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映画・演劇のレビュー

林けんじろう『ブルーラインから、はるか』

2024-07-05 09:32:00 | その他
第25回ちゅうでん児童文学賞受賞作品『まないきサイクリストと、ブルーライン』を改題して出版。それだけで少し作品としてのスケールが大きくなった。  生意気な4年のガキ、榊原風馬と、夏休みにしまなみブルーライン140キロを走破する6年の僕。無謀な旅。ふたりで日帰りで尾道から今治までの往復。だが、それはあまりに考えなしの行為だ。だけど彼らは瀬戸内海を走り抜け今治までやって来た。風馬がここに来 . . . 本文を読む
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『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

2024-07-05 05:22:00 | 映画
アレクサンダー・ペイン監督久々の新作は1970年の冬が舞台となる。寄宿制の中高一貫校。楽しみなクリスマス休暇で家族のもとに帰る子どもたち。だけど、寮に残される子もいる。そんな5人と彼らの世話をする役目を担うことになった偏屈で嫌われ者の先生。   まぁ昔ながらのよくあるパターンのお話であろう。もちろん心温まるハートウォーミングである。だけどそんなオーソドックスをペイン監督は嬉々として楽 . . . 本文を読む
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小路幸也『キャント・バイ・ミー・ラブ 東京バンドワゴン』

2024-07-05 05:16:00 | その他
もうシリーズ第19作になるらしい。毎年読んでいるけど、数えてなかった。言われたらそうかぁと思う。この先いつまで続くのか。もし寅さん越えとか、あるか。毎年恒例で楽しい。この時期になると、ワクワクする。そろそろ新刊が出るかな、と。まぁ毎年のことだからと、気長に待ちます。それにしてもあまりに登場人物が増えすぎて(毎回増えていく)多すぎて、彼らの紹介だけで大変。今回もお話が始まるまでで、もう50ページまで . . . 本文を読む
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太宰治 他『文豪死す』②

2024-07-05 03:28:00 | その他
太宰治の『グッドバイ』は初めて読んだかもしれない。こんな呆れた小説を最後にして人生にグッドバイするなんて太宰もなかなかふざけた男だ。しかも未完って。いいかげんにしなさいって感じ。これを成島出が数年前に映画化している。もちろんコメディにしてある。怪力女は小池栄子だ。太宰は(田島だけど)大泉洋。いかにもなキャスティングであまり感心しない映画だった。あの『人間失格』の後にこれかぁ、と思う。   . . . 本文を読む
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『バッドボーイズ RIDE OR DIE』

2024-07-03 21:46:00 | 映画
アカデミー賞で問題を起こして干されていたウィル・スミスの復帰第一作。ヒットシリーズ最新第4作。この手のバディものアクション映画は最近はあまり作られないけど、敢えて昔ながらの定番に挑む。ジェリー・ブラッカイマーらしいド派手アクション満載。監督は前作に続いてアディル&ビラルのコンビ。日本映画の同じようなバディものである『あぶない刑事』と引っ掛けてセットで宣伝していたが、映画としては当然だが明らかにこち . . . 本文を読む
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芥川龍之介『文豪死す』

2024-07-03 08:00:00 | その他
タイトルに作者名を芥川龍之介と書いたが、もちろんこれは芥川の新作ではない。6人の文豪と呼ばれていい日本を代表する作家たちの最期の小説を集めたアンソロジーだ。先日カフカを紹介するエッセイ『カフカふかふか』を読み、久しぶりにカフカを読みたいと思ったけど、なんかそれって時間のムダみたいな気がして(カフカは凄いけど、今僕がカフカを読むことにあまり意味を見いだせない)やめた。 だけど、これは今読む意味を感 . . . 本文を読む
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『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』

2024-07-02 18:15:00 | 映画
まさか今頃ここまであからさまにきれいごとだらけの「正統派純愛青春映画」を作るなんて。嘘くささが充満して恥ずかしくて目を覆いたくなる。どうかしてる。呆れてしまった。三木孝浩は大丈夫か?と心配になる。これには何か理由がある。Netflix映画だから手を抜いたのか? いや、そんなことするわけはない。美男美女によるラブストーリーの王道。余命半年に1年のダブル。藤井道人の傑作『余命10年』の向こうを張ったよ . . . 本文を読む
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角田光代他『いつかアジアの街角で』

2024-07-02 06:32:00 | その他
6人の女性作家たちによるオムニバスだ。みんな好きな作家ばかりだし、しかもアジアが舞台。これを読まないわけにはいかないと、ワクワクしながら読み出した。  だが、えっ?と思う。アジアじゃないじゃん。日本じゃないの、って。だけどすぐに気づく。日本はアジアのかたすみなのだ。僕が台湾が好きな理由もそこが大好きだった昔の日本を思い出させる場所だったから。候孝賢の映画を初めて見た時の懐かしさ。もうあ . . . 本文を読む
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G-フォレスタ『誰もが自分を殺人犯だと言う』

2024-07-02 06:17:00 | 演劇
このタイトルは面白い。身内を守るための行為だが、必ずしも単純ではない。それぞれの思惑が交錯して、まさかの結論に辿り着く。7年ぶりの再演である。劇団が本格的にミステリに移行した頃の作品。初演はなんと10年以上前で、だから今回は再再演。作、演出の丸尾さんにとってはこれは自家薬籠中のもの。だから安心して見ていられる。(もちろんいつもだって安心してるけど)細部までしっかり作ってある。だけどそれはリアルとい . . . 本文を読む
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彩瀬まる『なんどでも生まれる』

2024-07-01 18:09:00 | その他
こんな彩瀬さんを見たことがない。軽妙なタッチで、チャボが語る毎日の暮らし。漱石の『吾輩は猫である』と同じように動物視点からの人間ウォッチングだが、ここでは人間と動物たちは等価で描かれる。しかも動物目線(チャボの桜さんの視点から)。  チャボの桜と一応彼女の飼主である茂さんのお話。ふたりは友人であり、家族でもあり、バディ。お互いに寄りかかり生きている。どちらかというと、桜さんが保護者。 . . . 本文を読む
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環夢離『第10惑星の婚約者』

2024-07-01 18:08:00 | 演劇
これは若い学生劇団の公演だ。藤井寺市の市民会館小ホールというマイナーな空間で上演される。春演参加作品なので見せてもらえた。そうじゃなくては、関係者じゃないとこんな芝居があることさえ知らないまま終わるはず。 土曜日の朝からの公演というのも珍しい。こんな僻地(!)で休日の早朝から芝居を見るなんてなんだか新鮮。初めてのところだったから時間に余裕をもって行った。開場前に着き、ロビーで読書しながら待つ。僕 . . . 本文を読む
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下薗りさ,木田綾子『カフカふかふか』

2024-07-01 06:10:00 | その他
こんな楽しい本だとは思いもしなかった。だから一瞬で読み終えてしまう。カフカのテキストの一文から書き起こすエッセイ集である。さまざまな作品の冒頭の一文、さまざまな登場人物、出来事、カフカの考え、そして最後は各作品のラストの一文。評論ではなく、カフカ入門書だけど、まずカフカで楽しもうとする本。これをきっかけにしてカフカに親しんで欲しいというカフカ研究会の面々の思いがしっかり込められた一冊。 &nbs . . . 本文を読む
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劇団息吹『花がたな』『陳情・なにわ編』

2024-06-30 21:49:00 | 演劇
久々となる息吹の春演参加作品。短編と中編の2本立て。それぞれ木田さんと大坊さんという劇団の重鎮が主役を演じる。2作とも狂言を題材にしたシンプルな作品である。 『花がたな』は若い役者ふたりとのコラボ。(ひとりは現役高校生!)初々しいふたりと向き合う木田昌秀はとても若々しく老人を演じた。ぬけ作演じる寒川紘暉との掛け合いが楽しい。また、寒川紘暉と彼の妹である寒川結月との兄妹による掛け合いはなんだかかわ . . . 本文を読む
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『放課後アングラークラブ』

2024-06-30 21:08:00 | 映画
小さな作品だが、昨年こんな映画があっただなんてまるで知らなかった。どこで公開されたのだろう。大阪はナナ芸かシネヌーヴォーでひっそりと上映されていて、気がつかなかったのだろう。きっと。  知らない女の子たち(僕が、だけかもしれないけど)が主演した、たった82分の青春映画。でも一応角川映画みたいだ。なんでもありの城定秀夫監督作品。  だいたい「アングラーって何?」とヒロインの女 . . . 本文を読む
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『フォロウィング』

2024-06-30 20:46:00 | 映画
クリストファー・ノーランのデビュー作。98年作品だから、もちろん『メメント』以前の作品である。モノクロで70分の小さな映画だけど、まるで今と変わらない。時間を前後させて無意味に掻き回す。見ていて必要以上に混乱する。相変わらずの作者の意図とはいえ、やはりこれはいやらしい。  ただ今回は登場人物が少なく、シンプルな映画だから、一応大丈夫だったけど僕は『メメント』も『インターセプション』も1 . . . 本文を読む
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