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映画・演劇のレビュー

『浅田家!』

2020-10-17 11:13:25 | 映画

破天荒な芝居と映画とを見て、小説も読んだ。たまたま重なっただけだけど、なんだかうれしい。だいたい本格的な芝居を見るのも久しぶりのことだ。と前回も書いた。で、これはその映画。

『テネット』も大概な映画だったが。これもそう。写真集の映画化なんて今までなかったはず。詩集の映画化なんていうのもあったけど(石井裕也の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』だ。)今回の中野量太監督はインスパイアは作者である浅田正志の本人のドラマを起点にした。それに前半は、写真集『浅田家』の再現で色を添えた。荒唐無稽な家族総出の写真撮影には唖然とする。浅田本人による再現写真も楽しい。とんでもないお話で、笑える。でも、そこから感じるのは、彼の自分探しの旅で、そういうありきたりのことが、切実に描かれるのではなく、のほほんとしたタッチで描かれていき楽しい。でも、これは生き方の問題でほんとうは誰もが心に抱き生きている切実な問題だ。そんなこと、わかりきっているから、彼がどんな選択をするのか、から目が離せない。

だが、そんな前半部分と後半ではまるでタッチが変わる。東日本大震災である。それまでの暮らしとそれ以後では、まるで世界が異なる。浅田は被災地に向かいボランティアを買って出る。何かをせずにはいられない。そこで写真洗浄をする青年と出会う。(この地味な青年を菅田将暉がとても自然に演じる。最初はこの男が菅田将暉だとは気付かなかったほど、風景に溶け込んでいた)見ようによっては、ここからの展開はふつうの「震災もの」になる。微妙なところだ。でも、そこも中野監督はわかったうえでやっている。特別なことを描くのではない。誰もが感じていることを描くのだ。そういう意味でも、前後半でここまでタッチが変わるのも関わらず、この映画の姿勢にはブレがない。

映画は浅田家に生まれた主人公である浅田正志(二宮和也)が自分のやりたいことを求めて旅する姿が描かれる。単純に写真家になる、という夢に向けて邁進するドラマというわけではない。彼は自分が何をしたいのかすらわからない。だから写真でなくてもよかった。コスプレによる家族写真というのも、たまたまだ。父親がなりたかった消防士の夢を実現させるため。でも、そんな半分冗談のようなスタンスで始めるにもかかわらず、監督の姿勢と同様にこの主人公にもブレはない。そんな彼のアイデァを家族が後押しする。妻夫木聡演じる兄貴の存在が大きい。彼の助けがなければ何もできなかった。自分の人生を家族が支える。そして、とんでもないことを実現していく。

中野量太監督は今回もふつうじゃないアプローチでベタな人情劇としてこの家族の物語を提示する。ストレートで、とても心に染み入る映画になった。

 


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