人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

ノーベルが泣いている・・・廃絶という戦略

2009-10-23 10:03:00 | 時事/金融危機





■ ノーベルって何をした人? ■

今の子供達に「ノーベルって何をした人」と聞けば、
多分100%、「ノーベル賞を作った人」と答えるでしょう。

私が小学生の頃は、学級文庫には偉人達の伝記が並んでいて、
「エジソン」や「キュリー夫人」や「野口英世」らに挟まれて
「ノーベル」の伝記もありました。

1833年にスウェーデンのストックホルムに生まれたアルフレッド・ノーベルは
ダイナマイトの発明で巨万の富を得ます。

私の記憶が確かならば・・・、発明の経緯は下記の様だったと思います。

ニトロ・グリセリンは大きな爆発力を持ち、
土木工事や軍事利用で有望視されていましたが、
液体で衝撃によって爆発する為、取り扱いが難しく、
度々事故を起していました。

ノーベルはニトロ・グリセリンの実用に取り組んでいましたが、
事故で弟を失うなど、代償も大きなものでした。
ある日、ノーベルが工場に行くと、
ニトログリセリンのビンが倒れ、中身が床に滴っていました。
本来でしたら、爆発事故を起すところですが、
砂がニトログリセリンを吸収して、爆発は起こっていませんでした。

この事にヒントを得たノーベルは、珪藻土にニトログリセリンをしみ込ませる方法で
ダイナマイトを発明します。
ダイナマイトは取り扱いも容易で、大ヒット商品となり、
ノーベルは巨万の富を手に入れます。

彼の死後、残された遺言に従って、
ノーベルの遺産は、ノーベル財団が管理し、
文明の発展に貢献した人々に「ノーベル賞」として、分け与えられる事になります。

ノーベル賞には、ダイナマイトが多くの人の命を奪った事への、
贖罪の意志が込められてうるとも言われています。

■ 今年のノーベル平和賞はオバマ大統領 ■

ノーベル平和賞は、ノーベルの遺言に従って、
世界平和に貢献した人物に与えられます。

今年のノーベル平和賞は、「核軍縮の提案」が評価され、
バラク・オバマ大統領が受賞しています。

この受賞に関しては、賛否両論なのは皆さんもご存知の通りです。
まだ、具体的な実績に上がっていない「核軍縮」での受賞は、
いささか早過ぎる感は否めません。

■ ノーベル平和賞受賞者は曲者揃い ■

ところで、過去のノーベル賞受賞者にはどんな人達が居るのでしょうか?

私でも分かる範囲で挙げてみると、

1964年 キング牧師(アメリカ)
1978年 アンワル・サダト (エジプト)
1979年 マザー・テレサ(インド)
1989年 ダライ・ラマ14世(チベット亡命政府)
1991年 アウンサンスーチー(ミャンマー)
1993年 ネルソン・マンデラ、フレデリック・デクラーク(南アフリカ)

確かにわが身を犠牲に、平和に貢献した人の名前が並んでいます。

人物だけでなく、団体の受賞しています。

1917年 赤十字国際委員会
1938年 ナンセン国際難民事務所
1944年 赤十字国際委員会
1954年 国際連合難民高等弁務官事務所
1963年 赤十字国際委員会、国際赤十字赤新月社連盟
1965年 国際連合児童基金
1977年 アムネスティ・インターナショナル
1981年 国際連合難民高等弁務官事務所
1985年 核戦争防止国際医師会議
1988年 国連平和維持軍
1999年 国境なき医師団
2005年 国際原子力機関
2007年 気候変動に関する政府間パネル、アル・ゴア(アメリカ)

目立った所だけでも、かなりの組織が受賞しています。
赤十字や国連難民高等弁務官事務所は複数回受賞しています。

■ 今から思えば、世界イタイニュース特集の様な ■

さらに、こんな方達も受賞しています。

1906年 セオドア・ルーズベルト (アメリカ)
    太平洋戦争開戦時の当事国の大統領です。

1953年 ジョージ・マーシャル(アメリカ) 
    マーシャルプラン・・・東西冷戦の固定化でしょうか?

1973年 ヘンリー・キッシンジャー(アメリカ)、レ・ドゥクト(ベトナム、辞退[2])
    ベトナム終戦の功労賞?

1974年 佐藤栄作(日本)
    「非核三原則」ですが、当初から形骸化しているのはご存知の通り。

1978年 メナヘム・ベギン (イスラエル)、アンワル・サダト (エジプト)
    キャンプテービットの和平による受賞。

1990年 ミハイル・ゴルバチョフ(ソビエト連邦)
    ソ連崩壊の立役者として??

1991年 アウンサンスーチー(ミャンマー)
    民主化運動ですが、ちょっとヒイキな感じも否めません。

1994年 ヤセル・アラファト(パレスチナ)、
    シモン・ペレス (イスラエル)、イツハク・ラビン(イスラエル)
    中東和平ですが、平和は未だに訪れず・・・。

2000年 金大中(韓国)
    南北会談が評価されての受賞。が、その後は知っての通り・・・。
   
2002年 ジミー・カーター(アメリカ)
    これもキャンプデービット絡みでしょう。

2007年 気候変動に関する政府間パネル、アル・ゴア(アメリカ)
   ウーン・・・何とも言いがたい。

実に不思議な方々が受賞していす。
時が経った現在から見ると、
戦後の世界の「イタイ・ニュース」を集めた様なリストです。

中東和平は今だ実現していませんし、
民主化運動家達は、アメリカに都合の良い人選が目立ちます。


■ 核軍縮を唱えるキシンジャー ■

オバマ大統領が、この珍リストの仲間入りをしない事を祈りますが、
そもそも、オバマに唱える核軍縮を最初に言い出したのは、
ヘンリー・キシンジャーらのアメリカ外交評議会のメンバーです。

アメリカ外交評議会は、1917年に設立されたシンクタンクですが、
ディビッド・ロークフェラーを名誉会長に、4000人の会員を擁します。
大統領・国務大臣始め、歴代政府中枢はほぼメンバーと見られ、
共和党・民主党関係無く、アメリカの利益の為に外交政策を追求する組織です。

オバマは会員では無いようですが、ヒラリー・クリントンは会員です。

この外交評議会こそが、真のアメリカの国務省であり、
長期的なアメリカの外交政策を決定していると言えます。

この外交評議会の重鎮、ヘンリー・キシンジャーは最近、
核軍縮を色々な場所で主張しています。

■ 不安定要素と成った核兵器 ■

東西冷戦時代は、大国が保有する核兵器は、
世界平和に大きく貢献していました。
お互いのこめかみに銃口を突きつけている訳ですから、
双方とも容易には引き金を引けません。

ところが、多極化時代を迎え、かつての大国以外に核兵器が拡散し始めました。
イスラエル、インド、パキスタン、
北朝鮮、イラン・・・。
現在、核兵器は問題のある国家や政権の、生き残りの手段となっています。
これらの国の所有する核兵器は、非常に危険です。

外交交渉の決裂で、実際に使用されるかも知れません。
パキスタンの所有する核兵器など、いつテロリストの手に渡るか分かりません。
北朝鮮やイランは、テロリストそのものです・・・。(とアメリカは言います)

しかし、仮に彼らが核兵器を使用しても、
大国が報復として核兵器を使用する事は人道上許されません。

核兵器はいつの間にか、大国の力の象徴では無く、
問題国家が大国と対等に渡り合う為の道具になっていたのです。
核兵器を事実上使用出来ない大国には不利な争いです。

■ 核不安論を盾に、問題国家を維持する戦略 ■

確かに北朝鮮の核兵器は、日本人の平和を脅かします。
しかし、これは東アジアの不安定要素を固定化し、
発展を阻害する為の装置としても機能します。

北朝鮮が核兵器を開発・所有する限り、
北朝鮮は東アジアの経済圏の一員にはなれず、
東アジアの統合のキーポイントで、北朝鮮は核を盾に統合を阻害する動きを見せるでしょう。

インドとパキスタンの核は、中国の核と組み合わさって、
南アジアと、中東の経済発展のトゲとなり続けるでしょう。

イスラエルの核は、現在でも中東に緊張的な均衡をもたらしていますが、
イランが核を保有すれば、中東和平は恒久的に訪れません。

この様に、冷戦後の核は、地域統合を阻害する道具であると言えます。

■ 誰が核を持たせたのか ■

これらの国々に、核兵器の技術を供与したのは誰でしょう。
私はアメリアだと考えています。
北朝鮮の核開発にしても、アメリカのスタンドプレーによって
北朝鮮は奔放に振舞う事が許され、核兵器の開発も事実上見逃されている状態です。
CIAが影で、技術供与をしていないとは言い切れません。
例え、ソビエト崩壊後に、ロシア人技術者が北朝鮮に拉致、あるいは入国したとしても、その裏には謀略の匂いが付きまといます。

パキスタンの核保有は絶妙です。
中東と中国の間を分断するには、
パキスタンが政情不安定でありながら、核を保有する事が不可欠です。

さらに、パキスタンの核はインドとの緊張を固定化し、
隣国イランが核を保有すれば、中東とアジアは分断されます。

これら、適材適所に核を保有させ、
その上で、核軍縮を理由に、これらの国に圧力を掛ければ、
これらの国は、態度を硬化させ孤立化して行く事
北朝鮮を例に取るまでも無く明らかです。

大国は現在でも大量の核兵器を保有していますから、
率先して核軍縮しても、まだ必要十充分な核兵器が手元に残ります。
しかし、問題国家の核兵器は少量ですから、
核兵器を全て手放せば、国防が丸裸にされてしまいます。

■ 問題国家を永遠に問題児にする為の核軍縮 ■

結局、オバマの提唱する、いえ、アメリカ外交評議会の推進する核軍縮は、
世界に混乱の種を植え付け、
多極化の一部の勢力が単独覇権を獲得する事を阻害します。

その際のメインターゲットは中国でしょう。
中国はこれらの不安定な核に取り囲まれています。

中国は北朝鮮の核によって、日本や韓国との連携を制約され、
パキスタンの核は、インドと中国の連携を牽制しながら、
中国の中東進出を阻みます。
中東には、さらにイスラエルとイランの核が待っています。

イラク戦争は、これら問題国家への見せしめであり、
逆に言えば、問題国家が核軍備を急ぐ理由を与えました。
「やはり、核兵器無しには国は守れない」という確信を与えたのです。

北朝鮮の延命は、さらにこれを補完します。
「核兵器さえ持ていれば、あんなヤクザ国家ですら潰れない・・」と。

オバマの推進する核軍縮は、アメリカの望む世界の不安定を恒久化する政策に他なりません。

■ 世界はオバマの提案に同意するのか? ■

西側諸国はオバマの提案に前向きに対応するでしょうが、
はたして中国とロシアはどうでしょうか?

現在、最大の核保有国はアメリカとロシアです。
核兵器の管理や、古くなった核兵器の廃棄は、多額の財政負担を生み出します。
既に両国とも、お互い何回も破壊し尽す程の核兵器を保有しています。

冷戦時代なら、軍拡ショーとしての核兵器の数の競い合いも意味がありましたが、
現在においては必要は皆無です。
アメリカもロシアも、過剰な核の負担から開放されたいというのが、本音でしょう。

さらに、ロシアにとって隣国中国の核は気になる存在です。
現在でこそ、アメリカに対抗して友好を深めている両国ですが、
ロシアとて、中国の際限ない核軍拡を望んではいません。

さらに、中国を囲い込む形で問題国家が「危ない核武装」をするというオマケ付きですから、
当然、核軍縮のテーブルに付くでしょう。

主要諸国が核軍縮の方向性で同意すれば、
中国もこの枠組みに参加せざるを得ません。

■ 核兵器は無くならないが、数は減らせる ■

かくして、「核先進国」の核兵器は確実に数を減らし、
オバマ大統領は「ノーべル平和賞」の名に恥じない結果が得られるでしょう。
そして、問題児国家達は、孤立化を深めながら、
核開発の道をひた走るでしょう。
これこそが、外交評議会が目指す、「核軍縮」の真の姿では無いでしょうか?

はたして20年後に、ノーベル平和賞の歴代受賞リストを見たときに、
オバマ大統領が「イタイ人」組に入っているかどうかは、神のみぞ知る・・・。
エ?! 外交評議会こそが神だって?!

最新の画像もっと見る

コメントを投稿