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映画・演劇のレビュー

角田光代他『いつかアジアの街角で』

2024-07-02 06:32:00 | その他

6人の女性作家たちによるオムニバスだ。みんな好きな作家ばかりだし、しかもアジアが舞台。これを読まないわけにはいかないと、ワクワクしながら読み出した。

 だが、えっ?と思う。アジアじゃないじゃん。日本じゃないの、って。だけどすぐに気づく。日本はアジアのかたすみなのだ。僕が台湾が好きな理由もそこが大好きだった昔の日本を思い出させる場所だったから。候孝賢の映画を初めて見た時の懐かしさ。もうあれは80年代の話だ。『坊やの人形』である。そして『童年往時』に。あれからだって40年になる。そして陳凱歌の『黄色い大地』を見たこと。70年代を経て失われていった大切なものを再び思い出すために、台湾に行く。さらには世界の中心だった、そして再び躍進を始めた中国を知りたくてまず、天安門に立つ。北京五輪前の喧騒が始まる前に。もちろん韓国にも行く。あのカンフーブームから始まった混沌とした香港を堪能する。ブルース・リーからジャッキー・チェンもそうだが、圧倒的にウォン・カーウァイである。彼の映画に魅せられて香港に行ったこと。そしてマレーシアからインドネシアを望む。1990年末から始まったアジアの街を歩く僕の旅と重ねながら、この本を読む。
 
台湾から来た青年(中島京子)。探偵事務所なのに台湾料理を味わう(桜庭一樹)。そんな楽しいエピソードから始まって、島本理生の東日本大震災、大島真寿美の香港の悲劇を描く話が続く。日本を舞台にしながら、アジアから来た人たちとのふれあいを描く。
 
台湾人の王さんを描く宮下奈都の話を経て、ラスト(角田光代の『猫はじっとしていない』)では初めて台湾に行く女性の話に。大切だった猫に会うために台北に行く。九份の猫村に行き死んでしまったタマ子に会いに行く。だけど会えない。初めて来たのに懐かしい。ずっと前にここに来ていた気がする。関係ないけど、来週から僕もしばらく台湾に行く。
 
 

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