もはみださない。 便利屋を舞台にして、そこで働く人たちの人間模様を描く、というストーリーには問題はない。環状線のホームでの会話をポイント、ポイントに挟んで、全体の流れを作るのも悪くはない。だけど、登場す . . . 本文を読む
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中田永一『吉祥寺の朝日奈くん』

2011-04-18 20:36:27 | 映画
とてもよくできた恋愛小説だとは思う。こういう上質の短編集に出会うと嬉しくなる、という人もたくさんいるかもしれない。だけど、僕はなんかあまりに上手すぎてそこが反対に不満だ。贅沢だと言われそうだが正直な感想なのだから仕方ない。  これって少し頭の中だけで作られすぎている気がする。小説ってもっと感情に迫ってくるものでなくてはらない。なのに、この作品は計算の上に成り立っている。それが伊坂幸太郎のように . . . 本文を読む
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『ヤギと男と男と壁と』

2011-04-16 08:50:50 | 映画
 まるで訳のわからないタイトルだ。こんなタイトルを付けられた映画にお客が来るなんて、絶対ありえない。映画会社はやる気があるのか。たとえ、これはコメディーなのだから、こういうふざけたタイトルの方がいいと判断したにしても、(でも、その判断は違うと思うが)これはあんまりだ。全然内容を伝えていない。  ジョージ・クルーニーとユアン・マグレガー主演で、それにジェフ・ブリッジスとケビン・スペイシーが絡んでく . . . 本文を読む
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梨屋アリエ『プラネタリウムのあとで』

2011-04-16 08:26:53 | その他
 4話からなる短編集。いずれもプラネタリウムが出てくる。最初の2つがとてもいい。こういう日常の機微を描かせたら梨屋アリエはとても上手い。中学生くらいの子供たちのなんでもない日常描写の中から彼らの心の揺れ動きが繊細なタッチで綴られていく。ほんのちょっとした心の震えが、彼(または彼女)の琴線をとらえる。ただそれだけで、すべてがダメになったり、夢のような出来事が起こったりする。2人の女の子の友情、ひとり . . . 本文を読む
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『まほろ駅前多田便利件』

2011-04-16 00:04:27 | 映画
 東京のはずれであるまほろ駅前にある多田便利件という便利屋の話だ。これは、そのそっけないタイトルそのままの映画だ。冴えない男たちの退屈な日常をただ淡々と描く。しょぼくれた映画である。そこがこの映画の狙いであり、そういう意味では見事狙い通りの映画に仕上がっている。でも、その分、なんだか物足りない気もする。  それにしても、どうしてこんなにも弾まないのだろうか。原作小説(三浦しをん)を読んだときの . . . 本文を読む
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『The ショートフィルムズ みんな、はじめはコドモだった』

2011-04-15 23:39:54 | 映画
 昔はみんな子供だった。でもやがて大人になる。子どもの頃、大人になってから。更には、いくつになっても親の目から見たなら、子どもはずっと子供のままであること。子供といっても、各エピソードに描かれる子供は年齢も設定もみんな違う。  これは5話からなるオムニバスである。現代日本を代表する5人の監督たちが、それぞれの視点から、「子供」を主人公にして、短いドラマを作る。それぞれ文体も違うし、好き勝手なアプ . . . 本文を読む
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『天使の眼、野獣の街』

2011-04-15 23:11:20 | 映画
天上の眼になって彼らの姿を追いかけていく。追うものと追われるもの。それぞれの姿をカメラは俯瞰で捉える。時には彼らの高さまで降りてきて、あるときは前になり、時には後ろから追いかけていく。映画はストーリーよりも、そんな彼らの動き自体を追うことに執着する。そうすることで、ストーリーの方も動いていく。至って簡単な話だ。描かれるのは、銀行強盗の一味と彼らを逮捕しようとする警察との攻防である。監督はジョニー . . . 本文を読む
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『わたしを離さないで』

2011-04-13 22:55:51 | 映画
 今まで見たことのないような映画を見る。しかも2本も続けて、である。それは、ちょっとした衝撃だ。しかも2本とも特別なことをしているわけではない。表面的にはどこにでもあるような印象を受ける。ただ、ほんのちょっとアプローチを変えてみた、それだけだ。でも、そうすることで、誰もが想像もしなかったような風景が見えてくることになる。  1本目はカズオ・イシグロの小説を忠実に映画化した本作品であり、もう1本は . . . 本文を読む
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江國 香織『真昼なのに昏い部屋』

2011-04-13 22:55:04 | その他
 読み終えて、かなり愕然とさせられた。最初はこの文体(子供に聞かせるような、童話のような語り口)に違和感を感じ、乗り切れなかった。つまらない小説かもしれないと思ったくらいに。ジョーンズさん、美弥子さんと「さん」づけされて書かれる。その微妙な距離感が、しっくりこなかった。しかし、彼女が世界の外に出た瞬間からこの小説のそれまでのそらぞらしさが、彼女にとってのこの世界のありようだったのだと気付く。   . . . 本文を読む
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『ダーリンは外国人』ほか4本

2011-04-13 22:53:32 | 映画
 4月6日、春休みを取ることにした。お正月休み以降、テスト中の土日を除いて、1日も休みはなかったし、もうすぐ新学期が始まるからまた忙しくなる。このへんで春休みをとらなければ、次はいつ休める日がくるのか、わからないから、無理して1日だけ年休をとらせてもらった。本当なら5日で終わるはずの試合が9日まで続くことになったから、本来なら休んでいる場合ではないのだが(生徒たちは当然練習している)僕は予定通りに . . . 本文を読む
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『半分の月がのぼる空』

2011-04-09 10:49:03 | 映画
 どこにでもいるようなふつうの男の子と女の子が入院中の病院で出会い、好きになる。少女は心臓の病を抱え、手術をしても死んでしまうかもしれない。9歳からずっと病院で生活してきた。父も同じ病気で死んでいる。  これはよくある難病もののラブストーリーである。『ある愛の詩』の時代から、この手の映画は、たくさんの人の涙を絞りとっている。その中には、もちろんたくさんのすばらしい映画もある。しかし、何をいまさら . . . 本文を読む
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堂場瞬一『チーム』

2011-04-09 09:34:23 | その他
 このブログでは個人的な話は一切書かない方針だが、この小説について書く上で、今、どうしても書いておきたいことがある。高校で、とあるクラブの顧問をしているのだが、昨年六月の3年生が引退してから9ヶ月、1,2年によって作られてきた新チームがとうとう最後の時を迎える。3年が強かったから、なかなか結果を出させなかったけど、みんながそれぞれ努力して、何度も何度も負け続けようやくここまできた。彼女たちは、その . . . 本文を読む
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『レッツ・ゴー 仮面ライダー』

2011-04-09 08:42:49 | 映画
 とうとうここまでバカな映画を作ることになったのか。そんな末期的症状に、ただため息だけが出る。それでも見に行く自分にも。  東映は以前は1年中、アニメをやっている会社だったが、今では1年中ライダーと戦隊ものを作っている会社になってしまった。しかも、1本1本の作品が、まるでTVレベルのちゃっちいものばかりで、よくもこれを劇場のスクリーンに平気でかけることができるものだ、とあきれる。映画会社としての . . . 本文を読む
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