この映画を見ながら、こんな時代錯誤の野球部は今はもうないはず、と思いつつも、いやはや(誇張はあれども)今だって「あるあるな」のかもしれないなんて思う。呆れるくらいのアナログ部活。(まぁ、いくらなんでも高嶋政宏のあの監督はありえないけど)敢えてこの封建的暴力野球部(!)を描いて、笑わせながら楽しませてくれる飯塚健監督の2022年作品。
元プロ野球選手の里崎智也(野球部あるあるのコーナー)やVシネマの帝王・小沢仁志があほらしい登場の仕方(幻の怖い先輩たちの姿)で随所に顔を出す。
主人公は高校デビューした黒田少年。髪の毛を茶髪にして、いきって登校する。中学時代で満喫したからもう野球なんかしないし、とか言うのに、ちゃっかり誘いに乗って気付けば入部して丸刈りにされている。
高校野球界を描きながらも勝ち負けはどうでもいい。もちろんそれはこの映画の姿勢の問題である。彼ら野球部員は勝ちたいと思い頑張っているだろう。公立高校としてはそれなりに強い学校みたいだし。だけど、これは彼らが野球を通して過ごす高校生ライフを描くことが眼目である。たまたま席が前後ろだっただけ、たまたま中学で野球部だったから、そんな理由でなんとなくなかよしになった5人が過ごした1年間。彼らの友情物語。
クライマックスは先輩たちの最後の試合。引退していくのを見送る。そして自分たちが今度は先輩になり、同じように後輩を迎える。
彼ら新入生部員の1年間のスケッチ。なんてことない毎日の生活が描かれていく。極端に誇張して笑わせて、だけどこんなふうな高校生活は確かにあるな、と思わせる。これはそんな「誰にだってあった時代」を描いたコメディ青春映画である。凄くはないけど、悪くはない。特殊だけど、普遍的。そんな青春映画。