
2022年の1月に公開された映画だ。一応はコメディのスタイルを取っているが、決してふざけた話ではない。それどころか、ここに描かれることは本気で考える必要があり、政治に無関心な人たちをちゃんと選挙に導くような映画になっている。笑いながら気がつくと真面目な話になるのがいい。彼女には選挙に当選した以上、この国の腐った政治を変えて欲しい。真剣に戦う覚悟が描かれるラストは心地よい。
それまで政治とか選挙とか何も知らないでいた45歳のお嬢さんが、周りに担がれて父の選挙区から入院した父の後を継いで、衆議院議員選挙に打って出ることになる。だけど無知で、無謀。ほんとはやる気がないそんな女性を宮沢りえが演じる。彼女を支える秘書を窪田正孝。このふたりを主人公にして、地方都市の選挙戦が描かれる。
バカバカしいドタバタが描かれていくが、現実の選挙の実態を実はかなりシリアスに見せつける。日本の政治家たちの愚かな姿がカリカチュアしながらも、リアルに描かれ、そんな彼らを糾弾する。坂下雄一郎はしたたかだ。ちゃんと丁寧に取材して作られているから、最後まで笑いながらも興味深い展開を持続させ飽きさせない。思わず(ちょっと小ぶりの)伊丹十三の映画を思わせた。