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映画・演劇のレビュー

『天使の眼、野獣の街』

2011-04-15 23:11:20 | 映画
天上の眼になって彼らの姿を追いかけていく。追うものと追われるもの。それぞれの姿をカメラは俯瞰で捉える。時には彼らの高さまで降りてきて、あるときは前になり、時には後ろから追いかけていく。映画はストーリーよりも、そんな彼らの動き自体を追うことに執着する。そうすることで、ストーリーの方も動いていく。至って簡単な話だ。描かれるのは、銀行強盗の一味と彼らを逮捕しようとする警察との攻防である。監督はジョニー・トー門下の新鋭ヤウ・ナイホイ。彼の第1回作品。最初の映画なのに、これだけの傑作をものにした。

カメラは、香港の街を縦横無尽に、動き回り、監視される側と、掻き回す側の2つのドラマが、見えるもののみから描かれていく。ここでは特定の誰かが主人公にはならない。何十人もの人間が、スクリーンを右往左往する。犯人グループと警察組織。それぞれの動向が、カメラによってクールに撮られていくだけだ。

 なのに、ただろれだけのことが、とんでもなくおもしろい。まるでパズルのピースがどんどん嵌っていく瞬間のような快感がある。行動、尾行、逃走、追跡。そんな単純な人の動きが、なんでもない街のロケーションを背景にして切り取られる。それだけで映画になる。こういうやり方でアクション映画を作れるのだ。こんなのが、ありなのである。これだけでここまでスリリングな映画になる。これには驚かされた。参った。


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